女幼馴染みになりまして
読書が趣味の私はつねづね思う事があった
物語に出て来る女の幼馴染みって1番扱いが酷くないか?
幼い頃に、大きくなったら結婚しようね。などと約束などしたら、後から出てくる美人か金持ちか、はたまた位の高い方に取られるのはお約束
信じて待ってた女幼馴染みだけが馬鹿を見る
逆のパターンだと、身分の違いで結婚は出来ないけど俺の愛するのはお前だけだと女幼馴染みを囲い込むパターン
奥さんが良い人なら男幼馴染みは目を覚まして女幼馴染みと距離を取る
でもそれって散々今まで執着しといて、奥さんが良い女だったからポイって…単なる乗換えでしょ?
可哀想過ぎるわ!
1番最低最悪なのは奥さんが悪役の場合。
かなりの確率で女幼馴染みは排除、殺されるわね
普通に生きる事すら許されない女幼馴染み
いくら創作の世界だからと言っても気の毒じゃない?
世の作者は幼馴染みには何しても良いと思ってるのかしら?
などと、怒った所でどうしようも無い事に行き場の無い怒りを抱えたまま寝落ちしたのがいけなかったのか…
目が覚めた時にはその時読んでいた小説の世界にいたのだ
そう女の幼馴染みとして…
いやいや!!これってどう言う事?
なぜに私がアンなの?
この幼馴染キャラにつけられやすい安易な名前、50音の最初と最後の2文字、完全モブだわー
ある小さい村で平民として育ったヒーローのロディオとアン
幼い頃から活発で正義感の強いロディオは、いじめられて泣いてばかりのアンを庇っていた
ロディオが唯一の味方に見えたアンが成長と共に恋心を抱くのも無理はない
ロディオの方も長い時間を共に過ごす事によって好意を寄せられるアンといる事が気楽で居心地の良いものとなって行く
16歳になると、この世界の子供達はみな神殿で自分の属性を調べる事になる
そこでロディオは(勇者)である事が発覚するのだ
で、この後はお決まりのパターン
魔王を倒すために帝都に呼ばれ、勇者パーティーを組む事になる
もちろん村を出る時は女幼馴染みを縛り付けるあの言葉
「魔王を倒したら必ず迎えに来るから!!」
を言って…
このセリフを信じて、ロディオの無事を祈りながら帰りを待つアン
5年後、無事に魔王を倒して戻った時、ロディオの隣には共にパーティーを組んで魔王を倒した聖女がいるのだった
って何これ?
おい、ロディオ!アンの5年を返せ!
アンもアンで何が
「ロディ、無事で良かった幸せになってね」
だわっ!!
痛いわ、読んでるこっちの心が痛いわっ!
つまりは、そんないじめられっ子で内気で泣き虫で、スーパーお人好しの女幼馴染みのアンに何故か私がなっていたと言う事だ
今はちょうど神殿で属性を調べるシーン
つまりロディオもアンも16歳
ここでロディオは勇者であると発覚するのね
「アン?どうした?ほら行くぞ」
呆然と神殿を見つめる私の手を取り、中へ行こうと手を引くロディオ
ああ、流石にヒーロー顔がいい…
私の中のアンの感情がそうさせるのか、顔を赤く染めた私はロディオに連れられて神殿の中へ入って行くのだった
小さい村だし、
16歳限定だし、順番はすぐ回ってくる
ほら今、ロディオが勇者だと発覚して神殿の大人達がバタバタしてる
こんな小さい村から勇者が出たのだ
そりゃ、一大事よね
でもそこで浮き足立つ大人達に向かってロディオが言った
「なあ、まだアンの鑑定が終わってないぞ?」
ビックニュースにすっかり忘れられていたモブ中のモブのアン
神官さんもハッと気がついてくれて私を手まねきをした
いや、いいっすよ…
どうせモブですから、ボロ雑巾の様に捨てられる運命ですから
そうヤサグレながら神官さんのもとへ足を進める
そう言えば、アンの属性ってなんだった?
そんなの描かれていたかしら?
勇者が出た事で忘れられた?
まぁどちらにしても、設定もされてないくらいだし良くある属性だったのだろうと、神官さんに言われるままに、大きな透明の球に触れるのだった