第一章 Ⅵ 選定の幕開け
第一章 Ⅵ
選定の幕開け
男の背後から世界が明転して行く。
立錐の余地もないスクランブル交差点。
激しい人の往来の只中で男は言葉を織る。
「隷人種の救済、この至上命題達成に至り得る唯一の方法は、全ての始まりたる魔法だった。
数世紀の時を経て人間は魔法へと回帰したのだ。
そして幾星霜の末に人間種は、科学による魔法の再現、即ち人工的に神を創り出す計画を打ち立てた」
創られた存在たる人間が創造主を創り出す。それは神への冒涜だ。口にすることをも憚られる禁忌だ。人類、いや生命の枠組みを逸脱する行為だ。
低次元の存在である人間が、物質界に縛られる人間が、上位存在である神を、物質界に生きぬ神を、人工的に創造する。
贋作であろうと失敗作であろうと問題ではない。
人間が神を創ろうとした、これ自体に根本的な問題がある。
あまつさえそれを実行に移した。もはや罪悪という言葉でも言い尽くせない大罪である。
しかし男は平然とした顔でそれに至るまでのプロセスを語り始めた。
「高次界たる擬似精神界にて神を受肉させる。この着想を計画基盤に設定し、これを具体化するべく賢人達は脳漿を絞り知恵を出し合い議論と立案を重ねた。
しかし既存のフォーマットが存在しない以上、彼らには暗中模索、五里霧中が強いられた。その臥薪嘗胆の末に彼らが打ち立てた計画こそ《YHWH》だ」
往来する人々は所詮実体を持たない虚構。
男はその虚像達を意に介すことなく《知恵と生命の樹》へと足を向けた。
《YHWH》とは、全てのエデンの民がアクセス可能な最上の電脳世界の名だ。
核兵器に代わる人間の知恵と心血の結晶。現代科学のシンボルにて至高のアーティファクト。
そして人工的に神を創り出す計画、その代名詞——
「擬似精神界に構築された、遍くエデンの民がアクセスし耽溺するネットワーク。そこに神の鋳型、即ち人々の憧憬や畏怖から成る信仰の受け皿たるキャラクターを用意する。
これを以て、擬似精神界に於ける神の受肉は完了する。
言ってしまえばこれまでだが、これに至るまでの道のりは酷く長いものだった。
凡ゆる場面での自動化、不老不死手術、愚民政策など、この計画を具現する上で不可欠なプロセスを、段階を踏み進める必要があったからだ」
自分の言葉を葵が飲み込めるまで暫しの間を置いた後、「かつて人間は、こんなマウス実験を行った——」と男は語り始めた。
「餌や住処に困らず、天敵もいない楽園を用意し、そこに数匹のマウスを投入した。
時間が経過し、マウスは楽園内で個体数を急増させていた。
そこに、社会が形成され並びに格差も誕生する。個体数の分布にばらつきが生じたことで楽園内で生息密度に違いが生まれたからだ。
そして競争の果てに、マウスの階級社会は完成した。
階級の差異はマウスの特徴に現れ、引いては子の死亡率として顕著に現れる。
競争に敗れた下流階級のオスが性行為に耽溺した結果、メスは子を守るという目的とその為にその他の個体を攻撃するという行動が倒錯し、攻撃性のみを現すようになった。
そして遂に、死亡率が出生率に並んだ。
楽園の個体数変化は急増から漸増、停滞へと推移して行き、減少へと至った。
自然界ならば季節は秋から冬、冬から春へと移ろうものだが、楽園に時季などない。
そう。凋落の秋を迎えた楽園のマウス達に、再興の春が訪れることはなかった。
そうして楽園には排他的かつ厭世的に生きる、社会から弾かれた個体が残ったものの、そのマウス達は繁殖を放棄していた。
かくして、マウスは楽園を与えられたにも拘らず全滅した。そして実験は何度か為されたが、やはりどれも同じ結末を迎えた——」
実験概要の説明を終え「有意義で有機的、そして何より皮肉的。実に面白い実験だ」と呟く。
「楽園は生物を破滅に導く。生存競争のない楽園は生物にとってディストピアと化すわけだ。
しかしそのマウス実験は《YHWH》への転用を目的として行われた。楽園を与えられた生物ないし人間の結末を示唆する結果はあくまで側面に過ぎない。
如何にすれば生物から社交性を取り除け、代わりに排他性を植え付けられるのか、これこそが実験の核心にして着想の源流だ」
不意に、真っ黒いマウスの影のようなものが視界の端、路地を駆けた。
しかしそれは本来あり得ない。
エデンに於ける人間の生活領域は全体が都市となっており、そこにネズミは生息できないからだ。
だがこれはネズミを駆逐する、何らかの対策を行う、などの人為によるものではない。科学の発展に伴う都市の最適化が齎した結果である。
かつて都市には廃棄物が有り余っていたが、現代の都市にそんなものはない。
都市からネズミが消滅したのは偏に餌がなくなったからだ。
詰まる所、現代に浮浪者がいない筈の理由と同じだ。
此処が現実ではなく仮想空間であると、葵は再認識させられた。
「オートメーションにより労働の権利を剥奪し、配給制度により外出の理由を除去し、不老不死手術により生死の柵を解消し、ネットワークにより社交の必要性を希薄する。
かくして彼らは楽園を打ち立てた。
彼らの予想通り、楽園の空疎性は哲人の啓蒙を待たずして表層化した。人々は忽ちニヒリズムへと陥ったのだ」
「そして人々はノスタルジアを抱くようになった」と男は言葉を繋いだ。
「競争や義務、障壁や目的を失った人間は、燃え尽き症候群さながらの様相を呈した。
文明の最奥へと辿り着き、終着点に至った人間には目に映るもののどれもが色褪せていた。
結果として、人間は現実を他人事としか認識できなくなった。
かつてあれ程楽園を、理想郷を望んだにも拘らず、いざそこに至ると憧憬も羨望も理想も夢も全てが虚無に落ちた。
ノスタルジア、つまりは望郷。人間は皮肉なことに、かつての現実を懐旧し恋しんだのだ———」
言葉に混ざる単調なリズムが耳朶を打つ。
発言権の剥奪された葵には、やや癖っ毛のある長髪で隠れた背中を眺めながら、滔々と語られる言葉を聞く以外になかった。
「かつての現実、別言すれば他者との相互的関係が不可欠かつ至極当然であった時代への回帰。
これが民意の色調だった。
しかし変化は望まない。科学に齎らされた安寧と停滞に浸り続けた人間の持つ器は、どれだけ矮小な変化であろうと許容できないものだった。
このため人民は、科学や文明への作用無くして変革を為す、などという二律背反甚だしい要求をした」
明転した視界に映るは、少し癖っ毛のある長髪で隠れた背中。
歩く歩道の上で嘲るように言った後、「しかし——」と男は声音を変えた。
「生活の利便性や質を損なわず、且つかつての現実を取り戻す、幼稚な絵空事そのものであるこれを、唯一体現し得るものを賢人達は用意した。
そう。仮想空間《YHWH》である。
しかし人々は《YHWH》の自在性と中毒性、解放感と万能感に魅了されたのではない。
無論それらも副因ではあるが、主因ではない。
生の実感、つまりはリアリティーこそが人々を陶酔させ、楽園から現実へと引き込んだ素因。
現実と仮想は倒錯し、人々は新天地へと駆けた」
男が語ったのは、《エデンの民》の《YHWH》への『移住』が完了するまでのプロセスである。
そして男は「これが《失楽園》の全貌だ——」と一度言い括った。
世界が暗転し、また広がる。
夢では時間や場所が転々とし、一人称や三人称など視点も定まらないものだが、感覚としてはそれによく似ていた。
夢の最中に起きる唐突な場面切り替えに疑問を抱かないように、気付けば《知恵と生命の樹》の大食堂にいることに、葵は違和感を覚えなかった。
「人間が魔法を行使できない理由は神を失い、精神界との《接続》を喪失したからだ。このため、ただの信仰は意味を成さない。
故に《YHWH》という仮想空間を擬似精神界に構築し、そこに観測者たる神の鋳型を設け、《失楽園》を経て炉心たる人々を招いた。
そして神の受肉は既に完了している。
精神界から《接続》を介して情報を出力し《擬似魔法小径》を経由させエネルギーとして具現化する。
この理論も実用段階にある」
「そう。君達こそが、計画の最終フェーズだ」と男は確かな感情を込めて言い放った。
ゲームのNPCを思わせる相互性を持たない一方通行の話。それの終わりが近いことを示唆している。
「これについて語るより先に、私は君達に謝罪をしなければならない。
ASWのシステム及び安全性確認の為の最終試験運用への協力。君達はこれを召集の理由と聞かされた筈だ。
しかしこれは繕った名目に過ぎない。職員含め君達を謀ったことを、此処に詫びよう。
だが主体こそ異なれど、これが試験であることは事実だ。我々は君達OLd TEStament Children《OLTESC》に、Artificial Spiritual World《ASW》での試験を課す」
「詰まる所、この試験に於ける主体とは君達《聖書の子ら》だ」と男は補足した。
人間が主体であること、つまりそれは、試験とは運用試験でなく選抜試験や能力検査、適性検査や学力検査などの意味であることを指していた。
前を歩く男は、葵の試験実施部屋の前に立つと靴音を止め、認証機器のロック解除なしに壁を透過した。
「君達の呼称たる《聖書の子ら》は《使徒》候補生の別称だ。
《使徒》とは神の御使いたる《天使》に代わり魔法を行使する人間を指す。そして本試験では、これを選定する。
君達が一体何故《知恵と生命の樹》に召集されたのか、何を理由に今日までスクールにて養成されて来たのか、その質問に明確な答えを示そう。
君達は《使徒》になるべく養成され重宝され期待されて来た。それこそが君達の存在意義であるからだ」
唐突に明かされた自身らの存在意義。
情緒など欠片もなく、浪漫の片鱗も見られず、葵はそれを告げられた。
試験実施部屋の認証機器が反応しないため、やむなく葵も男に倣い壁を通り抜ける。
すると入室したそこは、試験実施部屋ではなくクロックスクールの教室だった。
白板には映画フィルムが投影されており、葵は窓際の席に座っている。
退屈げに頬杖をつくその様は、面倒くさげに授業を聞く生徒さながらだった。
終業のチャイムを待ち望む視線が白板上の時計に向けられる。
「これまでの話を要約しよう。
悲願達成への近道と思われた科学の道は、単なる妄信にして妄執、至上の悪路であったことを、人間は無慈悲に突き付けられた。
進むべき道を誤ったことを否応なく自覚させられた。
近道だと思われた道の果ては、行き止まりに過ぎなかった。
しかし人間はしゃにむに壁を叩き続けた。血肉が飛び散ろうと、同胞を犠牲にしようと、同胞を喰らおうと、悪魔に身を売ろうと、盲目的に殴り続けた。
その果てに、エデンの民は自らの道を自らの手で強引に切り開いた。
扉も突破口もない高く厚い壁を幾代にも亘り、先人も友人も他人も踏み台や道具に使い、壁に極小の穴を開けた。
彼らに与えられた幾星霜の代価、それこそが擬似魔法の開発である」
男はダイジェストの締め括りとして、
「そしてその行使者たる《使徒》こそが、人間の悲願と功過の結晶体だ」
と心を打ち震わせながら言った。
プロジェクターから投影される映画フィルムへと自動的に集中していた視野が、映画フィルムと完全に一致する。
そして気付けば、映画の中にいる。
左右には祭壇画と天使や神、悪魔などの偶像が等間隔に並べられている。
そして頭上には、世界の構成や人間の科学発見、戦争やエデン、寓話や英雄譚、クリフォトの樹やセフィロトの樹などを題材にした絵画がびっしりと描かれている。
無機質ではないが絢爛とも言い切れない、嫌に重苦しい廊下だ。
「人間は救世主と聖徒を欲している。
繰り返そう。
遍く人間の救済、これが我々の至上目的だ。
我々とはこれを達成する為の機械だ。
エデンの民とは動力を生む内燃機関だ。
使徒とは生じた動力を行使する機構だ。
科学とは恩寵を捨て因果を以て奇跡を体現する人為だ。
遍く人間の救済、これが我々の行動原理にして存在理由だ」
天井画を見上げながら男は感情を乗せて言った。
そしてそれは、長い長い前置き最後の言葉でもあった。
「前提知識並びに意義の補完は完了した。
ではこれより本題、使徒選定試験《AWSE》の説明に移行する——」
《AWSE》とは、Artificial Wizard Selective Examinationの略である。
警鐘を鳴らす葵の心臓は、これより訪れる苛烈を極める激動の試験、その開幕を、そしてその先にある《冷戦》を予見していた——
言い終わると共に男は消え、認識不可に至るまで身体は加速した。
永劫続くと思われた渺渺たる廊下は瞬きの間に終わりを告げ、射出されるが如く、葵は世界から投げ出された。
真っ白い世界。上下前後左右の感覚を狂わせる程の単色だけが支配する世界に、葵は放り出された。
物理法則が上手く作用していない世界で身体は停滞する。
いいや、もしかすればそれは単なる錯覚に過ぎないのかもしれない。
落下に気付いていないだけ、例えば空気抵抗がないだけで落下していないとも限らない。
空気抵抗はあるがそれを受け取る感覚器官が備わっていない可能性もある。
そも肉体が存在しない可能性も捨て切れない。
「第一次使徒選定試験《AWSE α》の試験内容は至極平易だ。
以降、取り繕った前置きは不要だろう。
故に、有り体に告げる。
君には参加者二人の殺害を課す。これが君自身の手で生存権を獲得する唯一の手段だ」
「又、《AWSE α》通過条件の内一つである」と男は無感動に告げた。
繕った名目だけを聞かされ、実質的に何も知らされずに連れて来られた初めての場所、初めての仮想空間で、氏素性も知れない男に、唐突に殺人を課される。
その衝撃は到底形容し切れるものではなかった。
は———?
ゾッとする程に純然たる疑問が視界と意識を黒一色に染める。
葵と相対する男は、彼の動揺など気にも留めず、淡々と言葉を紡いだ。
その足元にはその声に共鳴し緩やかな水紋が立っている。
「君達《OLTESC》の存在意義は《使徒》と成る、ただこの一点のみである。
その存在価値こそ君達の生存権を保障する無二の寄る辺だ。
遍く人間の救済へと至るまでの旅路に於いて、存在価値を持たぬ人間は悉く捨て置く」
故に、と男は言葉を区切り、片手を掲げた。
そして意思力と生命力を帯びたその双眸で葵を射抜く。
「君が手ずから勝ち取れ」
———生存権ヲ。
「己が力を以て証明しろ」
———存在価値ヲ。
「生きろ。殺せ。掴め。奪え。拓け。焚べろ。
その手を血肉で朱に染め、屍の丘を作れ。
その足で肉塊を踏み、丘の頂に登れ。
それが《AWSE》を統べる、絶対の意義である——!」
渺茫たる白色の世界、その一点にノイズが入る。
男の背後に生まれたバグは加速度的に伝播し、白を侵蝕して行った。
否。それはバグではなかった。第一次使徒選定試験の開幕を知らせる正規の仕様であった。
風を切る音が葵の耳朶を打つ。
空気抵抗が葵の全身を押し上げる。
その視界一杯に広がる文明の光が、葵の双眸を煌めかせた。
自由落下の開始と共に、男は視界から消えた。
それに伴い、男の声も消失。
しかし程なくして言葉はまた再開された。
『君のインベントリには半自動式拳銃が格納されている。弾倉に収められた弾薬は計十二。それを用いて参加者二人を殺害したまえ。
拳銃の奪取や譲渡は許可しよう。他の参加者が所有する拳銃を君が手にした瞬間、それの所有者は君と成る。
ただし、拳銃を手放した場合は戦意の喪失と見做し失格とする。
また、弾薬を全て使い果たした場合、拳銃を手元から失った場合も同様に、試験続行不可能と判断し脱落とする』
『自殺志願者は是非参考にすると良い』と男は冗談か本心かも判別が付かない上にゾッとしない台詞を綴った。
妙な心地であった。声による情報発受でもなければ、脳に直接語りかけて来るのとも違う。
言ってみればそれは心奥に刻印された文字を読み取る作業だ。
心に焼印されるが故に、褪せることがない。
心に刻印されたが故に、反芻の必要もない。
『電脳世界での死が現実の死に直結することはない。
しかし失格者並びに脱落者、そして死亡者からは生存権を剥奪する。その代価として六文銭を進呈すると誓おう。
つまり、失格、脱落、死亡、これら三つのどれかに該当した者は、その脳に埋め込まれたマイクロチップを即刻爆破することを此処に明言する。
また、負傷や出血に伴う痛み、その他感覚、そして死因は現実世界のそれらに準拠している。
尤も、電脳世界で受けた傷が現実の体に直接の影響を及ぼすことはないため安心して欲しい』
男の話を簡単に要約すると、使徒選定試験で途中退場した者は皆死ぬ、ということだ。
そして痛み以外の感覚も忠実に再現されるらしく、電脳世界で死ぬ場合は死を疑似体験するに等しい。
尤も、電脳世界での死が現実に直接影響しないとはいえ、結果的に現実でも死ぬことに変わりはない。
言ってみれば、電脳世界で人を殺せば、実質的に殺人を体験することになる。
そして男は精神に関しての言及をしなかった。
つまり度合いに個人差こそあれど、オルテスク達が心的外傷を負うことを前提として弁えている。
男は、人道に非ぬ道、外道を突き進む。
否、人の道は屍の道と同義だ。路傍には屍体がボロ雑巾のように横たわっている。
であるならば、男の歩く道はまさに正道だ。
遍く人間の救済までの旅路には無量の屍が転がっているのだから。
『先に言った通り参加者二名の殺害、これを満たした場合、当該者の意識を即時に現実世界へと帰還させ、一時の生存権を保障すると約束しよう』
一時の生存権を保障する、この言に隠された真意は、真に未来を掴みたくば使徒となれ、である。
その間にも高度は刻一刻と低下して行き、対して街の解像度は刻々と増して行く。
秒読みは既に始まっているのだ。
高度から推測するに、試験開始までそう時間は残されていないのだろう。
もしかすれば次に瞬きをした時にはもう試験が開始されているかもしれない。
しかし、それはなかった。何故ならまだ、男が試験の開始を宣言していない。
だが今まさに、試験の開幕が男により告げられようとしていた。
『以上を以て第一次使徒選定試験の説明を終了とし、並びに試験の開始を此処に宣言する』
散々長い演説や説明を続けた男は最後に限って短く『君の健闘を期待している』とだけ残した。
同時に、視界が暗転した———
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彼が語った楽園の実験は、現実でも行われたとされるマウス実験「ユニバース25」と酷似していますが、今回における「マウス」とは彼なりの比喩です。
その「マウス」が一体何を指すのか、彼の言葉の途中で「マウス」が“路地”を駆けたのはなぜか、その答えの一端は第一話「血臭香るプロローグ」にあります。
しかしこの全容を語れば、主題から大きく逸れてしまいますし、何よりも想像以上に惨いので、彼は比喩という形を取っています。
もしかすれば、別の誰かの口からいつか語られるかもしれません。