用意周到な船長
「うむ。異常無し。」
「では行きますか、船長」
「いや、まだ早い。今から行く星の住民がどんなふうに攻撃してくるかわからん。」
「攻撃してこないかもしれませんよ?」
「備えあれば憂いなしだ。」
「はぁ」
これは、宇宙の探索をしている宇宙船だ。努力して宇宙飛行士になったは良いけど、なんでも船長の言いなりだから、半分嫌になっている。
「何をボケっとしとる。さっさと準備しろ。」
「はぃ。」
「おいボケっと、出発だ。」
「了解!」
運転は青年が担当しているのでやっと仕事ができる。
と、喜んでいると
「あ、待て!」
「どうしましたか?」
「今のうちに遺書を書いておけ。」
「はい?」
「遺書を書けと言ったのだ。」
「またですか?」
「宇宙飛行士とは、常に死と隣り合わせなのだ。死んでからは何もできん。先に用意しておけ。一つしか書いていなければ無くしてしまうかもしれないだろう?死ななければ遺書は捨てるだけだ。早く書け。」
「そんなものですかね。」
その場を適当にはぐらかし、船長の愚痴とも言える遺書を書いた。
「遺書」
“私は宇宙飛行士になり、その責務を全うした。
次に行く星で死ぬかもしれない。だが、綴っておきたいことがある。船長のことだ。「備えあれば憂いなし」と言って、宇宙船に乗ってから一週間しか経っていないのに、遺書はこれで8枚目。
あ、書き忘れてたけど、まだ地球上。”