第10話
「そうやなあ。例えばやけど、自分たちの見た目イジりとかは?」
「見た目イジり?」
「うん。ハゲとかデブとか。ブラマヨさんだって、ハゲとブツブツで優勝したやんか」
「俺らイジれるほどおもろい見た目してないやろ。それに、ブラマヨさんは別に見た目イジりで優勝したわけじゃないし。それにお前、今時見た目イジりは無いって。特にハゲネタなんかいつの時代やねんって感じやろ」
「そうか……。じゃあ、衣装揃えるとかは?」
「衣装な……」
「俺らって漫才の衣装って特に決めてないし、ほぼ私服みたいな格好ってやってるやん。ネタもいいけど、やっぱり見た目から覚えてもらわなあかんし、一目見たらすぐその人やって分かるような衣装にした方がええんちゃうかな。例えば、真っ青なスーツとか」
「それは俺も考えたことはあんねんけどな。とりあえず、一旦保留で」
「あとはーー」
「いやめっちゃ出るやん」
「え?」
「いや、今まで全くネタに口出しして来んかったのに、言っていいって言った瞬間めちゃくちゃ意見出てくるやん」
「え? あかんかった?」
「あかんわけじゃないけど。え? ずっと俺のネタに不満あった?」
「そういうわけやないけど、アイデア出せって言うから」
「……まあええわ。ほんで? 後は?」
「あと、お前SNSの使い方には気を付けろよ。特にライブ配信で大先輩の文句とか言うたらあかんぞ」
「急に何の話やねん。ネタ関係ないやないか」
「いや、何かふと注意したくなったから。いつか誰かやるんちゃうかと思ってん」
「変な予言みたいなんやめろや」
「あと関係ないけどさ」
「関係ない話もうええねんけどな」
「俺らぐらいの若い世代がさ、いろんなエンタメ業界で仲間みたいな感じで活躍できたらええよな。例えば……『第七世代』みたいな呼ばれ方して」
「何の話してんの?」
「ほんでネタの話やけど」
「急に話戻るんかい」
「一個の物をテーマにして、俺とお前でそれだけについて話し合うっていうのはどう?」
「どういうこと?」
「例えばコーンフレークをテーマにするとしたら」
「何でコーンフレーク?」
「今ぱっと思いついたから。で、コーンフレークに関する情報を二人で言い合って行くねん。『それコーンフレークやないか』とか『それやったらコーンフレーク違うやないか』みたいな感じで」
「急におもろそうなシステム漫才提案してくるやんけ」
「あかんかな」
「ううん。でもそれ、誰かがやってた気がすんねんなあ。誰か忘れたけど」
「……しゃあないなあ。じゃあ、ボケの俺が好き放題に暴れ回って、お前が横でひたすらツッコミ続けるみたいなのは?」
「ううん。悪くないとは思うけど、それってさ、俺とお前の会話はほとんど無いってことやろ?」
「まあ、そうかな」
「それってさ……………漫才って言える?」
「何を溜めて言うとんねん」
「まあええわ。思ったより参考になったわ。ありがとう。もう一回いろいろネタ考えてみる。じゃあな」
そう言い残して、俺は喫茶店を出た。
数年後、この喫茶店での会話を、俺は何度も思い返すことになるのだった。




