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親子の関係。

          挿絵(By みてみん)


              「俺は・・駄目な男だ。」


リハビリ室を出て自分の病室に向かう、最近は階段を使いリハビリを兼ねた運動を始めた。

リハビリ室で自分を強く抱き締め、泣いていた石塚先生を思い出す。

「なんだったんだろ・・」

階段の踊り場で一休みする。

5階の病室まで一気に上がれない程体力が落ちていた。

そして片目だけで見る階段、最初の内は何度か足を引っかけ倒れた事があったが、今では引っかけることも少なくなった。

何とか息を荒げながら5階に辿り着く、首筋に流れる汗を拭こうして石塚先生にタオルを貸したのを思い出す。

「タオル・・貸してしまったんだ。」

仕方なしに病室へ急ぐ、病室に入ると自分のベッドの横に、誰か座っている。

「誰だ・・・」

この間の陽詩の件があり、慎重に自分のベッドに向かう。

「パパ。」

ポニーテールが揺れる、丸い目を笑顔にして微笑む月菜が居た。

「どうした、部活帰りか?」

首を振りながら立ち上がる。

「一回家に帰ってから来た。」

確かにジーンズ地の青いミニスカートにTシャツ姿、手に大きなバックを抱えていた。

「忍くん、着替え。」

抱えていたバックを忍に突き出す。

「ありがとう、月菜。」

片手でバックを受け取り、ベッドの脇に卸し、その手で月菜の頭を撫でた。

「もう、子供じゃないんだから!」

怒りながらも上目遣いに忍を睨むが、手をどかそうともしない。

忍はゆっくりとベッドに腰かけ、月菜に椅子に座るよう即す。

「あ、悪い、バックからハンドタオル出してくれるか、リハビリがてら階段を使ったら汗かいちゃって。」

言われた月菜はバックからタオルを出すと忍に手渡す。

汗を拭う忍を見ながら何かを思い出したように笑顔を浮かべて立ち上がる。

「体拭いてあげる、カーテンだけ閉めて用意してて!」

「え・・良いよ、自分でできるか・・・」

既に月菜は病室を後にしていた。

はぁ・・溜息をつく。

忍は頭を掻きながら立ち上がり、カーテンを閉める準備を始めた。


パジャマのボタンに手を掛ける、後ろの小机の上に桶を乗せ、月菜がタオルをお湯につけている。

上半身のパジャマとシャツを脱ぐ。

「忍くん、背中から拭くね。」

「あぁ、悪いな月菜・・」

タオルを絞る音が聞こえる、忍は少し背中を丸めるようにして下を向く。

タオルからお湯が絞り出される音が耳に入る。

「・・・・・・」

何時までもタオルが背中に触れる感触が無い。

「つく・・」

後ろに振り返ろうとした瞬間、背中から忍の胸に手が回された。

「月菜・・どうし」

「パパ・・」

後ろから抱き着かれた忍は、背中に違和感を覚えた。

経験があるからこそ分かる、肌と肌が直接触れ合った時の体温と感覚・・

「パパ・・もう月菜は大人なんだよ・・」

体温が背中から離れた。

「月菜、お前何を・・」

忍は振り返ると言葉を失った。

カーテンの後ろから射す太陽の光が、白い肌を照らし月菜の体のラインを浮かび上がらせていた。

「忍・・見て。」

そこには恥ずかしそうに俯き、一糸もまとわない月菜が立っていた。

「馬鹿、服を・・」

怒るにも相部屋の病室、この状況を外にバレない様にしなければならない。

大声も、大きな音も立てられない。

「もう、忍くんのお嫁さんにだってなれるし、子供もつくれる。」

顔を赤くして、恥ずかしそうにしながら真剣に忍を見つめている。

成人女性と変わらない胸のふくらみ、腰のくびれ、そしてアンダーヘアー、隠そうともしていない。

「とにかく、服、服を着なさい!」

「いやっ!」

「月菜!」

月菜は忍を睨みつけると、忍に勢い良く抱き着く。

後ろから抱き着いた月菜はその勢いのまま、忍をベッドに押し倒し忍の唇を奪う。

「なっ・・月・・」

忍は上に乗っている月菜をうまく退けると、逆に月菜をベッドに押さえつけた。

「月菜!いい加減にしなさい!」

小声だが本当に怒って叱責する。

「いやだっ!」

イヤイヤするように首を振る月菜。

「こうでもしなきゃ、パパをあの人達に取られちゃう!」

「もう、我慢できない、パパが大好きなの、愛してるの!」

「みんなに、親子じゃなく恋人として見られたいの!」

月菜の目に涙が浮かび、忍が押さえつけている手を解こうともがく。

涙が溢れ出しす月菜を見つめた。

心が痛む・・親子として生活し、まさか血のつながりが全くないと知った月菜、俺はこの子に何をしてあげられるんだろ。

月菜に真実を話すと決めた母との会話を思い出す。


「そしたら、そしたら忍・・・・あの子が、あの子が貴方との本当の事を知って、貴方に全身で恋心をぶつけてきたら・・・少しでいいの、貴方の心に少しだけ隙間を開けて受け入れてあげて欲しいの・・・ねぇ。母さんからのお願い。」


「俺は・・駄目な男だ。」

一息入れると月菜を押さえていた手を離した。

一瞬の間が空く、月菜もいきなり手を離され動きが止まる。

上から慈しむように月菜を見ている忍の顔。

ゆっくりと月菜の白い両手が忍の頬に触れる。

その手が忍の体に触れながら首に回された。

「忍・くん・・あいしてます・・」

忍はゆっくりと自分の意思で月菜とキスをする。

月菜の腕に力が入る、忍と月菜は抱き合いながら舌を絡める。

月菜の目からは涙が溢れ出していた。



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