欲しい・・・
更新します。
繁忙期にはいるので、超更新が遅れるかも。
「先輩が・・・啓二さんが・・・欲しい。」
「薫が・・・欲しい。」
改札から吐き出されてくる人達を眺めている。
忙しそうなサラリーマンやOL、そしてカップルや女性・男性同士のグループ。
皆幸せそうに石塚薫には見えた。
季節は冬へと変わり、年の瀬を迎えようとしていた。
ショート丈の黒のダウンジャケットに、白いセーター、Aラインの黒のミニスカートに黒のソックスブーツ、出来るだけお洒落をして来たつもりだ。
待ち合わせ場所の駅の改札で、自分の体を動かしながら変な所は無いか確認する。
「薫。」
声を掛けられ慌てて声の主に視線を向ける。
「待った?」
笑顔の神居啓二先輩が立っていた。
白のブルゾンに、ブルージーンズ、細身で背が高い。
薫は笑顔で啓二先輩の腕にしがみつく。
こうして二人で歩けるのも後数か月しか無い。
啓二も薫から話を聞いており、残された二人の時間を大切に過ごしていた。
「少し急ごうか。」
啓二は薫の手を握り走り出す。
人ごみの中を二人視線を絡める、白い息が後ろに流れていく。
今日は映画を二人で観る予定だ。
薫が観たがった恋愛映画、ちょっと大人なシーンもありながら最後は涙を流していた薫。
映画を見終わった後、喫茶店で映画の内容について話していた。
映画以外の世間話で笑いながら、二人の時間を楽しんだ。
ウィンドショッピングや、ゲームセンターなどで遊び、時間があっと言う間に過ぎていく。
朝から曇っていた空から白いものが落ちて来た。
「雪・・・」
二人して空を見上げる。
都心にある小さな公園、雪が降り始めて家路を急ぐ人たちが見える。
色とりどりの傘が行き交う。
「先輩・・・・」
雪を見上げていた忍の腕を薫が引っ張る。
上を見上げる薫の顔が涙を浮かべていた。
「薫。」
啓二は優しく薫を抱きしめた。
「先輩と・・啓二さんと会えなくなるなんて・・・やだ。」
啓二の抱きしめる腕の中で、泣いている薫。
「啓二さん・・・」
薫が顔を上げて目を瞑る。
啓二がその頬に手を当て、優しく口づけを交わす。
ぐいっと啓二の首に薫がしがみつき抱き寄せる。
前屈みになった啓二の唇に激しく自分の唇を重ね、舌を絡めてくる。
「はぁ・・せん・・ぱい。」
「かおる・・・・」
二人の唇がゆっくりと離れる。
「先輩が・・・啓二さんが・・・欲しい。」
潤んだ瞳が揺れている。
「薫が・・・欲しい。」
二人の瞳が揺れ、そしてキス。
雪が二人を隠していた。