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来々軒会議

          挿絵(By みてみん)

         ※「これから、ラーメン食べながら話そ。」


 


「麗羅、和美!」

月菜は学校の正面門で待っている二人に声を掛けた。

「ごめん、まった。」

「うん、すこしね。」

麗羅が答える。

夏服のワイシャツに夕日が映える。

「部活どうだった。」

「相変わらず・・・」

「剣道部は防具、暑そうだもんね。」

他愛の無い話をしながら三人は校門から続く坂道を歩く。

街路樹も緑の葉を勢い良く茂らせ、日光を遮る日陰を作る。

三人は何時もの来々軒に向かって歩いていた。


来々軒に向かう道、麗羅と和美に父への思いを吐露した公園を歩く。

三人は夕日の中、芝生の上を歩きながらあの日の事を思い出していた。

鞄を後ろ手に持ちながら、月葉は麗羅と和美に声を掛ける。

「あのね、二人に話があるんだ。」

和美と麗羅は顔を見合わせ立ち止まる。

二人の影が月菜に伸びる。

ジワジワとセミが鳴く。

月菜は笑顔を浮かべた・・八重歯が見える。

「あのね、」

デジャブ・・・?!、あの日の月菜の告白が思い出された和美と麗羅は月菜のその先の言葉を止めた。

「まって、月菜・・・その話って・・・お父さん?の話?」

和美が声を出し、麗羅は和美のワイシャツを指で摘まんでいる。

「・・・・・・・」

「月菜・・・もし、その、親子だから・・諦めたのなら、その・・」

和美がしどろもどろにしゃべりながら、口元に握った手を持って行き言葉を絞り出す。

「おっ・・・おとこ、おとこのこ子紹介するからぁ!!!」

麗羅が大声を張り上げた。

「だ、大丈夫だからね月菜、お、お親子な、なんだから仕方がないよぉ。」

「ねぇ、麗羅、そうよね。」

和美が麗羅の肩をバンバン叩く。

「そ、そうよ、もっといい男、たくさんいるし、ねぇ、おお、お父さんなんて・ねぇ。」

和美と麗羅が顔を合わせながら、ワタワタと視線を泳がせ月菜に笑顔を見せる。

「・・・・・・・・・」沈黙。

月菜は目を瞑り、大きく息を吸う、そして目を開いて笑顔を二人に向ける。

「和美、麗羅・・・心配してくれてありがと。」

「へ・・・・」

和美と麗羅は二人で抱き着きながら月菜を見た。

「うんとね・・・パパ、忍と私・・・実の親子じゃなかったんだ。」

その瞬間、月菜は二人に背を向けた。

制服のプリーツスカートがフワリと舞う。

「だから・・・堂々とパパに、忍に愛してます。そう言えたんだ。」

和美と麗羅は月菜の後ろを向いたままの衝撃の告白に、抱き合ったまま固まっていた。

「そっ・・・それどう言う事!」

麗羅と和美が大声を上げた。

「これから、ラーメン食べながら話そ。」

月菜は二人に振り返って笑顔を見せた。

「月菜!!!!!」

和美と麗羅が、月菜に抱き着いてきた。

公園の芝生の上、三人の女子高生が笑いながら抱き合う・・・三人の影が楽しそうに踊っていた。


ずず~。

麺をすする音が響く。

女子高生三人がテーブル席で、ラーメンをすすりながら小声で話している。

たまに、キャー♡と声が小声ながら響く。

「そうなんだ、衝撃の事実ね。」

「うん、でも私の為にパパは人生を棒に振っているから。」

「いいじゃない、これから返せばいいんだから。」

「そうよ、身も心も好きにして~♡って。」

「でも、ライバルが高橋先生とはねぇ・・・」

「そうなのよ、あのオッパイ色気女。」

「でも、お父さんは付き合ってるんでしょ。」

「そこなのよね・・大人のお付き合いって、言ってたけど、」

「問題はどこまで進んでるかよ。」

「もう、しちゃったのかしら?」

「いや、やめて♡」

「ほんと、やめて、和美、麗羅。」

「う~ん。」

ずずずっ~。

麺をすする。

「はぁ・・・」

三人一緒にため息が出る。

麗羅が急に背を伸ばし、「おじさん!チャーハン追加。」

カウンターの中の親父さんが、鍋を振りながらサムズアップ。

「チャーハン一丁追加~!」

店中に響きわたる。

「私もチャーハン!」

和美と月菜も手を上げる。

「はいよ~、赤高女子(赤城北高の女子高生)チャーハン全部で3つ追加~!」

また三人で頭を寄せる。

「でも月菜、一緒の屋根の下に住んでるのはアドバンテージよ。」

「そうよ、そうよ。」

「私もそう思うんだけど・・・・」

麗羅と和美が顔を見合わせる。

「既成事実・・・しかないわよ。」

「既成事実?」

そう、既成事実、麗羅と和美がいやらしく笑う。

「そんな・・でも・・パパは私の事娘として接しようとしてるし・・キス止まりだし。」

「私たちにあって、あのオッパイ色気女に無いもの。」

「若さ・・・そして若い色気。」

「結局、若さしかないじゃない。」

「そう・・・若さしかない、若いから勢いで押すしかないわよ。」

「・・・あっ。」

月菜は剣道部の更衣室での事を思い出していた。

「大人のした・・下着付けたら、パパ喜ぶかな。」

「・・・・・それよ!」

麗羅が騒ぐ。

「色気で適わないなら、セクシーな大人の下着で勝負よ!」

「果物模様や花柄の可愛いコットン下着は卒業よ!」

拳を握りしめる麗羅、何となく賛同する和美。良く分かっていない月菜。

「チャーハン3つお持ち!」

湯気の立ち上るチャーハンが3人を一つにまとめるのだった。




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