大人な・・・
※午後の日差しが更衣室に差し込む。
病院内に夕食の配膳を知らせるアナウンスが流れる。
忍のベッドを囲っていたコントラクトカーテンが開け放たれた。
何か赤い顔をした二人が、ぎこちなく片付けている。
楓は何となく身支度を気にしながら、自分のバックを抱えて忍を見る。
「じゃあ、私帰るね。」
明るく忍に声を掛ける。
「あぁ、明日はこの手のボルトを外す日だから見舞いはいらないよ。」
「うん・・・」
なんだか恋人同士の会話・・・楓はそう思った。
そして腰を屈めて、ベッドで体を起こしている忍の耳元に囁く。
「しのぶ、こんど隠し事したら・・・」
「わかってる・・・ごめん。」
忍は苦笑いをする。
楓は腰を伸ばすと、忍を見下ろし溜息をつく。
「この続きは、忍が退院したらね。」
ウィンクをしながら囁く。
「あぁ・・」
忍は肩を竦めた。
「じゃあね、また。」
楓は手を上げ踵を返す。
病院を出て、自分の車に向かう。
「あっ・・・聞き忘れた。」
楓は忍に一番に聞かなけれな行けないことを忘れていた。
「会社歓迎会、香水・・・・まぁ、次でいいか。」
楓は思いっきり体を伸ばし背伸びをした・・・・
午後の日差しが更衣室に差し込む。
夏休みも半分を過ぎ、今日で剣道部の夏季練習も終わり。
汗で濡れた下着を新しい下着へと着替える。
月菜の周りの生徒も、搔いた汗をタオルで拭きながら制汗剤や柑橘系の香水をつけて汗臭さを多少なりとも緩和しようとしている。
シャワールームがあれば良いのだが、そこまでの設備はこの学校には無い。
月菜も制汗剤をわきに使いながら、周りの子と話しをしていた。
彼女達、当然月菜も含めてだが、大体コットンのピンクや薄いブルー、白の可愛い下着を着用している。
月菜も最近下着がきつくなってきたような気がして、今度新しいのを買わなきゃと考えながら着替えていた。
「ねぇねぇ・・」
その時、隣のロッカーの立花さんから声を掛けられた。
特段仲が言い訳ではないが、同じ部員同士軽く話をする程度の女の子。
「なに?」
シャツのボタンを留めながら立花さんに顔向けた。
立花さんは他に向けていた視線を月菜に戻しながら、月菜の耳元に顔を近づけた。
「ねぇねぇ、高瀬部長、すっごく大人って感じしない。」
「え?」
月菜は立花さんの言葉に追いつけないでいる。
「ほら、見てみなよ・・・高瀬部長。」
立花さんの視線を追いかけるように顔を向ける。少し離れた場所で高瀬部長が着替えていた。
月菜はその姿を見て高瀬部長のスタイルの良さに溜息する。
高瀬部長の足にショーツが入り、白い指がショーツをお尻まで引き上げる。
フィット感を確かめるように、ショーツの端を指がすり抜ける。
ロッカーの中に手を伸ばし、ブラを取りブラストラップに両肩を入れ乳房をカップに合わせるように指が動く。
でもそんな姿は女子なら当たり前だし、取り立てて注目することではない。
しかし、立花さんが見ていたのはランジェリーのデザインだった。
「ねぇ、すごくないあの下着、シルクか何かよ。」
そう言われた月菜は高瀬部長の下着に目を向ける。
色は薄い水色なのだが、所々使われているレースが大事な所を隠していない気がした。
ブラなら乳房のトップの所にレースが使われ、ショーツも正面の部分の一部がレースでデザインされていて隠れていないような・・・
呆然と月菜は赤瀬部長を見つめていた。
「ねぇ、高瀬部長、大人よね・・今日彼氏とデートなのかな?」
立花さんの言葉が耳に入る。
「彼氏も喜ぶだろうな・・・・・高瀬部長スタイル良いし、あんな大胆な下着なら・・」
その声で月菜は我に返る。
我に返った月菜は、立花さんに食いつくように聞き返す。
「たっ・・立花さん、お、男の人ってあ、あいう下着着たら喜ぶの?」
がっしりと月菜は立花さんの両肩を掴む。
「月菜さん、ちょっと痛い。」
立花さんは掴まれた腕を見て顔をしかめた。
「あ・・・ごこ、ごめんなさい。」
「どうしたの、月菜さん・・・まぁいいけど、大体の男の人は好きでしょ。セクシーな下着。」
立花さんはちょっといやらしく笑う。
「ふ、ふ~ん。そっ・・。そうなんだ」
月菜はロッカーに向き直り、ボタンのシャツを留めながら真っ赤な顔をしていた。