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恋人

宜しくお願します。

仕事が繁忙期に入る為、更新は少し遅れます。

雨が窓ガラスを叩く音がする。

「・・・・・」

忍はベットから起き上がり、カーテンを開けた。

「雨か・・・・・・」

そう呟きながら、自室のドアに手を掛けて立ち止まった。

昨日の事が鮮明に思い出される。

月菜の唇の感触、月菜が絡ませてきた・・・・・そして月菜の体温。

「・・・まずいぞ。忍。」

自分に言い聞かす様に呟く。

とにかく今朝、月菜に会っても何事も無かったようにふるまう。

そう、何も無かったかのようにだ。

忍は覚悟を決めて、自室のドアを開けた。

「おはよう!パパ!」

元気な声が響く。

リビングの方に目線を向けるが、声の主が見当たらない。

すると、忍の首に柔らかい何かが纏わりつく。

そして、柔らかい何かが唇に触れた・・・そしてゆっくりと離れた。

直立不動のまま、忍は月菜に抱きしめられ唇を奪われていた。

固まったまま忍は、上を見上げ恥ずかしそうにしている月菜と視線が合う。

ギコギコと音が出そうな動作で忍が動いた。

「・・・お・・は・・よ・・う、つくな・・・」

「パパ・・大好き。」

月菜は笑顔を浮かべると、また唇を重ねた。

「・・・・つ・・くっ・・」

完全に変な形で主導権を握られた忍は、その場に立ち尽くした。

月菜の行動が、忍の想像の遥か斜め上だったから仕方がない。

月菜は後ろ手に手を組むと、下がりながら前屈みになる。

キラキラと輝くような笑みを浮かべ八重歯が光る。

「朝ご飯作ってあるから食べて、私は学校でやることあるから行くね。」

笑顔を振りまきながら自室に入り、カバンを持って玄関へ向かって走り出す。

「あっ!」

そう小さく叫んだ月菜が振り返る。

「忘れてた!」

白いシャツとスカートを翻し、忍に抱きつく。

「行ってきます。」

そして頬にキス。

忍に手を振り、玄関を出て行った・・・・

忍はその場で膝から崩れ落ちる。

「・・・・・まずい、まずいぞ・・・俺たち親子は新婚夫婦か?」

完全にスキンシップ・・・いや過剰すぎるスキンシップが日常化しそうになっている。

もしかして、忍が抵抗もせずキスを受け入れたのがいけなかったのか。

もしかして、俺と恋人になれたと勘違いしているんじゃないか。

「いかん・・・・」

忍は頭を抱えて唸るしかなかった。



車窓に山々が見える、通勤時間帯の電車だが地方都市の電車に満員と言う言葉は無いらしい。

忍は電車に揺られながら携帯電話をいじり「近親相姦 有り得ない」そんなワードで検索をした。


この検索結果がこれだ。

ウェスターマーク効果 幼少のころから極めて親密に育った人々の間に、性交に対する生得的な嫌悪が存在する。


これ本当か?他にも色々な結果が表示され、ただ混乱を招くだけだった。

「はぁ・・・」

忍は月菜に投げられ画面に亀裂の入った携帯電話をカバンにしまう、誰にもこんな事を相談できるわけがない。

「恋人でも作るか・・・」

恋人でもいれば、月菜とこんな事にはならなかったのではないか。

月菜が成人するまではと、女性と付き合う事は避けていた。

それがまずかったのか・・・・

自分に恋人がいれば、いずれ月菜も分かってくれるかもしれない。

でも、そんな急に彼女なんて出来るはずがない。

「はぁ・・・」

忍はまた溜息をついた。

どこからか聞き覚えのある音楽が耳に入る。

「あっ。」

携帯電話をマナーモードにするのを忘れていた。

忍は今しまったばかりの携帯電話を取りだす、カバンから出すとひとまわり大きな音に聞こえ、慌ててマナーモードに切り替えた。

ブー、ブーと小さく振動する携帯電話。

「高橋楓先生」

携帯電話に浮かぶ名前を見て忍は高橋楓の言葉を思い出していた。

「わたし・・・本気ですから。」

忍は携帯の画面を何時までも見続けていた。



学校への坂道を歩いていると、先に歩く友達を見つけた。

月菜は笑顔を浮かべると走り出しす。

そして仲良く並んで歩く友達に向かって両手を広げながら抱きつく。

「和美!礼羅!おっはよー!」

「きゃー!ナニ、月菜!」

「いきなり!ビックリするじゃない!」

和美は勢いでずれた眼鏡を直し、礼羅は髪の毛を直す。

周りを歩く学生が、何事かと三人を見ていた。

月菜は八重歯を見せながら機嫌がよさそうに笑っていた。

和美も礼羅も、ここ最近月菜の様子が変だったのを心配していた。

今日の月菜は何かが吹っ切れたように笑顔を向けている。

和美が月菜を覗き込むようにして首を傾げる。

「月菜、なんかいい事あったの?」

「へへへ・・な・い・しょ。」

礼羅が頬を膨らます。

「月菜、何それ、ここんとこ月菜の様子が変だったから心配していたのに。」

そう言われ月菜は真剣な表情を浮かべた。

「ごめん、和美、礼羅、でも、もう大丈夫だから、ごめんね心配かけて。」

和美と礼羅は顔を見合わせた。

「月菜、私達に心配かけた分、来々軒で驕りね。」

「えー!」

月菜が不服そうに抗議するが、冷たい視線を二人から受けて渋々了承した。

「わかったわよ・・・おごるわよぉ・・・」

そして、二人に肩を組まれて小さく囁かれる。

「月菜・・・何があったのか教えなさいよ、絶対よ。」

和美と礼羅は悪い顔になっていた・・・


「今日こそは、忍と話さなきゃ・・・」

下田陽詩はオフィスビルの出入り口で神居忍を待っていた。

別に待ち合わせの約束があるわけでもない。

でも、今泉達也からのプロポーズの返事をする前に、もう一度神居忍と話をしたかった。

ビルから吐き出されて来る沢山の人の中から、神居忍の姿を見つけた。

ネクタイを緩め、灰色のチェック柄のスーツーで歩く忍を「変わらないな・・」

そう感じ、昔よくデートした事を思い出していた。

陽詩は忍に声を掛けた。

「しのぶ。」

その声に神居忍は足を止めた。

「下田さん、どうしたんですか。」

陽詩は「下田さん・・」と言われた言葉に胸が苦しくなる。

「忍、少し話があるんだけど・・・時間ある。」

忍を見上げ胸元で右手を軽く握る、その手に緊張の所為か汗が滲む。

忍はちょっと渋い顔をしながら自分の腕時計を確認した。

「この後予定があるから、1時間ぐらいなら・・・」

陽詩はホット溜息を付くと笑顔を浮かべた。

「1時間でもいい、貴方と(しのぶと)・・話したいことがあるの。(忍に確かめたいことがあるの。)

そう言って俯くと陽詩は歩き出し、忍はその後を黙って付いて行った。



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