ファーストキス
ちょっと時間があったので、出張先から更新します。
前回、今回とちょっとアダルトな内容となっています。
よろしくお願いいたします。
※陽詩はその忍の指を追うように・・自分の乳房に触れる.
熱めのシャワーが頭の上から降り注ぐ。
髪の毛が下田陽詩の体の線に沿うように流れ落ちる。
バスルームの椅子に座り、鏡に映る自分を見つめていた。
右手の甲を唇にあて、何かを拭い去る様に唇を拭う。
何度も何度も唇を拭う・・・頭から落ちるお湯を感じながら瞳からも涙が溢れる。
「くっう・・・うっ・・うっ・・」
嗚咽が漏れ、口を両手で抑える、今泉達也・・・幼馴染で同級生、ほんの数時間前に告白され強引にキスをされた。
自分は軽く考えていたんだろう、家族からは「達也君は陽詩に対して特別な感情を抱いている。」そんな事を母や妹に言われても腑に落ちなかった。
何しろ、自分はバツイチの子持ちだ・・・達也は結婚も一度もしていなければ子供も居ない・・当然自分は恋愛の対象外だと思っていた。
なのに・・・・
陽詩は後悔していた、今泉達也の事を軽く考えていた事を後悔していた。
達也は自分に対して本気だった・・・・再婚など考えていない自分が浅慮だったのだろう。
強引に唇を奪われ、強引に陽詩の口中に入り込んでくる・・・嫌だ・・・嫌悪感。
「キスなんて・・・大した事ないじゃない。」
バスルームの鏡に映る自分を見る。
そこには目を真っ赤にして、まだ手の甲で唇を拭う自分が写っていた。
結婚もして・・子供もいる自分が今さら「キス」ぐらいで動揺するだなんて考えても居なかった。
達也の前から逃げ、自宅の玄関で掛けられた妹の声「お姉ちゃん・・何かあったの。」その言葉で涙が溢れた。
「たかだか、キス・・・・」そう思おうとした・・・34歳になるおばさんが、それくらいの経験なんて幾らでもあるはずなのに・・・
前の旦那とだって子供を授かっているのだ、人には言えないような経験だってある。・・「初めてでもないのに・・・」何人の男と付き合った・・・いまさら。
そう思えば思うほど、とめどなく涙が溢れる。
シャワーが体を叩く音が続く・・・「キスなんて・・慣れているのに・・・」
独り言を呟き・・・今迄唇をこすっていた手から、指がゆっくり優しく自分の唇をなぞる。
「キスなんて・・・・・・」
そう思った瞬間、甘酸っぱく、切ない・・忘れてしまいたい思い出が蘇える。
シャワーの音が、雨の音にすり替わる・・・まるであの日のように・・
陽詩は最初の・・・子供の好きではなく・・・本気で自分の体を相手に任せても良い・・・心も体も本気になる恋・・・本気だった・・・懐かしい青臭い頃の記憶・・本当に好きだった人との「キス・・・」そんな記憶が思い出された・・・
「しのぶ・・・」自然と口に出る、自分の中で一番大人として背伸びをした記憶。
神居忍の瞳が揺れる、忍が大学1年生、陽詩は高校3年生・・・初めて交わした口づけ・・・
お互いを離さないように、どちらが相手を愛しているか比べるように抱き合った。
ファーストキス・・・桜の花が雨と共に散る夜に、傘に当たる雨音までが二人を祝福してくれているような夜。
「あっ・・・・」
陽詩はシャワーに打たれながら、忍に強く抱きしめられた、その力強さと体の熱さを思い出す。
「・・・・・・」
自分の体を両手で抱きしめる・・・
忍が陽詩の顎に手を掛け逃げないように深く深くキスをする・・・忍の指が陽詩の頬を、陽詩の首を、陽詩の髪の毛を・・・・
陽詩はシャワーのお湯が体に沿って流れるさまが、まるで忍の指が陽詩の体を這うように感じた。
陽詩はその忍の指を追うように・・自分の乳房に触れる・・忍の指がゆっくりとお臍を辿り、陽詩の一番敏感な場所へ触れる・・・陽詩の指が、それを追い・・・触れる。
「はっあっ・・・・うっ・・」
「お姉ちゃん?大丈夫。」
いきなりバススームのすりガラスの向こうから声を掛けられる。
陽詩は我に返り、「だ・・・大丈夫!」
そう声を出すのが精一杯だった。
「わ・・わたし、何を・・・」
陽詩は顔を真っ赤に染めて自分の体を抱きしめていた。
「しのぶ・・・・・」
陽詩は顔を振り、頬を叩く。
「気のせい!あんな裏切り者!」
そう叫ぶと、ボディーソープに手を伸ばした。
いつの間にか、今泉達也との事が頭から離れていた・・・




