月菜の思い。
コロナや仕事でだいぶ間があいてしまいましたが更新します。
※「・・・・どうしよぅ・・なんであんな事、言っちゃったんだろ。」
なんだろう・・・・この感じ。
頭から首元に感じる暖かさ、柔らかいけどちょっとゴツゴツした感じ。
そして鼻をくすぐる懐かしいような大好きな香り・・・
もう朝なのか鳥の囀りが聞こえてくる。
ゆっくりと目を覚ます・・・柔らかな光が全体を包んでいる。
目に白い世界が写る・・・段々と視界がハッキリしてくる。
ワイシャツ・・・白いワイシャツ・・・視線を上げるとボタンを開けた襟元から、がっちりとした鎖骨と胸板が見える。
「・・・・・っ!」
慌てて声を上げそうになり口元を両手で抑える。
「しのぶ・・・くん・・・・」軽く寝息を立てている父親の姿が目に入る。
月菜は自分の置かれている状況に気が付き唖然とする。
何がとうなっているのか?まずは冷静なれと自分に言い聞かす。
昨日、帰って来た父親を迎えて・・・そして、父親から女性の化粧の香りがして、ワイシャツに女性の口紅の後を見つけたら急に胸が苦しくなり悲しくなって、そして・・・そして・・・感情が爆発して・・自分は父親の腕枕で寝ている・・・・
「・・・・どうしよぅ・・なんであんな事、言っちゃったんだろ。」父親の顔を見つめた・・・
父親の寝顔を見ていると、段々色々な感情が湧き上がってくる。
「わたし・・一人になるの・・やだ。」それがどういう意味で言った言葉なのか、自分で理解できた。
いつからこんな感情を抱いていたのか自分でもわからない。
ここ数年でその気持ちは強くなっていた、考えれば胸が苦しくなる、心臓が早鐘のように鳴る、体が熱くなる、この気持ちに色々理由をつけて誤魔化してきた、他のものに打ち込み忘れることも出来た・・・でももう無理だ。
自分で自分の本当に気持ちに気が付いた「一人になるの・・やだ。」口にしてハッキリわかった。
でも、父親は勘違いして受け取っている・・・今はそれでいい。
「・・・・・しのぶ・・く・・ん」そう口にする、左手をそっと忍の頬に伸ばす・・そっと触れる。
心臓がドキドキと大きな音を立てる・・・触れた左手を頬から唇へ、指で唇にそっと触れる。
何をしようとしているのか・・・自分でもわからない・・・わかるのはそうしたい衝動。
月菜は忍くんから目が離せない、自分で抑えられない・・・唇に触れている左手の指に誘われるように自分の唇で忍の唇に触れる「・・・あなたが、すきです。」ゆっくりと、唇を離しながら呟く。
そしてまた、その腕枕に自分をゆだねた。
心臓が口からでそうなくらい音を立てている。
体が熱い。
頬が熱い。
手が熱い。
足が熱い。
胸が熱い。
そして・・・・唇が熱い。
世間ではこんな気持ちを持つことなど許されない事も知っている。
決してこの思いは口にしてはいけない、他の誰かにバレてもいけない。
決して結ばれることのない思い・・・和美や礼羅が知ったら軽蔑されるだろう。
でも、私は「神居忍」自分の父親に恋をしてしまっている。
この恋の結末は「不幸」それは自分でもわかっている。
でも・・・・今は、このままの気持ちを大切にしたい。
月菜は「はぁ・・」とため息つくとゆっくりと目をつぶり、忍くんの全てに甘えることにした・・・
どれくらいたったのだろう・・・月菜は忍くんの腕が動くのに気付く。
忍くんが起きた「どうしよう・・・」寝たふりをしながら覚悟を決める。
ゆっくりと目を開ける・・・さも今目が覚めたと言うような演技。
「うっ・・・・・ん。」忍くんの腕枕に頭を擦り付けるように、ぼーっと忍くんを見つめる。
「おはよう、月菜。」優しい笑顔で父親が月菜を見つめていた。