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case 1 やくそう採取 ログブック 記入者 狂信者 リム 前編

教会のお姉さんからやくそうが少なくなっていると聞いた俺は、朝一番、仲間を集めてやくそう採取のクエストを受領し、歩いて冒険に出かけた。日帰りで帰れるレベルのため全員に軽装でいいと伝えていたが、バーサーカーローグだけこれからドラゴンでも討伐に行くのかと思えるほど重装備でやってきていた。

「おい、これから行くところは危険じゃないぞ?」

「いやぁ、何があるかわからないし、これぐらい装備しておいた方がいいと思うなぁ」

「そ、そうか」

 やくそう採取にそんな危険はないと言いたいがグッと堪える。

 周りを警戒しているマジックアーチャーが近くまで近寄り、喉を鳴らしながら質問してくる。

「グロロッ……なぁ、何のクエストを受けたんだ? そろそろ教えてくれてもいいだろ」

「え、あ、いや、そのだな」

 仲間達にはクエストの内容を伝えていない。なぜなら、このクエストはパーティーで受ける必要はなく、そもそも子供のお使いレベルのクエストだ。言ったら断られるに決まっている。仲間を集めた理由は納品数が10個と1人ではちょっとめんどくさい量だったから連れてきた。

 余談だが、俺がこのクエストを受けた理由は教会のお姉さんがきれいだったからだ。もしかしたらワンチャンあるからもしれない……それ以外に理由はない。

 とりあえず、マジックアーチャーには適当な言い訳をしておく。

「あー、あれだよ。この辺は子供たちがいっぱいいるだろ? それの監視……警護クエストだ!」

「へぇー、そうなのか」

 おっ、どうやらこの嘘は使えるみたいだ。

「やるねぇ、狂信者」

「いや、それほどでもないぜ」

 2人とも納得してくれてものすごく心が痛む。

「俺はてっきり女を口説くために変なクエストでも受けた疑っていたよ。すまんな」

「あ、僕も僕も」

「……………そんなわけないだろ」

 俺は顔をそらしながら答えた。2人は「それならその装備は隠した方がいいな」「うん。マジックアーチャーお願い」とこのクエストに対して真剣に取り組み始める。

 長年の付き合いからか俺の動きをあらかじめ察知されかけているところだった。って――。

「あれ? アサシンプリンスはどこに行った」

「えっ!? いない……」

「いないね」

 さっきまで一緒に歩いていたはずのアサシンプリンスの姿がなくなっていた。

(まさか、やくそう採取ってことがばれたか!?)

 と、俺は1人でに危惧していると左手で何かを掴んでいることに気付いた。

 どうやら紙を握りしめていたらしく、中を開けてみるとアサシンプリンスの文字が綴られていた。

『嫌な予感がするから先に行っておく』

 こいつはやくそう採取に一体何の予感を覚えたんだろう?

 俺は紙を見なかったことにして、2人には先に行っていると伝えて、再び歩き始めた。


 風が花の香りを乗せ、草原を凪かせながら絶妙な音色を完成する。

 一面には草が生い茂り、子供たちが小銭稼ぎとやくそうを採取したり、花の冠を作ったりして楽しんでいる光景が見える。

 ここはサーラ草原。町の外だが怪物が少ない地域だ。周辺にはスライムと言う魔物が見回りをして、子供たちに危険が迫ったら動いてくれるため、ここは比較的安全な区域である。

「おー、いっぱい子供がいるな」

「そういえば、薬草が生える時期だから小銭稼ぎにでもきているみたいだね」

「だな。おーい、狂信者」

 俺はせっせことやくそうを採取して籠に入れていた。

「なに?」

「いや、何じゃないだろ。俺たちの警護する相手は全員なのか? いつまでだ?」

「あっ」

「さっきははぐらかしていたけど、そろそろ目的を教えてくれないと俺たちも動きにくい。ほらみろ、バーサーカーローグだって」

 やばい、これはどうはぐらかしていいものかと目をそらすとそこには――やくそうという名のアイテムに目がくらんだバーサーカーローグがいた。

「やくそう、やくそう、いいやくそう、すごいやくそう。いいやくそう」

「うわーん! やくそうとられたぁー!!」

「なに、あの動きー! 早すぎる!!」

「やくそう、やくそう、やくそう、やくそう!!」

 たまにいいやくそう、すごいやくそうが入っている分、ローグとしての血が騒ぐのだろう。いや、血はあるのか? とにかく、バーサーカーローグがはしゃいで子供を跳ね飛ばしながらやくそうを採取している。

 マジックアーチャーが俺の方に手を置いて、呟いた。

「おい、止めるぞ」

「援護は任せた」

 こくりと頷いて、同意する。

 あのままの勢いだとこの草原全てのやくそうを刈り取りかねない。というか、誰も怪我してないからいいけど子供たちを跳ね飛ばすんじゃない。

 俺たちは全力でバーサーカーローグを止めるために動き始める。

「風の狼よ……足止めしろ!!」

「やくそ……!? ヤクソウオォォォォォ!!」

 さすがマジックアーチャー。風の魔法の使い方がうまい。狼の姿を模した風がバーサーカーローグの足元に食らいつき、足が止まった。

 バーサーカーローグは理性を失って怖いが問題ない。

 俺はその隙に走り出して、距離を詰めていた。

「ジャマ!!」

「っと!!」

 どうやら仲間である俺の姿を認識できていないらしく、本気でダガーを振られて髪をかすめた。

 さすがにイラッとした俺は大きく右足を振りかぶり顔面に叩きつける。

「がっ!?」

「いたっ!!」

 バキッ!! と骨が折れる音が聞こえる。

 顔面を覆っていた兜に当たり、右足が出血する。そういえば、隠してあるけどこいつは対ドラゴンでも後れを取らない装備をしているんだった。

 だが、俺の蹴りもいい感じに入ったはずだ。

「あれ? 僕は……何を」

「ふぅ、正気に戻ったか。折れている音はしたけど回復はいるか?」

「やめて、それが致命傷になる」

 マジックアーチャーがバーサーカーローグを起き上がらせて介抱している。おい、どちらかというと俺の方が重傷のだぞ。と思っていると後ろから声をかけられた。

「あの、あなたたちは?」

「あ! す、すみませんでした!! けがはありませんか!!」

 身なりのいい、女性が話しかけてきて、腰を折り曲げてすぐさまに謝る。

「い、いえ、それは大丈夫なのですが」

「俺たちはすぐに移動しますので、失礼しま」

「おい、狂信者」

 ここから逃げ出そうとしたその時、女性の後ろからアサシンプリンスが現れた。

(こいつ……まさか、先に女性を口説いていたのか。なるほど、なるほど――――やるか)

「この人だろ? 依頼主は」

「へっ?」

 全力の一撃を放つために引いた拳を収める。

 俺はアサシンプリンスが言っていることがわからなかった。

 だが、アサシンプリンスはたんたんと言葉を繋ぎ、状況を説明する。

「この周辺で変な怪物の目撃情報が多いとのことで、領主の娘であるこの子を護衛するんだろ? 違うのか?」

「ギルドに依頼してから半日で来るなんて……感激です!!」

 アサシンプリンス、それは違うよ。っと言葉にしたかったが断られる雰囲気でもなく、俺はどうどうと嘘をつくことにした。

「申し遅れました。リーダーのリムと言います。よろしくお願いします」

「はい! お願いします!!」

 差し出した右手を握りしめられ、その眩しいまでの笑顔に俺は心が痛んだ。

 

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