法事
田舎での法事。
いつもは家族揃って車で出かけるのだが、あいにくと故障してしまい、列車で出かけることに。
子供達は大喜びだったが、妻と私は、重い荷物を抱えて移動するのにいささかウンザリしていた。
それでも何とか田舎の最寄りの駅に着いて、迎えの車が来るのを待っているとようやくホッとした思いになった。
戦前に作られた古い駅舎を何度か改築したところなので、昭和の面影が残っていて、幼い頃に田舎で遊んでいた頃が懐かしく思い出されてきた。
そんなノスタルジーに浸っていると、子供達が私達の方に駆け寄ってきた。
「お父さん、お母さん、駅前に大勢の人が集まってバンザイって言っているけど何かな?」
私達には何も聞こえなかった。
「何も聞こえないけどなぁ。」
「そんな筈ないよ。河合君の出征を祝して。バンザイ!って言っているけど。」
河合は私の苗字だ。出征を祝して?どういうことだ。
そうこうしてるうちに迎えの車が来て、私達は田舎の家へと向かった。
家に着いた私は早速、法事の準備で忙しい中、手持ち無沙汰にしている祖母を捕まえて、駅での出来事を伝えた。
「そうか。それは、私の義理のお兄さん、おまえには大伯父さんに当たる人があの駅から出征してる様子だったんじゃな。
お兄さんは、あの駅から出征して満州で戦死なさったんだよ。
明日の法事はそのお兄さんの為のものだからねー。」