血のバレンタイン
オサムは逆チョコをキヨミに渡すことにした。
キヨミは学校のアイドルで、話したことなど殆どなかった。
しかし、彼は勇気を振り絞った。
手作りでチョコを作った。
普通にやってはつまらないし、チョコを渡すと同時に告白する予定だ。
もしも断られても悔いのないように、チョコにはセーシを混ぜておいた。
憧れの女子が自分のセーシを喰らうとところを想像するとボッキした。
バレンタイン当日、体育館裏でキヨミにチョコを渡した。
彼女は意外にも嬉しそうで、驚くべきことに彼女もオサムにチョコをくれたのだった。
どうせ義理なんだろうと思ったが、翌日、彼女からチョコを貰ったのは自分だけだと知った。
彼女のチョコは何だか鉄みたいな味がした。
告白の答えも、この日に貰った。
結果はイエスだった。
二人は付き合いだした。
交際は順調であり、あっと言う間に一年が経った。
付き合いだして初めてのバレンタインがやってきた。
オサムは後悔していた。セーシを混入したことに。
このことを何時までも黙っておくのも、後ろ暗く、一年目の伏目として告白しようと決めた。
別に体育館裏で交換する必要はなかったが、記念日の意識があって、前年をなぞった。
体育館裏へやってきたキヨミは沈鬱そうな顔をしていた。
イヤな予感がした。
フラれてしまうかもしれない、と思った。
じゃあ、その前に後腐れなく告白しよう。オサムは息を吸い込んだ。
言葉を吐こうとしたとき、キヨミが先んじた。
「あのね、オサムに言うことがあるんだ」
気勢を削がれた。
ただ「うん」と言った。
キヨミはさきほどよりも、更に沈鬱さを増した顔で言った。「ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい」
「どうして、謝るの?」
「去年のチョコ……経血混ぜたんだ……。だから、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい」
「なーんだ。そんなことかぁ」とオサムは言った。
キヨミが目を剥いた。
「ぼくら、上手くやっていけそうだね」と微笑んだ。
そしてやっぱり、ボッキした。