新種
私は洞窟の中にいた。
暗い洞窟の中、見たこともない生物が白く輝いていた。
綿のような軽い見た目、虫のような鳥のような羽、蛇のようでいてネズミのような生物が綿毛のようにふわりと漂っていた。
間違いなく新種の生物。
高鳴る鼓動と感動に震える手で私はその生き物を掴もうとした。
しかし、手が新種に触れることはない。頭に過る想いが私の手を動かせなくした。
世界では毎年15万にも上る新種生物が見つかるそうだ。
私もその中の一匹を見つけたい。そんな想いのままに洞窟へと足を踏み入れていた。
懐中電灯だけが頼りの洞窟は地獄への入り口と思えるほどに暗い。
人の気配はないのに、そこに何か神秘的なものが存在するような気がして私は胸が弾んでいた。
新種を見つけたらどうしよう、こうしようなんて妄想ばかりが膨らんでいた。
そして踏み入れた地獄で出会った新種。
伸ばした手は新種を掴むことはない。
――きっとこの生き物を知っているのは私だけ。
そう思うと強欲な私は新種を独占したくなった。
きっとこの生き物の存在を教えてしまえば研究者たちがこぞって集まって、瞬く間にその生態が曝しものになってしまう。
そんなことはしたくなかった。
神秘的な形容しがたいこの新種の存在を私だけが知っている。
私が何もしなければ新種はいつまでも神秘的な存在のままにいられる。
それも私だけがその存在を知っていられる。
伸ばした手が萎れていく花のように弱弱しく垂れた。
新種は発光して線を伸ばしながら地獄の奥へと消えていく。
――さようなら、どうかだれにも見つからないで。
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