出会い
僕の学校には変わった先輩がいる。
「才色兼備」「天真爛漫」「文武両道」そんな感じの凄そうな四字熟語が似合う先輩だけど、やることなすことが常人には理解できないことばかりなので友達はあまりいないらしい。
例えばそれは先輩が小学生の頃、先輩がグラウンドにライン引きでナスカの地上絵のようなものを描いたことがあった。もちろん途中で教師に止められたが完成していたらかなりのクオリティであっただろう。ちなみに先輩曰く「エビを描こうとした」だそうだ。
例えばそれは先輩が中学生の頃、先輩が文化祭で募金をしまくり赤い羽根を大量に入手しその羽根を自分の背中に付けて巨大な羽を作ったことがあった。もちろんそんな大きいものを付けていると他の人に迷惑がかかるので教師に赤い羽根を全て没収させられた。ちなみに先輩曰く「投資金額26003円だぜ」だそうだ。
例えばそれは先輩が高校生の今、僕が部長を務めている卓球部に先輩が道場破り、もとい部活破りに来た。僕にそんなものを受ける気はなかったが安い挑発をされてのってしまい、完敗した。先輩の要求は「部長の座を譲れ」というものだった。断ると何をされるか分かったもんじゃないので顧問の先生に説得してもらいに行くと「別に、強いんなら部長にしてやらんこともないが、あくまで男子卓球部だから無理だな」だそうだ。先輩には帰りにアイスを奢るということで勘弁してもらった。
「先輩、僕が奢るって言ったのアイスでしたよね?」
僕の目の前には高さが30cmほどあるパフェを顔にクリームを付けながら頬張る先輩がいる
「ほぉふぁいくん、ふぁふぇもあいしゅもにたよーなものじゃあないかい」
口の中をフルーツと、クリームでいっぱいにしながら先輩は弁明した。
「何言ってるか分かんないので食べてからにしてください」
口の中のものを一瞬で飲み込んだ
「後輩くん、そんなこと気にすると禿げちゃうぞ」
「絶対にそれは言ってなかったですよね!?」
「私の手って黄金長方形だと思うんだよ!」
「僕のツッコミはスルーですか..」
黄金長方形とは何なのかよく分からなかったがパフェをあまりにも美味しそうに食べる先輩を見るとアイスでもパフェでもどうでもよくなった。別に遺伝的に禿げる気がしたわけではない
先輩がパフェを食べ終えるのを見計らって質問してみた
「どうしてうちの部を乗っ取ろうとしたんですか?」
その言葉を待っていたと言わんばかりのニマニマとした顔で先輩は質問で返した
「どうしてだと思うかい?」
少し考えようと思ったが先輩の考えなんて分かるはずがないと思い「暇だったから?」と、疑問形で応えた。
「よくわかったね、正解だよ!」
僕は呆れてため息をつき、ふとファミレス内に設置にしある時計を見てみると19時を回っていた。
「先輩、もうこんな時間ですし解散しましょうか」
先輩も時計を見て「ほんとだ」と呟き一緒にファミレスを出た。もちろんパフェ代は僕が払った。
「後輩くん、今日はありがとね!」
「これくらいいいですよ、それよりももう暗いですし送って行きますよ」
僕の発言の後、しばらく間があり僕のさっきの発言まずかったかなと思った直後
「私、柔道も得意だからね!?」
「いや、襲いませんよ!!」
「あ、ごめん...不審者来ても大丈夫的なこと言いたかったんだけど後輩くんのほうが不審者だったのね..」
「いやいやいや、違いますから!」
僕が慌てて返すと先輩はくすくすと笑って「冗談だよ」と応えた。
結局、僕は先輩を家まで送らずにその日はそこで先輩と別れた。