第2話「仲間」
まさかの今日完成させるとは個人的にも思わなんだ。
あの闇の空間から抜け出してどれくらいの時間が経ったのだろうか。
階段を降りている筈が時折、上がっている様な感覚に陥る。
いつまでこの階段は下まで続いてるのだろう、と彼は無心で降り続けた。
「ふぅ・・・。次のフロアまであとどのくらいかかるのやら。相変わらず、白い階段が続いているだけだ。」
と溜息混じりに愚痴を零していたが、なにやら黄色く光る何かが底にある事に気が付いた。
「あれは!!もしかして出口じゃないのか!」
彼は歓喜し、光る物を目掛けて一目散に階段を駆け下りた。
そこにあったのは、闇の空間で見た大きな扉ではなく平均的な大きさの黄色の扉だった。
「これを開ければいいんだよな。またさっきみたいに触ったら消える・・・・とか。」
彼は、先程の失敗を活かし慎重に扉のドアノブに手を掛けた。
どうやら、この扉は消えないようだ。
ほっとした彼は、ドアノブをゆっくりとまわし扉を開けた。
「うっ」
その瞬間、まるで闇を消し去らんとする溢れんばかりの光が漏れ出した。
彼は腕で顔を覆い、その光を遮った。
そして彼は光がおさまったこと確認し、フロアの中へ入っていった。
すると・・・
「ここは・・・。」
彼は気づいたら見覚えのない街の中に立っていた。
先程までいた空間とは違い、ありふれた近代的な風景だった。
通行人もいる。色々な声や音が聞こえる。
車も電車も走っているようだ。
「ようやく現実の世界に帰ってこれたのか!?・・・・いや、記憶が戻っていない。でも、人がいるみたいだ。話しかけてみてここがどこなのか、聞いてみるか」
彼は、思い立ったら吉だと言わんばかりにOLであろう女性に声を掛けた。
「あの!すいません!お聞きしたいことが!」と、肩を叩こうとした。
しかし、女性の身体を彼の手が通り抜けた。
「・・・・っと!?触れない!?」
その女性は何事もなかったかのように彼に気づかないまま歩き去ってしまった。
「やっぱり現実じゃないのか・・・。触れないどころか、俺の声も聞こえていないし、見えてもいないのか。」
それでも諦めきれない彼は、老若男女問わず声を掛け続けていた。
結果は言わずもがな。
なんの変化もない。なんの進展もない。
「はぁ。・・・・・ダメかぁ・・・。クソッ」
途方に暮れながらも何かある筈だと懸命に街を歩き続ける。
すると、背後から誰かの声がした。
「あの。」
彼は突然声をかけられ、ふいに振り返りながら距離を取った。
「誰だ!お前!」
その声の主は、女の子だった。
学生だろうか。
彼の記憶にはないブレザーを羽織っている。
髪は赤色のロングヘアーだ。首には鐘のような形をアクセサリをつけている。
だが、荷物は持っていないようだ。
だが、今はそれより。
(俺が見えてる?どういうことだ)
「ねえ。君・・・・・もしかして、【参加者】?」
と、彼女は問いかけてきた。
彼は、
「参加者?なんのことだ?」と探りを入れてみた。
「知らないの?」
「俺には記憶がないんだ。自分の名前すらわからない。一体何が起きているかさっぱりわからないんだ。」
「そうなんだ。いま私たちがやっているのは「memory」っていうゲームなの。」
「memory?」
「そう。都市伝説。このゲームをクリアすると、過去を変える事ができる。という内容だよ」
「過去を変える?そんなの常識的に考えてあり得ない。」
「私もそう思ったの。でも実際に存在した。」
「そんな馬鹿なことが・・・」
「それでも・・・・私にはどうしても変えたい過去があったの!!そのためなら私がどうなろうとかまわない!だからこのゲームに参加したの!!!」
彼女に一体なにがあっただろうか。
彼は彼女の気迫に気圧され数歩下がった。
(過去を変えるため・・・・。であれば、俺自身も何か目的があって参加していたのか?)
「分かった。分かったから落ち着けって!・・・つまりそのmemoryっていうゲーム?は都市伝説なんだろ。有名な話なのか?」
彼女は気持ちが落ち着いたのだろうか、息を整えてから彼の疑問に返答した。
「・・・・うん。そこそこ有名だよ。よく雑誌の記事に取り上げられてた。
参加方法方が載ってた記事はあまりないみたいだけど・・・。」
「そうなのか。」
「参加方法は・・・「死ぬ」事なの。」
「・・・・は?」
「・・・・だからね。死ぬの。」
聞き間違いか?と思った彼は、もう一度確認することにした。
「あのさ・・・本当に死ぬのが条件なのか・・・?」
「そうだよ。」
(死ぬ?過去を変えるために自分自身が死ぬ?それじゃ、例えクリアしても過去が変わったかどうか確かめようがないじゃないか。)
彼女の話を続けて聞いた。
「普通に死ねばいいのか?」
「ううん。まず変えたい過去の日付を紙に書くの。それから自分の携帯でそれを写メって、あるメールアドレスに送るの。」
「memory-(日付・時間)-deg010@game.jp」
「このメールアドレスを午前0時ちょうどに送るの。」
「そうすると、差出人不明のメールがくる。失敗するとエラーが起こっておしまい」
「へえ。なんていうか案外簡単に参加出来るんだな。」
「違うの。ここからが本題。」
「他にすることがあるのか?」
「参加条件がね・・・他人を一人巻き添えにして死ぬこと。」
「な…!?」
参加条件がそこまで醜悪な内容だとは微塵も思いもしなかった。
このゲームを考えたやつは何を考えてるんだ!
人間のする事じゃない!!!と彼は怒りを覚えた。
「・・・・。」
「だから、この条件のせいで誰もやろうとはしなかったの。そんなの嘘だよ!って。」
「それでお前は誰かを道連れに死んだのか」
「ハハ・・・そうだよ。」
「なんてことを・・・。」
「でもさ、君も人の事言えないよね。この世界にいるって事はさ。君も誰かを犠牲にして死んだんだから。」
彼女のいう都市伝説が本当だとしたら、間違いなく正論なのだろう。
(他人を犠牲にしてまで叶えたい事が俺にはあったとでも言うのだろうか)
「それで確実に死んだ!っと思ったら、真っ暗な空間にいたの」
「・・・なるほどな。」
「それで暗闇の中でどうしていいかわからなくて泣いてたら突然電話がきたの」
「それがミッションか」
「うん。それで成功させて、黄色い扉を開けて気づいたらここにいたの」
「俺もだ。ただ、俺には自分自身の名前も、ここにくるまでの記憶もない。
なんのためにここにきたのかも、わからないんだ。」
「・・・そうだったんだね。それじゃあ、何もわからなくても仕方ないかぁ」
「・・・・ああ。」
彼女は少し考え込んだ後、表情明るくしてこう提案した。
「だったらゲームクリアするために協力しない?1人で悩むより、2人で悩んだほうが早くクリアできると思わない????ねえ!」
彼女は、彼のすぐ傍まで近づいた。
「わ!!わかったから!わかったから少し離れてくれ!な!」
彼女のワイシャツの間から見える谷間に目が入ってしまい、彼は即座に目を逸らして彼女から少し離れた。
「うん。わかったよ。・・・実はわからない事も多くて1人だと心細かったんだ。助かるよ!・・・・えっと・・・」
「?・・・ああー。私、まだ名前言ってなかったね。私は、小鳥遊 夏鈴。かりんって呼んでいいよ!」
小鳥遊 夏鈴。それが彼女の名前らしい。
「俺は・・・・・」
「そっか。名前覚えてないんだ。そうだな~。・・・・う~ん。」
小鳥遊は、眉間に手をあて何かを考えている。頭でも痛いのだろうか。
「・・・よっし!決めた。名前ないと不便だから私が名前つけてあげる。」
「お、おう。」
「えーとね。名前がわからないからー・・・・ない・・ない・・・・名前がない・・・・。・・・・名無しの権兵衛・・・・あ!!「ナナシ」・・・でどうかな!」
「・・・・え?」
小鳥遊はドヤ顔をしながら仁王立ちをした。
本人的には最高傑作!と言わんばかりにどうだ!という顔で俺を見ている。
なんだかなあ・・・・それにしても良い笑顔だな。
(・・・ナナシねぇ。まあセンスは微塵もないが、他に思いつかないし、それでいいか。)
彼は返事を返した。
「わかった。それでいい。」
「本当!!では、君はいまからナナシね!よろしく!!ナナシ!」
「おう」
と、その時
prrrrrrprrrrrprrrrr
2人の携帯が鳴った。
そして同時に電話に出た。
「・・・・・。パートナーの成立を承認。これより、ミッションを与える」
無機質な声はミッションの内容を淡々と説明し始めた。
ついに新たな登場人物が現れましたね。
赤髪ロング?はてどこかでみたような。
イチャラブはありますか?
次の話もこうご期待。




