エピローグ
ちょっとED長めですが、どうかこの話だけでも時々空気を懐かしみながら見返してもらえると幸いです
魔王に吸い寄せられてしまったかのようにポッカリと晴れた空の下。
ガラガラと瓦礫を払い、崩壊した地下室から抜け出す2つの影。
「おわっ……た?」
「これからどうしましょうか、博士」
青年はレンズの割れた眼鏡をかけなおすと、クシャクシャになった金髪をかいて曖昧な苦笑を浮かべた。
「ははは。流石に今は合わせる顔がないよ…… でもまっ! そのうち汚名挽回するチャンスもあるでしょ。 生きてさえ……いればね!」
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ヒヨヒヨ ヒヨヒヨ ピッピッピー
戦いは終わった……
シャルロッテの起こした天変地異は世界に深刻な爪痕を残したが、それでも人類は再び立ち上がる。
瓦礫を撤去し、借りの住宅づくりに勤しむ人々の姿。
川も畑もダメになってしまったため、食料の確保にはしばらくマグダレーネの手を借りざるを得ないだろう。
これまで散々災厄の魔女と罵ってきた彼らだが。役に立つと分かった途端、すぐに豊穣の女神だなんだと騒ぎだす。
民衆とはまぁ……得てしてそう言うものなのである。
街は復興に向かって歩きだしている。
しかし、この時点で主人公は1つの致命的な過ちを犯している。
彼は自らのパーティーにシンシアとマグダレーネを同時に引き入れた。
それは、つまり…………つまりはそういうことである。
「ちょっと、ポコ。どういう事なのかしら」
「ご主人様…… ちゃんっと! 説明してくれるんですよね?」
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!
「いや、ちょっと待て。そもそも浮気と言うのはだな……」
「ポコ」
「なんだ」
「……正座」
「…………はい……」
最後の戦いから三日後。
主人公は……こっぴどく怒られていた。
(だから言ったじゃねぇかよぉ! そういうのちゃんとしとかないとまずい事になるってぇ!)
隣で何故か一緒に正座させられているタロスがヒソヒソと耳元に囁く。
一方、シンシアはマグダレーネと視線を交差させてバチバチと火花を散らしていたが……
急に猫かぶりスマイルに戻ってエルバアルの足元に抱きついてしまった。
「ねー♪ ご主人様。私の事大好きですよね?」
「おー。よしよし。勿論だとも」
(……ぐっ?!)
デレデレとした顔で幼女の頭を撫でまわす姿にイラっとする。
が、しかしそこは待てる女マグダレーネ。その程度で動揺を顔に出す彼女ではない。
「ねぇ、ポコ?」
マグダレーネはエルバアルの頬に両手を添えると、すっと自分の方を向かせて真っ直ぐ見据えた。
「愛してるって……言って?」
「ぶっ!?」
エルバアルは驚愕した。一体こいつ公衆の面前で何を言ってるのかと。
「ばっ! バカお前! 子供の前で何を……っ?!」
「でも、私の事好きでしょ?」
そう。彼には弱点があった。
『実は惚れている』
美人で世界最強の魔法使い。自分とは到底釣り合わないと思っていたので誰にも言えなかった彼だけの秘密……!
「い、いや、あの、そ、それは……!」
頬を朱くして視線を逸らすエルバアル。
その時、シンシアの女の勘に電流が走った!
「あ”あ”あ”! ずるーい! 私も! 私もそういうのがいい!」
得意の猫かぶりスマイルが剥がれ、抱っこをせがむようにぴょんぴょんとジャンプするシンシア。
「え? え? なにが? あ、あー。よしよし、シンシアは可愛いなぁ」
「ちがぁぁう! そういうのじゃなくってぇ!」
(……チャンス!)
キュピーン!
敵は己のスタイルを見失っている。
ここで一気に畳みかけるべく。禁断の魔女が必殺の魔術を放つ。
「え~い♪」
キュッ
っと、マグダレーネは前屈みになってエルバアルの鼻(ガイコツなので鼻腔)をつまんだ。
(な、なんだこいつ。急に何を…… ハッ!?)
そう、人は鼻をつままれれば当然その手を見る。手には腕が繋がっている。
前屈みになったその先には、当然豊満な谷間が……
(み、見てる……! すっごい見てる!)
シンシアは初めて理解した。
自分から「可愛いでしょう。可愛いでしょう」とアピールするだけではお子様なのだと。
(こ、これが……大人の魔術!)
経験の差は歴然だった。
巧みに視線を誘導し、相手の方から自分へ釘付けにしようとするその発想に打ち震えた。
「ふっふ~ん! ついでに一ついいこと教えてあげましょうか? 彼…… おっぱい大好きよ?」
(げっ!!!!? マグダレーネ!!?)
周囲の視線が冷たくなる。
女性陣は両腕で胸を覆い隠して刺々しい視線を送った。
『実は巨乳好き』
そう、それこそエルバアルがマグダレーネをパーティーに入れることを嫌がった最大の理由。
仲間にバレたら絶対にいじられると思い、ひた隠しにしていた彼だけの秘密……!
ワナ……ワナ……
「そ……そんな……ウソですよね? 小さい子、大好きですよね……?」
シンシアは生まれて初めて心の底から震え上がった……
真の恐怖と、決定的な挫折に……
「………………だもん……」
シンシアは心の底から絶望した。心の奥底から闇が溢れ出し、封じられた禁断の門がギシギシと悲鳴をあげる。
それはエルバアルを奈落の底へと突き落とす、マギノ・メギア級の爆弾発言……
「私なんて毎日一緒のベッドで寝てもらってるもん!!!」
(……げっ!!!!!???!?!!!!!?!!!?!??)
周囲の視線が禍々しいものになる。
女性陣はまるで汚物かなにかをみるような目で自分達の頭領を見つめた。
「ま、まて! 違うんだマグダレーネ! これはな。シンシアが文字を覚えたいって言うから寝る前に絵本の読み聞かせをしていただけで……!」
ギ
ギ
ギ
そして其れは現れた。
神の名を汚す冒涜的な呪詛を吐き散らし、マグダレーネの真の姿が顕現する!
「ポコ……私待ってたのよ? お手紙に返事がなくてもお仕事が忙しいんだなって思ってずっと我慢してた。なのに。それなのに……
あなた、一体。
ナ
ニ
ヲ
シ
テ
イ
タ
ノ
?」
猛烈に下唇を噛み、両目からゴボゴボと血の涙をこぼすマグダレーネ。
SAN値が0になり、発狂したエルバアルが逃走する。
「うわぁぁぁぁぁぁぁっ!!?」
「待て! 逃がさないわよ、ポコ!」
「こらー! 待ちなさーい!」
エルバアルを追いかけるシンシアとマグダレーネ。
「うわぁぁぁぁ!!? なんで俺までぇっ!!?」
巻き込まれてタロスが逃走する。
「む、なにやらわからんが私も参戦した方がいいような気が……!」
「アリエス! あんたは座ってなさい!」
ついでにアリエスがたしなめられる。
「アッハッハ! なにやってんだろねぇ!」
その様子を見て壱号とイーリスがケタケタと笑う。
壱号はマグダレーネの家に保存してあった元の体に復活した。
また最弱のスケルトンからやり直しだが……彼のことだ、またすぐに腕を磨いて気の利いた仕事をこなしてくれるだろう。
「なんでなのだー! 納得いかんぞー!」
カーミラは働いていた。
市街地で禁呪を使ったことがバレて、弁償のために酒場でのバイト生活に明け暮れることとなる。
が、客からの評判は上々で本人もまんざらではないようだった。
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天変地異の爪痕は深く、魔王の庇護の外にある人類はほぼ壊滅状態であった。
社会組織は崩壊し、廃墟と化した北の帝国で地下に潜った僅かな生き残り。そして、南海で原始的な暮らしを続ける少数民族のみがほそぼそと暮らしていた。
カーディスは合成人間と魔女の恩恵を受けた魔族国家として繁栄する。
エルバアルの統治は完璧ではなかった。
身内に甘いところが災いし、規律の乱れはやがて彼らが次の冒険に出ていってしまった後の世で、世界を分断する大きな歪となる。
適合率の網から漏れた者達はやがて言葉を失い、野に下った。
反対に優れた能力を持ちながらも人間の特性を先祖返りさせた者達は、エルフ、ドワーフなどを自称してそれぞれの国家を築き上げていった。
次元の幽閉に囚われたシャルロッテは魔王への復讐を果たすべく。何十年、何百年と異世界の転生者を送り込み続ける。そしてついにエルバアルから数えて8代目の魔王の時代、北の帝国に召喚された勇者が魔王を打ち倒す事となるのだが……それはまた別の話。
タロスは結局、最後までエルバアルをその手にかけようとはしなかった。
主君の甘さが災いを呼び込むことを知ってなお、その生き様を貫き通させるため鉄壁の盾となり……あらゆる敵意を打ち払った。
が、それもこれも彼らが今、すぐ後ろにまで迫っている危機を乗り越えられたの話である!
「タロスゥゥゥ!! 助けてくれぇぇぇ!!!」
「だから言ったじゃねぇか! ……って、そうだアニキ! 今こそ決戦の前に言ってたあの時の言葉を思い出すんだ!」
ザシュッ!
「フーッ! フーッ! もう逃がしませんよ、ご主人様……」
「さぁ、ポコ…… 一体どっちを選ぶの!?」
ついに二人はまわりこまれてしまった。
前門のシンシア。後門のマグダレーネ。
戦いの後、エルバアルがとった決着の仕方とは……!
「待てっ!! 話せばわかるっ!!!」
おしまい
最高で日別PV22000いきました。ありがとうございました。
完結したあとも多くの方が見てくださってるようです。
ブックマークが増えるのを見ると嬉しくなります。ありがとうございます。




