ハルマゲドン 2
剣を振るい、弓をつがえ、王国の兵士達は懸命に戦った。
半人半獣の合成人間達も、その特異な能力を駆使して次々とイナゴの怪物どもを仕留めていく。
だが、天界四騎士には歯が立たなかった。
神話の中から飛び出してきたような異次元の力の前に、戦いと呼ぶことすらおこがましい一方的な虐殺が繰り広げられる。
『小麦一ますは一デナリ。大麦三ますも一デナリ。オリブ油とぶどう酒とを、ソコナウナ』
飢餓の騎士が秤を掲げると、チーンと音が鳴って秤が傾いた。
正面に向かって右手側にいたものは干からびたミイラのようになり、左手にいた者はブクブクと膨れ上がって弾けて死んだ。
西門付近では合成人間達が果敢に獣の騎士へと挑んだが、力自慢の牛男ですら赤子のようにひねり潰されてしまう。
ねじくれた木製の弓から放たれた矢は貫通しながら一射で三人以上もの豚男を串刺しにし、強靭な防御力を持つアラクネのネットですら紙のように貫かれてしまった。
東の門では剣の騎士の魔力によって人々が狂い、守るべきはずの騎士達は憤怒の形相で互いに殺し合ってしまった。
最も静かだったのは南の門である。
被害が少なかった訳ではない。視線に入った時点で問答無用で即死するために、あまりにも勝負にならなかったのだ。
「む、無理だ……こんなのもう、人間がどうにか出来る相手じゃない!」
アリエスは腰を抜かし、左手に片手剣を握ったままワナワナとへたり込んでしまった。
他の場所についても同様である。圧倒的な力を前に誰もが戦意を失いかけていた。
だが、諦めない者達がいた……
そう、タロス達である。
「うおおぉ! どけどけどけどけぇぇぇ!!!」
タロスはまるで破城槌のように丸太を構えて真っ直ぐに突っ込んだ。
獣の騎士がギリギリと弓に矢をつがえる。
「タロス殿!? 無茶だ! 無茶すぎる!」
「そんなもんはなぁ!」
バシュゥッ! ギキィッ!
獣の矢はテスタロッサの先端にある三日月状の刃を破壊し、丸太に突き刺さった。しかし気闘法によってガチガチに固められた丸太を貫通することが出来ず、めり込んだまま止まってしまう。
「やってみなくちゃ! わかんねぇだろうがぁっ!!!」
跳躍一閃。飛び込みと同時に思いっきり丸太が振り下ろされる。
受け止めようとした弓があまりの威力のせいで真ん中から折れてしまい、獣の騎士は脳天に特大の一撃を叩きこまれた。
ドカァッ!!
「GRUAAAAAA!!」
強烈な一撃に、たたらを踏んで後退する獣の騎士。
「き、効いてる!?」
「ウソだろ!? 勝てるのか!!?」
異次元の怪物がダメージを受けるその姿に、戦意を喪失しかけていた合成人間達が沸く。
「昔っから決まってんだろう?! 化け物退治には……」
タロスは皆の戦意を高揚させようと天に丸太を掲げて大見得をきった。
「丸太をぶちこむのが……一番だってなぁ!」




