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ハルマゲドン 1

 異変が起きたのはそれから間もなくのことだった。

 一番初めに伝わってきたのは地震。そして遠方の山々が次々と大量の煙を吐き出し、隕石のような噴石が次々と飛んでくる。



ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!!!!!!!



「ちょっ!? な!? え!? うぇえええええ!!?」


 無尽蔵に湧き出てくるかのような大量の黒煙は空を覆いつくし、比喩ではなく太陽が覆われ、空が暗くなった。


「マ、マグダレーネ!? お、お前一体なにを!?」


 こんな事が可能な人物をこの時点ではエルバアルは1人しか知らない。

 だが、疑いの目を向けられた本人は心外そうな顔をして眉間にしわを寄せた。


「私の訳ないでしょう……? ポコ。あなた、しばかれたいの?」


ビキィッ!


 空気が凍り付いて落下し、ガシャンと地面にぶつかって割れる。

 エルバアルは恐れをなし、この世で最も怒らせてはならない相手を不機嫌にさせた事を後悔した。


「い、いや、すまん。俺はただ……」


「ポコ。一旦戻りましょう。街の人達が心配だわ。仲……良いのよね?」



---------------------



 街に戻ると市街は大混乱に陥っていた。石造りの家々は大きな地震を想定した造りになっておらず、あちこちで屋根が崩れて人々が走り回っている。



「アリエス! 大丈夫かぁ!?」


「エルバアル殿!? こ、これは一体!」


「わからん! やりそうなヤツはシャルロッテくらいしか思いつかないが……とにかく住民を地下の大祭壇に避難させてくれ! あそこは魔女の大釜から作られた魔道具によって、頑丈な造りになっている!

 入りきらない者達は中央の広場に集めてくれ。教会なんかはちょっと持ちこたえられるかわからん」


「その指示だけはもう出している! それで!? その次はどうすればいい?」


 喧騒の中、アリエスを見つけたエルバアルの元へタロスが走り寄ってくる。


「アニキぃぃぃ!! 大変だぁぁ!!」


「なんだ!? どうした!?」


「空! 空が!!」


「空がどうした!?」


「あぁもう! めんどくせぇ!」


 タロスはエルバアルをひっつかむと、まるで父親が赤ん坊に高い高いとやるように空中へ放り投げた。


「うおぉぉぉぉ!? うぉ!? うぉぉおおお!!?」



 西の空になにかが迫っていた。

 空を埋め尽くす、大量の飛行物体。


「虫!? 鳥!? い、いや……でかい! でかいぞ!!」


「ば、化け物だぁぁぁ!!」


 それは人間のような顔をした、一匹一匹が人間の頭3つ分くらいはあろうかと言う巨大なイナゴの群れだった。

 女のような髪と、肉食の哺乳類のような牙を持ち、サソリのような尾の先に毒針を持っている。


 イナゴの群れは人々に襲い掛かった。だが、それを目の当たりにした王国の兵士達が剣を抜いて立ち向かう!



ゥオオオオオオオ!!!


ガキーン! ガキーン! ガキーン! ガキーン!



「エルバアル殿ぉぉぉ!!」


 ほどなくして鎧に身を包んだ王国の将軍が駆けつけてきた。合成人間の部隊長達も続々と集まってくる。


「なにがなにやらわかりませんが、我らも共に戦います!」


「……っ! ありがたい、助かる! タロス! シンシア! 壱号! 部隊を指揮しろ。手分けして市民を守るんだ。走れ!」



◇◇◇◇



 数刻後。カーディスの近くにある丘に到着したシャルロッテは、自身の召喚した天界四騎士と共に喧騒に包まれる街並みを見下ろしていた。



「くふふふふ、流石に持ちこたえますか……まぁ、当然ですよね」



 人々は傷つき、疲弊しながらもまだその命の抵抗を諦めてはいない。



「さぁ、あなた達も行きなさい。四方を取り囲み、1人残らず殲滅するのです……」


 シャルロッテもまた翼を翻し、悠々と敵地に乗り込む……はずだった。


 

 

(…………おかしい…………)



 シャルロッテは街に向かって飛び続けていた。

 距離的には目と鼻の先のはず。だがいつからこうしている?


 ついさっき飛び立ったばかりなので何もおかしいことはないはずだが、時間的な感覚がなくなっている事にシャルロッテは違和感を覚えた。



「これは、いや……そうか、そうことですか……」



 シャルロッテは胸の前で両腕を交差させると、クルクルと回ったのちに勢いよく翼を広げた。

 光り輝く三対六枚の翼から無数の光線が放たれ、何もないはずの空間を手当たり次第に攻撃する。


パリィン! ガシャァァン!!


 まるでガラスの板のように偽物の空間が砕け散る。

 空から見下ろせば、丘の上に立った1人の魔女がこちらを睨みつけていた。



「…………行かせない……!」



「くふふふふ……これは……これは……」



……ニタァ……



 かつて恋焦がれ、胸をかきむしる程に追い求めた『最強』そのもの。

 その姿を上から見下ろす事にゾクゾクとした快感を覚え、シャルロッテは凶悪な笑みを浮かべながら舌を這いねめらすのだった……

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