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メギドの丘で

(聖書より抜粋)


 さて、天では戦いが起った。ミカエルとその御使たちとが、龍と戦ったのである。龍もその使たちも応戦したが、勝てなかった。そして、もはや天には彼らのおる所がなくなった。

 この巨大な龍、すなわち、悪魔とか、サタンとか呼ばれ、全世界を惑わす年を経たへびは、地に投げ落され、その使たちも、もろともに投げ落された。


 その時わたしは、大きな声が天でこう言うのを聞いた。


「今や、われらの神の救いと力と国と、神のキリストの権威とは、現れた。われらの兄弟らを訴える者、夜昼われらの神のみまえで彼らを訴える者は、投げ落された。それゆえに、天とその中に住む者たちよ、大いに喜べ。

 しかし、地と海よ、おまえたちはわざわいである。悪魔が、自分の時が短いのを知り、激しい怒りをもって、おまえたちのところに下ってきたからである」



◆◆◆◆



(3人称視点)


 怒り。憎悪。それらは時として身を焦がす炎に例えられる。それらを身に留めておくことの難しさと、その耐え難きエネルギーの故に。



 カーミラの遺体に残された魔力の残滓。それは間違えるはずもない、かつてエルバアル自身も襲われた事のあるシャルロッテのものであった。

 復讐を誓うエルバアル達のもとに、『禁断の魔女』マグダレーネが姿を現す。彼女もまた、自身の使い魔からカーミラの危機を知らされて来たのである。


 マグダレーネの使い魔、黒猫のミーは元々カーミラの血液から造られた魔導生命体だ。マグダレーネのせいで自我が芽生え制御不能となり、渋々カーミラ本人より贈られたと言う経緯がある。

 彼女達はお遊戯のような敵対関係(と、言うより一方的にカーミラがつっかかっていただけ)にあったのだが、同時にまた奇妙な友情関係で結ばれていた。 


 マグダレーネは激怒した。可視化できるほどの恐ろしい魔力に空間が歪み、鳥もネズミもありとあらゆる生き物が逃げ出す。


 きっと普段のエルバアルであれば共闘の申し出を受ける事はなかっただろう。周囲に与える影響が大きすぎるし、何よりマグダレーネの事情を想えば彼女を戦いの場へと駆り出す事は好ましくなかった。

 だがこの時ばかりは一時的な怒りが勝ってしまった。もっとも、家に帰るように説得したところでマグダレーネが聞き分けることはなかったかもしれないが。



 そして、二日後……



 エルバアルはタロス達と合流するべく、カーディスへと帰還していた。

 壁の中にマグダレーネを入れる訳にはいかない。耐性のない一般人では姿を見ただけで発狂してしまいかねないからだ。

 街から少し離れたところにある丘に一度彼女を待たせ、エルバアルはタロス達に禁断の魔女と行動をともにする事になったいきさつを説明した。


 動揺する一行の元へ、使いに出していた鳥娘から「王都にシャルロッテ現る」との一報が入る。

 エルバアルはすぐさま行軍速度と隠密性を重視した精鋭からなる少数の部隊を編成。さらにはマグダレーネの存在を秘匿したままアリエスや王国の将軍達を強引に説得し、兵士達を呼び戻して街の守備に就かせる事に成功したのであった……





(こ、これが…………伝説の!!)



 街の外にある合流地点。

 タロスは生まれて初めて見る本物の神話生物に度肝を抜かれた。


 あんまり見てはいけない。ジロジロ見るものじゃない。重々にそれを理解してなお、タロスはまるで呪いにかかったかのように、チラチラと視線を向けずにはいられなかった。

 毛先が少しカールした長いまつげを伏せ、憂い気な表情とともに佇むその様は神話的に美しく……少し近づいただけで熟れた花のように強烈な色香がガンガンと頭を揺さぶってくる。


「すまん。待たせたな」


「平気よ。慣れてるもの」


 軽く片手をあげて挨拶を交わすエルバアル。それに小首をかしげて応えるマグダレーネ。


(やべぇ……魔力とかよくわかんねぇけど、意味がわからんくらい只者じゃねぇってのが伝わってくる…… それに、それと当たり前のように平然と話してるアニキもやっぱ只者じゃねぇ!)

 

 間違いなく自分よりも強い。いや、勝負にすらならないだろう。

 だが不思議とタロスの胸中に敗北感はなく、初めて海を見た時のような感動に彼は膝を震わせた。



「じゃあ出発しようか」


「……えっ!?」


 だが、そんな様子に気付きもせず、気の利かないエルバアルは淡々と出発の合図を告げてしまった。


「む? どうした? 忘れ物か?」


「い、いや、そうじゃねぇけどさ……」


 初対面なのに名前すら名乗らせてもらえなかった事にタロスは驚いた。

 ただでさえ話しかけづらい存在なのに、これでは取り付く島もない。


(な、なんだよもぅ、人がせっかく感動してるのによぅ…… そりゃあんたからしたら両方知り合いで今更説明の必要なんかないんだろうけど、普通簡単に紹介くらいするだろ!? こういうとこあるよなぁ、この人。ほんっとにもぅ!)


 あまりの気の利かなさにげんなりとするタロス。そんな彼の肩をイーリスが苦笑いを浮かべながらポンポンと叩く。



 だが、これに驚いたのはタロス達だけではなかった。



(え!? なに? 私ポコのお友達の人達の名前知らないんだけど……なんで紹介してもらえないの? って言うか帰り道も気になってたんだけど……一緒に居たあの女の子はなに??)



 マグダレーネは戸惑っていた。だが引きこもり生活があまりにも長かったため、自分の常識に自信が持てない彼女はそれを口に出すことが出来ない。

 助けを求めるようにチラチラと視線を送るが、エルバアルがそういった空気を察するはずもない。



「ふんすふんす! 打つべし! 打つべし!!」


 シュシュッ! シュッシュッシュッ!


 そんな彼女達を後目に、1人軽快なステップワークを刻みながらシャドーボクシングのような動きで戦意をアピールし続けるシンシア。

 短い手足とコウモリのような羽をパタパタとはためかせ、ただ一人彼女だけがヤル気満々に鼻息を吐き続けていた……

またまた更新遅れてすいません!(汗

こっから完結までは出来るだけ毎日更新、最悪でも隔日更新くらいには……


タイトルのこれは「最終決戦の地」と言う意味なんですが、今作では地理的にイスラエルとは違う場所です。

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