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最後の選択と終わりの始まり

(タロス視点)


「壱号がいなくなったぁ!?」


 事の発端は壱号が突然、やつの愛馬と共に姿を消したところから始まった……と、思う。

 俺もアニキも敵やレジスタンスにやられちまったとは考えなかった。

 壱号はアニキがいっちばん信頼してるスケルトンだ。そう簡単にやられるタマじゃねぇ。

 ましてや裏切っただの逃げ出しただのはもっとありえねぇ。


「まさか……」


「あぁ。マグダレーネのところに向かった可能性が高い」


「……やっぱシンシア達のためかな?」


「知らんよ。動機なんてどうでもいい。理由がなんであれ長期の無断外出……いや、独断による外部勢力との接触は軍規違反だ。

 まったく。マルスと言い、壱号と言い、どいつもこいつも……」


「………………」


 「どうでもいい」とか言ってるけど、どうでもよくねぇんだよなぁ。

 この人結局、シンシアが絡むと強く出れねぇんだもの。同じことまた起きるぜ?

 俺も何か言ってやりてぇんだけど、俺、頭わりぃからなぁ……


「……やれやれ、博士がなんて言うかなぁ」


 結局俺は何も声をかけてやることが出来ず、アニキはフランケン博士の動向を気にしていたよ。なんか過去に色々あったらしい。

 だから任せるしかないと思ったんだよ。事情を知らない人間が口を出してもロクな事にならねぇって思ってたからさ。


 そして壱号は帰ってきたんだ……随分と、変わり果てた姿でな……



------------------------



「うおおおおおおおお!?」


「かっけぇぇぇぇぇ!!!」



 帰ってきた壱号は別人なんてもんじゃぁなかった。

 2本足だった下半身は馬と一体化し、骨で出来た体は金属の鎧に成り代わってたんだ。

 頭はクワガタみてぇな角の生えたとんがり気味のナイトヘルムに、スリット上の目穴が明いててさ。

 金と青で縁取りされた黒くてムッキムキな上半身。角の生えた肩パッドに、真ん中で縦にスリットの入ったマント…… 

 いや、もう何の物語から出てきたんだよって感じだよ。模型でも見たことねぇぞあんなの。


「壱号!? おまえ、本当に壱号か!?」


 壱号は両手を腰に当てて自慢気に頷いた。


「ったく! なんでそんな自慢気なんだよバカ野郎! 勝手にいなくなりやがってこのバカが!」


 みんなで散々小突いてやったんだけど、内心ホントは全然違うこと考えてたんだよ。


『うわぁぁぁ。かっけぇぇ!』 ってね。


 だってもう、盾と剣と合体させたらガシャーンガシャーン! って変形して、槍になったり大鎌になったりするんだぜ?

 やっぱ男ってやつはこういうの好きなんだよな……変わんねぇんだよそういうのは。子供の頃からさ。



 そんなこんなでエルバアルのアニキもヴォイドのヤツも苦笑いだったけど、結局最後は許しちまったんだ。

 壱号は一週間の便所掃除を言いつけられたが、そんなもん形式上のフリだってのは誰が見ても明らかだった。


 そう、大事なのは壱号本人の変化じゃねぇ。

 本題はあいつが持って帰ってきた魔女の大釜の欠片……そして、お菓子の家の魔女と俺達が関係を持っちまったってことにある。


 バカみたいな額の懸賞金をかけられた危険人物。

 こないだ攻め込んできたアニキの元お仲間も相当やばかったが、森の魔女はそいつを遥かに上回るヤバさらしい。



 壱号は森の魔女から渡された親書を受け取って、しげしげとそれを眺めた。





「………………ほうっ!」


「な、なんて書いてあったんだ?」


 俺は少し緊張気味に尋ねたよ。なんたって相手が相手だからな……


「素晴らしい。こちらには何の条件も提示しないままノーリスクで力を貸してくれるらしい。魔女の大釜の欠片も好きに使っていいとのことだ。

 ……やれやれ、壱号はよっぽどうまくやってくれたようだな。まぁ、だからと言って独断専行を許す訳ではないが」



『ほら、お前も見てみるか?』


 そう言ってアニキは手紙を渡してきた。羊皮紙じゃねぇ、なんかピンク色のペラペラした奇妙な紙だった。


 そこに書かれていたのは……



『こんにちわ。マグダレーネです☆ もー、ビックリしちゃった。知らない人が訪ねてきたと思ったら、壱号ちゃん道に迷ってて燃料切れかけてたんだよ?

 ホントにもー! 一緒に来てくれればいいのになんでおつかいなんて寄越すかなー。って言うか色々話聞いてビックリしちゃった。死んだらちゃんと連絡しなさーい!

 あ、それでね。魔女の大釜については好きに使っていいよ。使い方は付属の説明書を見てね♪

 ……ねぇねぇ。それでさ、ついでに壱号ちゃんちょっと改造してみちゃったんですけど……

 カッコ良いでしょ? カッコ良いよね!? ねー! ポコこういうの好きだったよねー!

 ほんとにもう、こんなにポコのことわかってるの私だけなんだからね? なのにぜんっぜん会いに来てくんないし。お菓子作りだって色々勉強してるのにさ。

 あ、でもでも、催促するんじゃないけど。ピーちゃんとメーちゃん覚えてる? ウサギのカップルの。 ね? 私達が告白手伝ってあげた子達。

 あの子達とうとう結婚してこないだ子供生まれたんだよ? しかも7匹も! もー! ほんっとコロコロしてて可愛いの!

 抱っこしに来てくれたら嬉しいなー♪ 待ってまーす♪


                                          あなたのマグダレーネより



 












                                             浮気したらコロす 』




「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」



 俺は思わず手を振り払おうとして絶叫した。

 最初、手紙が手にひっついてとれないのかと思ったが、そうじゃねぇ。

 自分の指が硬直して親指と人差し指がくっついてるのに気が付かなかったんだ。


 誓ってこのタロス。敵に恐れをなしたことはねぇ。

 例え100万の大軍を相手に殿を務めようと、悲鳴1つあげるつもりはねぇ。

 だが……だがな、あれはダメだ。そういう次元じゃねぇ。


 その文字はおどろおどろしい装飾や特徴的な書き方がされてる訳じゃなかった。

 ただ、たんたんと普通に書かれていただけ。でも違うんだ……

 「恐ろしい」と言うことだけはわかるのに、何が恐ろしいのかを認識することができねぇ。



 土石流に飲み込まれた時。グール達の腕がちぎれたりして、折れた骨が飛び出してたりしてただろ?

 あの、とびでた白い骨を…… でっかいやすりで削るような


 ゴリッ ゴリッ って言う音と共に  俺の「正気」が削り取られたんだ



「うおぉぉぉぉぉい!! アニキこれやべぇ! ぜんっぜんノーリスクじゃねぇぞ!!」


 俺はエルバアルのアニキに詰め寄った。これ知り合いって言うかどう見ても元カノじゃねぇか。しかもちゃんと別れてねぇぞコレ。


「む? なにがだ?」


「いや、だって『浮気したらコロす』って!」


「なんだお前、浮気も知らんのか? 浮気って言うのは既婚だったり交際相手のいる者が別の人間と関係を持つことだぞ? この追記が誰に宛てたものか知らんが、俺達全員独り身なんだから浮気もクソもあるまい」


「この人完全にアニキの彼女だと思い込んでるじゃねぇか!」




『やべぇ予感がする』


 使命感にも似た何かに駆られて俺はアニキに詰め寄ったんだが、当の本人はまるで真面目に取り合わなかった。


「……俺とマグダレーネが? ハッハッハ。ないない。あれでも世界最強の魔法使いだからな。俺もまぁ自分の分野ではそこそこ名も知れてたが、それでもあいつとじゃまるで釣り合わんよ。俺と違って美人だしな」



 …………うっそだろこの人。


 なんで? 別に頭悪い人ではないんだわ。


 でもなんでこういう事だけ急に頭鈍くなるんだ? そういう呪いでもかかってんのか?



 俺はその後、何度も説明しようとしたんだが、なにせオツムが足りねぇ。


 でも、今回だけはホントにやべぇ。理由はわからねぇが、これほっておくと何かとてつもないことが起きる気がする……


 どうしたらいいんだ。誰か教えてくれ。俺は頭がわりぃんだ。


 どうしたら……! どうしたら…………!!

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