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吸血鬼の夜 序章

(17話の後。魔女の家に向かう前)


ガバッ!


「!?! ……ハァ、ハァ……ゆ、夢か……」


 見渡せば遺跡の近くの簡易休憩所。荷車の上でシンシア達が眠っている。

 そうだ。俺達は確か遺跡に物資を運んだあと、会議を挟んで一旦休憩になったんだ。


 それにしても夢なんて見るのはガイコツの姿になって以来だ。どんな内容だったかは思い出せないが……



 

 そして翌日。朝食の席で俺は再び3枚の手配書をテーブルの上に置いた。


「昨日も話したけど、この中から誰か協力を仰ぎたいと思う。ただ……」


 そう言って魔女の手配書を懐にしまう。


「……こいつはまだやめとこう。もっと色々準備してからじゃないとまずい気がする…… やっぱり全員で博士のとこに行くか、シンシアを連れてカーミラのところに行くかの2択だと思うんだよ」


「と、なるとやはり……」


「う”っ……」


 全員の視線がシンシアに集まる。


 俺は彼女に目線を合わせて頼んだ。


「なぁ、シンシア。やっぱりどうしても教えてもらえないだろうか。俺達にとって大事なことなんだ」


「え”ぅ……あの……その……」


 言い淀むシンシアになおも食い下がる。ここは大事なところだ。


「あの……そういう……本番行為はありません……です。はい……」




ワァァァァァ!


 会議場に歓声が広がった。タロスだけはなぜか苦笑いで佇んでいたが。


「そうかそうか! やっぱりそうなんじゃないかと思ってたんだよ!」


「なかなかやるじゃないですか!」


「カタカタカタカタ!」


 背中をバンバンと叩いて褒めたたえる。


「あ、あの! 大声で! 大声で言わないでください!」


 ハッハッハ。照れるな照れるな。

 シンシアの頭を上機嫌で撫でて作戦を伝える。


「よし、じゃあそうと決まれば…… マルス! スケルトンを休眠状態で待機させておくから遺跡の守備にあたれ!」


「了解しました!」


「タロス。壱号と偵察隊をつけるから村の現状を誰かに見られたら拿捕してくれ。別に殺しても構わん。物資の運び込みは一旦あとまわしでいい。それと……サラかシャルロッテが来たら絶対に戦うな。最悪降参しても構わん」


「……あぁ、わかった。そっちの方は大丈夫か?」


「護衛のスケルトンを5体ほど連れて行く。カーミラとは恐らく戦闘にはならんだろう。じゃあシンシア、よろしく頼む」


「は……はい!」




 そんなこんなで俺はシンシアを連れて旅立ったんだ。

 ただ、え~っと、なんと言うか……


 どこから話したものだろう。俺達はカーミラの眠る目的地へと着いたんだが……



---------------------------------


(シンシア視点)


 まるで昼間と見紛うような……と言えば言い過ぎですが。私達はとても強い月明りの下を歩いていました。

 薄っすらと黒い雲がかかっていると言うのに、どうにもここは月明りが強い……


 ここは旧カルンシュタイン領にある放棄された名もなき村。

 周囲に生き物の気配はなく、ただただ私達の影が不気味に伸びています。



アオォォォォォォン


 

 遠くから聞こえてくるのは狼の遠吠え。岬の方に見えるのは主を失った城の残骸。

 ポツリポツリと見える民家の大半は屋根が崩れていて、人が住まなくなってから長い年月が経っている事を表しています。


 普通なら盗賊達の恰好の住処になりそうな場所。

 そうはならないのは、私達が会いにいく目的の彼女が全て食べてしまうからだそうです……


「あっ!」


 なるべく平静を装って歩いていたのですが、私は不意に声をあげてしまいました。

 壁に寄りかかって座っている白骨死体。頭蓋骨にこびりついた頭皮から生えた、数本ばかりの髪の毛が生々しい。

 護衛をしてくれるスケルトンさん達はちっとも怖くないのに、どうしてこの朽ちた死体は恐ろしいのでしょう。 


「ん? どうしたシンシア? こわいのか?」


 御主人様はとてもお優しい方です。こんな私にも気を使って声をかけてくださいます。

 もうホントに。これで時々デリカシーがとんでいってしまうのさえなければ完璧なのに……


「あ、いえ。大丈夫です。ありがとうございます」


「…………」


 スッと無言で差し出される手。配下としてあるまじき行為ですが、握ってしまうとやっぱり安心します。 ……なんかズルイです。


 御主人様は私の事を、意外とよく笑う子だとおっしゃいました。きっと、そういう事に慣れていなかったんだと思います。

 そして、人に優しくされることにも……



 お月様が照らし過ぎる。今だけ少し遠慮して欲しい。


 夜の闇に紛れてしまえば、好きなだけ幸せな顔が出来るから……








 

 任務中にも関わらず、不謹慎にも私は少し浮かれすぎていました。


 もしも叶うならば、あの忌まわしい記憶を消し去ってしまいたい。


 この時までの私は確かに幸せだったのです。それがまさか、あんな大惨事になるなんて…………

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