人外の勢力と賢者の石の使い道
存分にシンシアの体を堪能させてもらった事で精神力を回復させた俺は、次に衛兵詰め所に向かった。
どうせまたすぐに戻ってくる事になるのだが、移動中に考えておきたい事があったからだ。
調査隊から作ったスケルトンに案内させて、指名手配書が入った棚を閲覧する。
お目当ては人外や魔法使いの凶悪犯を集めた要注意案件の情報を入手する事だ。
最初は王国から迫害を受けている少数民族や異教徒と手を結ぶ事も考えたが……人間と組むと色々とデメリットが大きい。
生活環境を整えるのが大変だし、移動も遅くなる。そしてなにより、人間の兵士をいくら増やしたところで勇者パーティーの二人には対抗出来ない。
パラパラと紙をめくっていき、最初の特殊生物案件が目に入る。
・「魔法生命体 ピノッキオ」 懸賞金:金貨5枚
とあるおもちゃ職人が偶然作り出してしまった自律人形。育ての親であり、恩人でもあるジェペット爺さんについてあることないことを言いふらし、冤罪で投獄させた詐欺師。
さらに忠告に訪れた友人を鈍器で殴り殺して逃走中。生存条件:生け捕りのみ。
……こいつは要らんな……戦闘能力がゴミだし、軍団をひっかきまわされて組織が滅茶苦茶になる。
さらにパラパラとめくっていったが、懸賞金の低いやつに有能そうなのはいなかった。別のファイルを手に取って閲覧を進める。
・「笛吹き男(本名不明)」 懸賞金:金貨80枚
催眠系の魔法を操る魔法使い。130人もの児童を誘拐。事件発生から時間が経過しており、人質の生存は絶望視されているが、救助に成功した場合は別途追加報酬が支払われる。
生存条件:なし。速やかな事件解決が望まれる。
あ、こいつ知ってる。たしか笛の音色で動物なんかを操れる魔法使いだ。こういうタイプは重宝する。出費や負担は1人分で済むのに対し、現地で手軽に軍団を組めるからだ。
ただ、こいつ……性格がむっちゃくちゃ悪いんだよなぁ…… いかん、勇者とこいつが一緒に軍団にいたら胃に穴があきそうだ。今内臓ないんだけども。
・「狼人間 ルガール」 懸賞金:金貨100枚
満月の夜に変身して村々を襲い、住民を皆殺しにして食人を行う怪人。生存条件:生け捕りだと追加報酬金貨20枚。戦闘力が非常に高いので要注意。
あ、こいつは出来れば欲しいな……! 普段は三食昼寝付きで雇っておいて、満月の夜だけ襲撃に参加させてもらうだけでも十分お釣りがくる。
向こうとしても普段匿ってくれる組織の存在はありがたいはずだ。裏切る可能性も少ないだろう。
………………
めぼしい人材のファイルを抜き出して注釈を書き記していく。
基本的にみんな住所不定無職なので確実に会えると言う保証はないが、今後の展開次第では会えることもあるかもしれない。
それよりも問題なのが…………
「戦闘員。戦闘員。こいつも戦闘員か……」
今一番欲しいのは単独での戦闘能力に長けた戦闘員じゃない。
ダンジョンの改装に協力してくれる技術者。そして何より賢者の石の使い方について詳しいヤツだ。
ノープル村を墜とした事で新しく入った魂の量が230人分ほど。スケルトン錬成とウォーリアの作成に使ったのが60人分ほど。
元々残っていた分と合わせて現在200人分ほどの魂魄が残っており、近隣の小さな集落を襲う事で更に合計200程度の増加が見込める。
現在使用できる使い道は二つ。
1つは大祭壇の肉団子を使って俺自身の強化に充てる事だが……これだけだと物凄く効率が悪い。元々俺が前線で戦えるユニットじゃないからな……
現在のメインはスケルトンの増産と強化だが、これにも限界がある。スケルトンは錬成する時に魂を消費するのだが、それだけでは済まないのだ。
スケルトンは関節部の魔力塊によって動いているが、当然動けば動くほど魔力は減っていく。
つまり定期的に俺のところに帰ってきて魔力を補充する必要がある。元々俺が回復魔法に使っていた魔力を消費して動いているのだ。
だから俺の魔力の回復量以上にスケルトンを増産強化してしまうと、いずれ補給が間に合わなくなって動けなくなってしまう。
スケルトンは命令に背く事がないので近衛としては最適なのだが、それだけでは軍は成り立たない。
多少の命令違反や裏切りの可能性はあるにせよ、自立して動ける一般兵も必要だ。そのためには賢者の石の新しい使い道を探らねばならないんだが……
「技術者。魔法鍛冶師。魔術師。錬金術師…………うーむ。いないなぁ」
ほとんどの資料に目を通してみたが、お目当ての人材は見つからなかった。
と、そこで1つだけ鍵のかかった黒い冊子が奥の方に入っていた事に気付く。表紙には「危険」とだけ書かれている。
鍵を壊してページをめくってみると……
・「お菓子の家の魔女 マグダレーネ」 懸賞金:金貨10万枚
生存条件:死亡のみ。必ず厳重に死亡確認を行って報告する事。しかるのちに調査隊を派遣するので死体を持って来てはならない。
※追記。世界政府会議によって現在、この凶悪犯の討伐は断念されている。何人たりとも触れるべからず。
うっ……!
そ、そうか、こいつがいた…………って言うか知り合いだ……
ダンジョンの改装。軍団の編成。装備の調達。
こいつが仲間になればあらゆる問題が解決する。最も、こいつが仲間になった時点でそれらの行為に意味があるのかどうかわからないが……
だが、危険……危険だ……こいつに声をかけると色々問題が……
「…………俺1人では決められんなぁ……」
俺は更にブラックファイルを読み進め、協力してくれる可能性のありそうな3人の指名手配書を懐に入れて部屋を出た。
その晩、俺達は第一陣の荷車と共に村を出た。
本当は歩けたんだが、考えがまとまらなかったので牛車に乗せてもらって思案にふける。
「……どうしよう……」
道中、勇者がひっきりなしに何か喋っていたが、まるで頭に入ってこなかった……




