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「牛頭」のタロス 前編

(3人称視点)


 タロスは大工の息子である。小さな頃から力持ちで、喧嘩では誰にも負けた事がなかった。

 末はどこぞの大将軍かと期待されて村を出たが、規律に厳しい軍の生活は彼に馴染まなかった。

 ある日嫌味な上司を半殺しにして軍を辞めると、そのまま山賊に加わった。だが、そこでも彼の思うようにはいかなかった。


 出る杭は打たれるものである。タロスはいつだって誰よりも敵をぶち殺してきた。

 しかし彼が集団を牛耳ってしまう事を恐れた者達は結束し、彼の手柄とならないよう言葉巧みな根回しを欠かさなかった。

 いつもいつも雑談のようなコミュニケーション作りに奔放してる者達の方が楽をして、実際に働いた者が損をするのは世の常である。

 我慢に我慢を重ねた挙句、とうとう堪忍袋の緒が切れる。タロスは山賊達を皆殺しにしてしまうと、再び流浪の身となった。



『クソっ。なんだってんだどいつもこいつも……面白くもねぇ!』


 タロスは荒野近くにあるノープル村と言う村に流れ着いた。

 そこそこ大きな村だが、巡回している兵士の数が少ない。


『警備が甘ぇな……こりゃぁ俺1人でもなんとかなるんじゃねぇか?』


 タロスは襲撃する算段を考えながら村の中を物色してまわっていたところ、不意に声をかけられた。


「おぉ、お前さん随分良ぇ体しとるのぉ……どこからきなすったんだね?」


 話を聞くと、近くに賊が住み着いたらしい。しかも調査に向かった者たちが誰も帰ってこないと言うのだ。

 使いのものが領主の元へ救援の要請にいっているが、それでは間に合わないだろう。

 どうか様子だけでも見てきて欲しい。もし調査隊の救出に成功すれば追加で報酬を払うと。


 前金で銀貨30枚、1人救出するごとに金貨3枚とは気前の良い話だ。

 タロスは強盗に入ろうとしていた事も忘れてほくそ笑んだ。


------------------------------------


「ここか……」


 タロスはお供もつけず、カンテラすら持たずに単身遺跡に乗り込んだ。彼が信じるのはいつだって己の身一つである。


ズン ズン ズン


 豪快な音を立ててタロスは階段を下りていく。隠れるつもりなど毛頭ない。


ズン ズン ……ズルッ!


「うぉぉ!?」


 タロスは最初のトラップを踏み抜いた。何のことはない、ただ石段をハンマーで砕いてから組みなおしただけだ。だが、現実の世界ではいつだって単純なものの方が強力なのだ。


ズドドドドドド! ブスリ!


「ケツがぁぁぁぁぁぁ!?」


 タロスは階段を転げ落ちた。そして最下段に固定設置されていた鉄槍が彼のお尻に突き刺さる。


「……いぃっっっってぇぇぇぇぇぇ……」


 タロスは鉄槍を引き抜いてお尻をさすった。常人なら串刺しにされて即死している威力である。如何にタロスと言えど、流石にこれは痛かった……


「誰だこんな事しやがるのは! 出てこい、ぶっころしてやる!」


 タロスは激怒した。

 

 ズンズンとタロスは進む。カンテラも持たずに真っ暗闇の中を。

 そしてずっこけた。粘着性の樹脂を踏んづけて、前のめりに倒れたのである。


「ぐぇっ!」


 倒れる際、タロスは何かを引っ掛けた。それは台座に切り込みを入れられた、修道女の像に引っ掛けられた鋼線であった。


ゴチィン!


 頭と頭がぶつかり、タロスは目から火花が出るかと思った。

 バラバラに砕けた石像を払って起き上がり、タロスは頭をさすった。常人なら即死している威力である。流石のタロスと言えど、これにはカンカンに怒った。


「ちくしょう! なんてことしやがるんだ。出てこい、ぶっ殺してやる!!」


 タロスは激怒した。

 そして地団駄を踏んだ。


 その様子を見て動き出す影があった。入口付近の壁の窪みで死体のフリをしていたスケルトンである。

 スケルトンは後ろからそっと近づいて、タロスの後頭部に油壺を叩きつけた。それはそこまで威力の高いものではなかったが、ちょうどタンコブが出来ていたのでタロスには効いた。


「あだぁ!?」


 油まみれになるタロス。そこへ、通路の影から様子を伺っていたスケルトンメイジが魔術の火矢を放つ。


「あぢゃぢゃぢゃぢゃぢゃぢゃぢゃぁ!!?」


 火だるまになるタロス。常人なら焼死している大惨事である。

 彼はバンバンと顔を叩いてから言った。


「あっつぅぅぅ。なんだってんだ…………まぁいいや。多少燃えてるくらいの方が明るくていいだろう」


 そう言ってタロスは消火もそこそこに、再びズンズンと奥へと歩いていった。





 曰く、怪力のタロス。不死身のタロス。無敵のタロス……


 彼は愚か者である。


 だが、それを補って余りあるほど強いのだ……

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