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零細警備業者の実態

零細警備業者の実態


 次に、小さな警備会社に行った。幸い車があるので、直ぐ仕事を貰えた。こう書くと、働きに行ったので仕事があるのは当然だと思われるかもしれない。所がそうではない、不景気の最中末端の零細企業の警備会社に仕事はない、というか信用がないので仕事が廻ってくるときは、下請けのような形になる。


 だから、満足な給与を払えない、それでも働きに来る人はいるが、それがそれぞれの事情を抱えている。

 ある老人は60歳を過ぎ年金受給資格者となっているが、年金を貰えない。それはきちんと年金を納めてこなかった為で、そうであっても食うがため働きに来るが、足となる車を持っていない。


 勢い行動範囲は自転車に限定される、只でさえ仕事がないのに、移動もままならない者に会社は仕事を与えない。


 まさに零細企業の警備会社はもう社会の落ち毀れの人が最後の拠り所として来る所で、はっきり言ってまともな人生を歩いてきた人達ではない。唯一誇れるのは社会規範(警備業法及び刑法違反)を犯していないことだけだろう(これらに抵触している場合は警備員の職に従事出来ない)。


 ある日、下郷町(福島県会津若松市の先)での交通誘導の仕事が入った。元請けの会津若松市内の警備会社に寄って、それから下郷町の現場に向かった。


 私を含む4人、道路片側の舗装工事で、所謂交互通行で互いに無線で連絡を取りながら車両を進入させる。車を運転する方ならいつも見掛ける光景だ。


 しかし、私にとってはいきなりぶっつけ本番の誘導警備で、舗装業者の方から、今からお願いします、と言われ慌てて4人で実施した。


 それも結構長い距離、これをたった4人で。もう滅茶苦茶な仕事の段取りだ、だが会社は地元の郡山では仕事はない、仕事を呉れるところなら何処へでも、経験がなくても行かせる、事故が起きるか起きないかは神のみぞ知る。


 これが零細業者の実態だ、それと警備の仕事が無いときは清掃の仕事も請け負う。ある時は、糞尿処理施設で、焼却炉の内部にこびり付いた焼却灰を削り取ることもやった。


 しかし、私は車を所有していたので、間もなく電線工事で使用する高所作業車と一緒に行動する仕事を貰った。作業車の移動に伴い、素早く交通誘導をする仕事だ。安定的な仕事とは云え、収入は最低だった。車の維持費を考えると、やるべき仕事ではない。これも二月ほどで辞めた。


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