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婚姻届と社長に報告

婚姻届と社長に報告


 新婚旅行も終え、いよいよ愛知県春日井市の高蔵寺ニュウタウンで新婚生活をすることとなった。婚姻届は昭和52年4月14日春日井市役所へ提出し、これで二人は正式に夫婦となった、私28歳、妻22歳。


 会社にも夫婦揃って社長の自宅に挨拶に行った。社長の目には私がどう映っていたか窺い知る由もないが、妻の荷物を運ぶ時は私が仕事で使っているトラックを貸してくれた。


 貧乏青年だと云う事は、社長も分かっている、入社早々前借を頼む程だから。仕事に関しては可も無く不可も無いこともない、どちらかというとおっちょこちょいだ。


 横浜に薬の荷物を運ばせれば、勝手に配送順番を変え、会社の信用丸潰れとなるし、新品のフォークリフトを福井市に運ばせればトラックの荷台から落とすし、仕事中はそのフォークリフトで踏まれ怪我はするし、何の相談もなく通信教育で必要だからとひと月も仕事を休むし、さっさと高蔵寺ニュウタウンに引っ越しするし、と内心呆れかえっていたことだろう。


 社長の奥さんは親友川瀬君のお姉さん、弟が結婚式に出席したので、私のことについては弟から色々聞いているには違いないが、いつも笑顔が絶えず、入社早々の前借にも訳も聞かず黙って貸してくれた。社長は時々厳しいことはいうが、あまりつべこべ言わない、奥さんもそう、小さな運送会社だが私にとって働きやすい職場だ。


 貴重な20代をここで過ごし、この運送会社に勤めている間に息子も3人生まれた、警備会社に移る足掛け10年間の歳月は色々な事を学ばせて頂いた。何より学んだことは自立だ、人に聞くことは容易いが、聞く前に先ず考えて見る、社長はいつも多く語らない、が、返ってそれが良かった。


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