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新婚旅行

新婚旅行


 親父が死んで涙を零した以来の感動の涙、その涙の重さをしみじみと噛みしめながら、郡山駅へ歩いても左程という距離だが、タクシーで郡山駅に着いた。


 新婚旅行先は宮城県の蔵王温泉で2泊3日の日程にしていた。駅のホームで皆から見送られながら、列車の座席に座る。周囲から新婚カップルだと好奇の目で見られ、幾分気恥ずかしく顔が紅潮してくる。


 夫婦になった喜びを互いに目で交わしながら、電車は蔵王駅に。そこからバスに乗って予約していた宿に到着。


 何故蔵王か、それは予算の都合と樹氷が見たかったから。現在はネットで瞬時に情報を拾えるが、ひと時代前は雑誌が貴重な情報源、で、そこで色々なことを知った。樹氷も何かの雑誌で知って、その美しさを見てみたい。


 それと、やはり遠くに行く金はない、実際通信教育には莫大な金が掛かる。ひと夏のスクーリングはやはり大変だ、やるのは良いが周到な準備が必要だ。私はその部分、言いかえれば計画性が乏しいというか欠如している。


 育った環境は、養父母とも、エイ、ヤと気合だけで、後は何とかなるさ、のその日任せ。くよくよしないのは良いが、その分リスクが伴う。血は繋がっていないが、そんな影響をもろに受けている。だから、高校生のときも、何とかなるさで、夏、冬と自転車旅行した。


 妻と一緒になりたいは良いが、何の蓄えもないのに何とかなるさでは、結婚後の妻の苦労は目に見えている(本当に済みません)。


 義父母の英断、実際義父母は私の何が気にいったというか、認めてくれたというか、手紙だけで何の面識もなく、病気のお袋を抱えた何処の馬の骨とも分からぬ男に大切な娘を委ねたのか、この歳になっても分からないが、私にとっては正しくそれは義父母の英断だった。


 何はともあれ、樹氷の美しい蔵王に妻と新婚旅行に来た。翌日早速ケーブルカーに乗って山頂に向かった。4月とは云え、蔵王はまだ冬だ、きらきら光る樹氷の美しさに感動した。


 いつも控えめな妻、注釈、現在はそうでもないような気もします、ま、これは女性に共通していることで、あまり気にしても仕方ありません、も寒さで幾文蒼ざめているが感動の声をあげていた。


 でも後年、妻は何故蔵王だったの、私、もっと遠くに行きたかった、蔵王は地元よ、と。それは私も分かっています、だけどこの貧乏青年、4年前の24歳ぐらいまでは極貧生活で、それをやっと脱出したばかり、結婚するのが精一杯、とても遠くに行く余裕はありません。


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