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出会い

出会い


 男と女が夫婦になれば、通常であればどちらかが死ぬまで婚姻関係は続く。私は28歳で結婚した、妻は6歳下の22歳で。昨今結婚年齢が高くなっている、しかし私の時代はそれが普通だったような気がするが、6歳下は少し歳が離れているので、その時代に照らしても妻は歳が離れた男と一緒になった印象を皆から思われていたようだ。


 出会いは大学の通信教育の夏季スクーリングだった。1年目の夏、東京文京区茗荷谷の愛知学生会館で寝泊まりして、神田駿河台の中央大学に通った。愛知学生会館は東京で勉強する愛知県出身の学生を支援しており、夏はその学生達が帰郷するので、その間その部屋を今度は働きながら学ぶ通信教育の学生の宿舎にあてていた。


 安く泊れるのと、夕食も頼めば作ってくれるので、大概の学生が利用した。私も、4年生の先輩(といっても同年齢だったが)の方と同部屋でその夏を過ごした。私は26歳で入学したが、この年齢は遅かった。同期は女性1名含む5人いたが、皆18、19歳なので、一番年下の18歳の女性が付けた渾名が“おじさん”


 その彼女は、大学近くの女子専用の寮で山形県と福島県から来た女性と一緒の部屋だった。その福島県から来た女性が妻だ。しかしいきなり妻となる訳ではないので、順を追って説明する。


 話は少し長くなるが、26歳でやっと念願の通信大学に入学出来た喜びは大きかった。挫折を繰り返しながら、やっと学べる余裕が出来た、しかし、何も苦学する必要はなかった。運転手としてその日その日を無事に過ごしていけば、それはまたそれなりの人生だったかもしれない。働きながら学ぶ、恰好良いが実際には大変だ、拙著、“警備人生まっしぐら”に詳細を書いたが、多くの若者が夢を抱きながら、多くの若者がその夢を実現出来なかった。


 その夢の実現の第一歩が東京でのスクーリング、19歳で家出してあれから7年が過ぎ、今私はこの学生会館で寝泊まりして大学に通っている、心の底から喜びが溢れてくる、何もかもが楽しい、学生ってどうしてこんなに楽しいのだろう。


 しかしそこはおじさん、学生寮の近くに酒屋さんがある、立ち飲みが出来るので大学の授業が終わるとそこでビールを飲む、そうこうしている内に皆が帰ってくる、呼びとめ一緒に飲まないかと誘う。同期入学の仲間や、先輩達も誘う、それが縁で忽ち仲間が出来た。後、私の結婚式で出席してくれた名倉さんはそれが縁だった、所謂おじさんの図々しさが生きた。


 同期入学で年長者の私は自然とリーダーとなった。おじさんと呼ぶ彼女(幸子、通称幸ちゃん)も仲間に加わり、昼は学生食堂で5人揃って食事をした。その、幸ちゃん、面白いおじさん、7歳も上だとおじさんなのか、幾分ショックだった、が居ると同部屋の女性に話した。


 その頃の私は冗談好きで、周りを笑わせていた。ある時、教室で講師を待っていると、その担当講師の先生がその教室を通り過ぎようとしたので、“先生、此処です”と、大きな声で呼びとめたら皆が笑いだした。兎角面白いことを言っては笑わせていた、未成年の幸ちゃんには驚きだったようだ。


 だから、皆に会わせたいというので、私は大学近くの喫茶店で3人の女性と会った。山形県から来た女性と妻が向かいの席に、幸ちゃんが隣の席、何を話したかもう記憶にないが、一人ではしゃぎ廻っていたと思う。


 何しろ運転手では、若い女性と話す機会がない、仕事場で見掛けても伝票に印鑑を貰うだけだから、とても話をすることはない。また、若者が集まるサークル(その頃は歌声喫茶が流行っていた)に1、2度行ったことはあるが、彼女が出来る程でもなく、ま、それも運転手となって少し余裕が出来たからこそで、そんな中、一度に若い女性3人と同席したので恐らく舞い上がっていたことだろう。


 その時の妻は髪が長く、腰まで黒髪が伸びていた、少し顔が浅黒く、セスナ機に乗せて貰っていたので、私の冗談に少し頷くだけで控えめな印象を受けた(ま、女性は変るので心配なく、今はもう圧倒されっぱなしです)。私に興味を持って呉れる雰囲気ではなく、如何にも勉強好きな真面目な学生に映った。


 しかし、彼女がいない私は思いきって声を掛けた、そしたら思いがけずに良い返事を得た、驚きだった(今では声を掛けられなかった方が良かった、と容赦ない言葉を頂いているが)。


 それと地味な印象だったので、24、5歳だと思っていたら、何と6歳も違う21歳(夏季スクーリング中、7月誕生日の私は27歳に)と知って、これまた驚き、良いのかと半信半疑ながら忽ち夢中になった。


 もうこうなると勉強はそっちのけ、後期スクーリングは毎日彼女と会うのが日課となってしまった。


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