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勝叔父さんの長男の結婚式

勝叔父さんの長男の結婚式


 親父が死んで、郷里の大町で初めて会った従兄弟の勝おじさんの長男は当時高校3年だった。私より5歳下、長男らしくのんびりした性格で高卒後は暫く地元企業で働いていたが、結婚式に呼ばれた時は消防署員となっていた、これも伝手だった。


勝おじさんの家は大きくなっていた、おじさんは百姓の傍ら地元企業で働いていたが、何しろ叔母さんの実家は材木店だ。田舎だから土地はある、その実家の援助もあり大きな家を建てた。


 勝おじさんの長男伸男さんは、これまた裕福な娘と一緒になった、左程器量は良くないが、金は持っている、これが何より、何、若い頃少しばかりきれいでも歳をとれば皆同じ、それより金持ちかどうかが大切。勝おじさんは、お祖父さんのお陰で今の幸せを手に入れた(しかも叔母さんは美人)。


 その勝おじさんから此処で暮らさないかと薦められたことがある、土地は安く分けてやる、あとは家だけ。栗林家を守ってきた勝おじさんは親父の事は良く思っていなかった。


それはそれとして兄貴の忘れ形見の甥に何かしてやりたい、その気持ちがその言葉に込められていた。それは国雄おじさんも、正一おじさんも共通した認識で、これも後から分かったことだが、一人娘だった藤江おばさんは東京で所帯を持ったが、若くして後家となったので、残された甥と姪に少なからぬ援助(男の子は大学と結婚まで面倒を見て貰っていた)をしていた半面、この名古屋の甥には何もしてやっていない、と。


 これが、田舎ならではの身内思いというものか。親父は、家を飛び出た、その最後は惨めな結果となったが、唯一俺を残した、その俺は実の息子ではない、実の息子でない俺がおじさん達の好意に甘える訳にはいかない。所詮大町で暮らすことはない、それが結論だった。


 高校3年夏の自転車旅行で大町を通ったとき、ここは親父の故郷、叔父さんも居る、俺が自転車で来ていることを知ったらどんなに驚くことだろうと思いながら、何故親父はその叔父さん達に連絡してくれないのだと恨んだこともあった。しかし、長男は家を継ぐのが当たり前、それを裏切った親父、どの面下げて故郷に連絡出来よう、例え息子が自分の故郷を通過しようとも。


 なまじプライドが高い分、素直になれなかった親父、国破れても山河ありの例えもある、何もかも捨て故郷に戻ったらまた別の生き方もあったろうに。


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