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冬の敦賀 後段

 無事荷を引き渡し戻ろうとしたが、あまりの大雪に私はそのまま北上し富山へ行き、国道8号線を廻って戻ることにした。今なら、スマフォで道路状況が分かるが、当時はそんなものはない。


 ラジオが唯一の情報源だが、そのラジオ局からして気象情報を正確に把握していない。自分で状況判断するしかない。幸い、高山から富山は雪も小降りとなり、難無く市内に到着した。そして国道8号線を南下して敦賀に向かった。北陸の8号線、勿論雪道だが車は順調に進んでいる、矢張りこの道が正解だった、41号線を引き返したら、あのトラックの二の舞だった。


 金沢、加賀、福井、懐かしいなあ、高校3年の夏必死に自転車を漕いでいたなあ、今トラックでこの道を辿っている、不思議だ。だが、その感慨を打ち砕くかのように福井から先はぴたっと車が停まってしまった。


 雪も多くなっている、北陸廻りをしたので名古屋を出発してから今日で2日目だ。低速運転が続いているので軽油の消費量も多い。時刻も夜の10時を過ぎた、仕方がない、ここで仮眠するしかないか、でも燃料を節約しなければ、でエンジンを切って毛布に包まって寝ることにした。


 しかし、これは大失敗だった、朝目覚めてエンジンを始動させたが動かない、完全にバッテリーが上がってしまった、寒さで放電したのだ。車は動き始めている、で、大型トラックに牽引して貰いながらエンジンを掛けることにした。


 幸い親切な運転手さんに出会ったので、約1キロ牽引して頂きエンジンを掛けた。近くに食堂が開店していたので、その親切な運転手さんに朝食を御馳走した。さあ、腹ごしらえしたので、敦賀へ向かうが、これが最大の難所だった。


 実は、この渋滞の最大の原因は、この敦賀峠が完全に雪で封鎖状態だったからで、今はトンネルとなっているが、その当時は峠道、それも急坂と急カーブの連続。何時ぞやは過積載でブレーキが利かず死ぬ思いをした峠だ、その難所をトラックはのろのろと進んで行くしかない。


 数台前の大型トラックが立ち往生している。タイヤチェーンを装着しているが、それでもタイヤが滑っている。もう完全に道路は凍りついている、大勢のドライバーが片手にスコップを持ちながら救出に向かう。


 困った時は相身互いだ、私も行く、そして大勢でトラックを押す、10トン車を人力で。動いた、後続車が続く、こうして何とか敦賀市内に入ったが、もう軽油がない、何とか補充しなければ。ガソリンスタンドも雪で埋まっている、事情を話すと雪かきを手伝って欲しいと、そうしないと給油出来ない、尤もだ。懸命に雪かきをして給油して貰う。


 さあ出発、もう3日目だ、しかし国道8号線は米原方面も渋滞との情報、というより完全にストップ状態。で琵琶湖の西岸を通るしかない、こうして京都市内に入った。トラックにはシートが掛けてあるが、そこに雪が山のように積もっている。市内には雪がない、そこに満載の雪を積んだトラック、皆好奇の目で見ている。こうしてやっと会社に辿りついた。


 皆から完全に馬鹿にされた、私から1日後に高山に行ったトラックはそのまま引き返し無事戻っている、それなのに、私は富山に向かった。もうこうなると、トラック運転手の素質がないと云わざるを得ない。社長は、それでも何も言わなかったが内心呆れていたことだろう。


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