叱る、怒る
叱る、怒る
高校入学説明会の当日、教科書を購入するが、都合が付かず止む無く後日購入することにした。本屋は、知立にあったので、帰りの序に、藤田屋の大あんまき、を買った。自転車の荷台に括りつけていたが、ふと気付くと紐が解けて、教科書とあんまきがない。 慌てて戻って探したが見つからない。
仕方なく、家に戻ってお袋に謝ったら、怒りもせずお金を渡してくれた。そう云えば、お袋から叱られたことはあるが、怒られたことはないなあ。
焼きピーマン
柔道の練習を終え、主将の堀尾さんと夕方一緒に帰宅した。お袋に飯の支度を頼んだ。ガスコンロに網を置き、その上でピーマンを焼き、そのまま冷飯に載せ、醤油を掛けて堀尾さんに差し出した。堀尾さんはそれを美味しそうに食べてくれたが、見ていた私は何故か恥ずかしかった。
しかし、それを恥ずかしいと思う自分こそ恥ずかしい。お腹が空いていれば、何を食べても美味しい。形に拘らず、取り敢えずご飯だけでも、と、お袋、本当に有難う。
ヘルニア
腰痛ではない、脱腸だ。もの心付いたとき、銭湯で私の股関を見つめる幾つもの視線を感じた。普段は何時も脱腸帯をしているが、銭湯では外す。 脱腸帯をしていれば、その内治るだろうと思っていたようだが、成長するにつれ、それも大きくなる。このまま放置すると、大人になってから大変なことになると、医者から言われ、中学1年の時手術することとなった。
初めての手術、看護婦さんの手を握りしめ、気付いたら病室に。手術は成功したが、傷口が完全に塞がらない内に、どうしても歩きたくなったので歩いたら、案の定傷口が開き、その跡が未だに残ってしまった。
貧乏の中、入院代も大変だっただろう、親父、お袋、有難う。
卵丼ぶり、貧すれば
親父の給料日の帰り、家族揃って定食屋に入った。私は、大好きな卵丼ぶりを頼んだ。半分程食べたが、何故か口の中の感触が違う。ご飯が硬いのだ。我慢して食べていたが、堪らず親父に言ったら、親父も一口食べて、ゴッチン飯だと言った。そして、私の顔を見て、何故早く言わないのだと、怒るとともに悲しそうな顔をした。
貧すれば鈍するではないが、この野郎はすっかり貧乏に慣れてしまったなあ、家なら、直ぐ変だと言うのに、金を出しているにも関わらず、黙って食べている、先が案じられる、とでも言いたげな顔だった。