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仮住まい 前段

仮住まい


 ふた月過ぎ運送の仕事にも慣れ収入も安定したので、6畳一間、台所なしガスコンロひとつ襤褸畳の部屋から、今度は台所付きの8畳の部屋に引っ越した。


 相変わらず共同便所だが、2階は6部屋が共同廊下を挟んで3部屋に分かれていた。勿論それぞれが外部階段から入室出来るが、ぱっと見には6部屋がひとつの家のような造りだった。


 東角の部屋は若者が大勢暮らしていた、恐らく家主の許可を得ず勝手に共同生活を営んでいたようだが、いつも騒がしく、これも後で気づいたことだが、共同廊下に面した窓際に置いたテープレコーダーが盗まれるなど、何かと顰蹙を買う行動が毎日のように見られた。


 ある日、あまりにも煩いので、私はその部屋の前で、煩い、静かにしろ、出て来いと、大声で注意した。数人の若者が出て来たので、私に喧嘩を仕掛けてきたかと身構えたが、幸い素直に済みませんと謝ったので事なきを得た。これも今思えば、幸運だった。


 ある日、若い女性が隣の部屋に来た、この女性は家族とこのアパートの一角で暮らしていたが、一人暮らしをしたいと親元と離れ此処に移ったとのこと。家賃が安いのがこのアパートの魅力、実に様々な人が暮らしていた。


 私は働きに出ているので、具体的には知る由もないが、話好きのお袋は話し相手を見つけては、病気のことも忘れ話に興じていた。その間にも、糖尿病は悪化の一途を辿っていたが、お袋も私もまだその本当の怖さを知らず食事療法など何処吹く風とばかり呑気に暮らしていた。ま、毎日が生活に追われていたので、それを考慮する時間がなかったというのが実情だが。


 私もお袋と懇意になったおばさんと話したあと、お袋が、あのひと昔娼婦だったみたいよ、と突然言い出した。何故そんなこと言ったのか分からないが、このアパートには色々な人が住んでいるから気をつけなさい、そんな風に捉えていたある日の深夜、若い女性が住む隣の部屋から薄壁を通して、一際高い悲鳴のような声が聞こえた。


 咄嗟に部屋を飛び出し、外側廊下から大丈夫ですかと声を掛けたが、その呼びかけに応じることなくシーンと静まり返った。それではどうすることも出来ず、部屋に戻って寝たが、翌日刑事が来た。私には特に問いかけもなかったが、それから直ぐ隣の女性は引っ越した。若い私にその事情は分かる筈もないが、お袋が気をつけなさいと言った意味が分かったような気がした。


 この部屋には、高蔵寺ニュータウンに移る迄の間、凡そ10ヶ月程住んだ。4番目の叔母さんも同じアパートに住んでおり、幼い従姉妹二人と時には近くの定食屋に入って少しは面倒を見る余裕も出来た。正月も過ぎ、春頃になったとき、九州から二番目の叔母さんの娘夫婦が遊びに来た。その頃には、二部屋借りていたので、その一部屋を空けた。


 高校3年の冬休みの1週間自転車で九州旅行をした時、叔母さんにお世話になった。その時、私と同年の娘は福井県勝山市で集団就職していたので会うことがなかった。飯塚時代一緒に遊んだ記憶はあるものの、もう彼女も24歳、成人した顔は見ていないので、今度彼氏を連れてが、久しぶりの対面だった。


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