表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/117

海水浴

海水浴


 北原町に引っ越したその夏、小学校3年の私はアルバイトをした。アップリケの仕事だ、近所の子供達が集まり、仕事というより遊び半分、日当10円。それでも夏休み中頑張って、300円稼いだ。ご褒美に、子供達全員海水浴に連れていって貰うこととなった。親父に話したら、一言、行くな。


 親として、夏何処にも遊びに連れて行けなかった忸怩たる思いが、その一言に込められていた。





 長屋造りの炭鉱の社宅にも、小さな庭がある。野菜を作ったり、鶏を飼ったり。そして、鶏に餌をやるのは、4、5歳の私の仕事、毎日菜っ葉を刻んでせっせと与える。いつものように、小屋を覗くが鶏の姿が見えない。


 親父は、仲間たちと宴会だ。お袋に聞くと、鍋を指さす。それから、鳥料理は嫌いになった。



三輪車


 3歳頃、親父が三輪車を買った。遊んでいると、隣家の娘の静子が乗りたいと、構わずにいたら、親父が怒って、三輪車毎私を放り投げた。 


 どうしてと長い間不思議に思っていたが、私が、親父の息子になる前は、静子を娘同様可愛がっていたから、と、お袋が話した、納得した




長い坂


 社宅から歩いて15分位の所に、祖父母が住んでいた。庭に大きな柿の木が。遊びに来た孫に、柿と鶏を持たせる。鶏には紐、その紐を引っ張って、長い坂を登る私。その後ろ姿を、祖母はどんな思いで見ていたのかなあ。

 



そっと


 ある日、病院に行った。病床に見知らぬ叔父さんが、青い顔して座っている。親父の横からそっと顔を出している私を、その叔父さんがじっと見つめる。 それから、間もなくして名古屋に引っ越した。


 親父が、私を見知らぬ叔父さんに会わせた理由を、高校入学時に必要な戸籍謄本を見て理解した。




落盤


 炭鉱に落盤は付き物、親父も3回落盤に遭った。3回目は、お袋も覚悟した、でも奇跡的に助かった。全身炭塵に塗れ、真黒い顔をして戻ってきた親父を見て、思わず笑ってしまったが、気付いたら涙がこぼれていた、と。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ