真冬の九州自転車旅 中段
こうしてあと1週間で今年も終わろうとする昭和41年12月25日勝川のアパートを出発、1日目は滋賀県大津市のユースホステル、約130キロ、国道19号から名古屋市内に入り大垣方面に向かう、長浜から彦根、琵琶湖を時々見ながら、向かい風だが天気は晴れ、幾分暖かい気もする。しかし夏と異なりサイクリングしている人達と全く会わない、そうかこんな事をしているのは私だけか。
大津ユースホステルは2段ベッド2個の相部屋だが、夏と違い夕食もある、風呂もある、これからまだまだ長いが先ずは無事に初日終了。明日は京都市内を少し散策しながら、宇治の平等院を見て大阪市内のユースホステルに宿泊する予定。
二日目も天候は晴れ、京都市内に入ったが何処を見たのか、50年も過ぎればもうすっかり忘れている、小学校の修学旅行で京都見物したことがあるので何処か見た筈だが思いだせない、しかし宇治の平等院は覚えていた。
赤銅色の平等院、10円玉と同じ、ここで源平の戦があったことは歴史好きの私も知っている。高槻、牧方を通る、そういえば鳥羽伏見の戦いに敗れた徳川軍はこの道をひたすら大阪城目指して走ったのだろう、私は自転車だが。
三日目は姫路の先の赤穂の民宿で宿泊、今日見物するところは勿論姫路城、天下の名城、流石に中は広い、広いことと少しくすんでいる白壁は覚えているが、もうそのあとは記憶にない。
四日目はこの旅で一番楽しみにしていた鷲羽山ユースホステル、何故なら瀬戸内海の夕陽が見える。しかし予定の到着時間通りに到着出来なくなり、夕食を取って置いて貰うため、途中公衆電話で連絡、焦ったので無灯火で走っていたら大型トラックに引かれそうになった。窓を開けた運転手から、バカヤロー、と怒鳴られたことだけ鮮明に覚えている。
無事到着、夕食を食べ、部屋から眺める瀬戸内海は絶景だ、とはいかない、真っ暗だけ、でも早朝目覚めてその穏やかで優雅な島々を眺めれば、一度は此処に住んでも良いかなと思わせる長閑な風景。それも一瞬、まだ道半ば、その感傷に浸って居る訳にはいかない。




