真冬の九州自転車旅 前段
真冬の九州自転車旅
東京に家出した話はまた後で書くとして、高校3年の夏休み、中部を縦断し能登半島を一周した話は書いたが、同じく高校3年の冬休み、勝川のアパートから自転車で7泊8日の旅をした。
暑さと戦う厳しい自転車旅行も、過ぎて見れば面白い体験をしたと感じていた私は、また不意に故郷の九州に行きたくなった。一度は訪ねなければならない故郷、で、どうして自転車、電車を利用した方が早いのに。
しかし、その思考は全くない、夏も無計画かつ思い立ったが何とかで、後先のことはあまり考えない、この性格は死ぬまで変わらず、時に損したり、得したりの70年の人生、否損したときの方が多かったが、この真冬の自転車旅行は正しくその典型だった。
しかし、今度は野宿という訳にはいかない、調べて見ればここから1000キロ弱ある、所要日数は7泊8日と決め、先ず宿泊先を手配した。
勿論アパート暮らしの我が家、電話等有る筈がない。往復はがきで各宿泊先に申し込む、ユースホステルや民宿、これが一番安い。
こうして6泊の宿泊先は決まった。しかし、あろうことか7泊目を決めていなかった。それは、予算の関係で、最後の日は駅の構内で寝れば何とかなると思っていたからだが、これがとんでもないことになった。
だが、この九州行の自転車旅行は流石に親父とお袋は反対した。12月25日出発、1月1日到着、季節は真冬、誰が考えても無謀だ、馬鹿だ、九州に行きたいなら行っても良いが、電車にしたらと何度も説得されたが、一度男が決めたこと、後には引けぬ、俺には九州男児の血が流れている、とその時親父とお袋に言ったか言わぬか定かでないが、決行あるのみ。
服装と云えば、耳あての着いた帽子と、少し分厚い作業ズボン股引とジャンバー、厚手の手袋、マフラー、今ならヒートテックで寒さ対策するが、この時代、そんな気のきいたものはない、平たく言えば着の身着のまま、寝袋は何故か準備。




