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社会人1年生

社会人1年生


 色々あった高校3年間も日本史の犬養先生の紹介で中区の会社に就職することが出来、親父とお袋もほっと一息ついていた。


 研磨紙を取り扱う会社は責任者の支社長と男性社員6人女性社員が2人の小規模な事務所で、その中に倉庫係として私より1年先輩の方がいた。


 私の採用理由は、その方が家業のはんこ屋を継ぐのでその後釜としてで、そのことを知ったのは見習いで1月間働いたあとだったので、その事実を知らされた時は不安感で一杯になった。このことも原因かもしれないが、会社を辞めるきっかけになった。


 しかし、掃除のアルバイトと異なり、毎月給料を手にする喜びは大きく、背広を着て通勤する姿をいつも親父とお袋は嬉しそうに見ていた。歓迎会で生まれて初めてビールを飲んだときは適量も分からず、アパートに送って貰う途中ご迷惑を掛けたことはよく覚えている。


 ひとつ上の方は優しい人で倉庫の管理について詳細に説明して呉れたが、何せなにもかも初めてのことばかり、何がなんだか分からない、というのが正直な気持ちだった。


 夏、社員旅行で霧ヶ峰高原に一泊した。中央線の列車旅では昼食は各自持参で私は、キャベツを炒めてそれを食パンに挟んでサンドイッチとしていたら、先輩社員が食べたいというので渡したら。これがサンドとでも言いたげな顔をしていた。


 時々先輩社員の車両に乗って営業廻りを経験したが、挨拶が苦手な私にとって営業は合わないような気もしていた。しかし、その仕事は商品知識を仕入れてのことで、兎にも角にも先ず倉庫管理を覚えることだった。


 しかし、倉庫管理には月一度の棚卸がある、1年先輩の方や支社長は帳簿と合わなくても気にすることは無いと言ってくれていた。それは営業員が商品を持ち出す際には、倉庫の帳簿に記載することとなっているが、結構皆杜撰な取り扱いなので、在庫と帳簿が合うことは無いのだが、私にはそれが自分の責任のように感じ、一人で在庫管理を任されるようになって重荷に感じていた。


 会社の費用で奇しくも19歳の誕生日が普通免許の取得日となったが、無断で会社を辞めたことから、その請求が親父とお袋に来た。


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