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横井酒店

ちび


 子犬だったから“ちび”、その“ちび”も名古屋に来てから、少し言うことを聞かなくなった。よく吠えるようになったのと、北原町では飼えないので、仕方なく保健所に連れていった。

 友達を一人無くした。




親子水入らず


 中学校卒業後は、春日井市勝川のアパートに引っ越した。間借り生活からやっと親子水入らずの生活が始まった。6畳一間と押し入れ、台所付きの3畳、トイレは共同、勿論風呂はない、それでも自由に台所が使える喜びはひとしおだ。 


 北原町の間借り生活時代は、ガスコンロ1台だけ、しかも食べたあとの容器は一旦バケツに浸置きし、階下の様子を窺ってから、流しを借りて洗う。今思うと、よくそんな生活を6年もしていたものだと思う。お袋の苦労は並大抵ではなかっただろう。




交番


 歩いて行くには少し遠い銭湯、お袋を自転車に乗せて通った。有る日、何時もの風呂上がり、自転車にお袋を乗せ走っていたら、若い警察官に呼び止められ注意された。意味が良く分からなかったので、また乗せたら、今度は交番に連れて行かれ、住所と学校名を聞かれた。


 名古屋の高校に通っていると言ったら、高校生の癖に、自転車の乗り方も分からないのか、と怒られた。 




横井酒店


 小学校3年のアップリケのバイトが人生初のバイトとなったが、中学2年からは団地サービスの清掃の仕事をしているお袋を手伝った、日当500円。バイトした日は、お袋と雁道の坂道の途中にあるいつものお好み焼きに寄る、その時は、肉と卵のミックスを注文する。


 中学3年の大晦日、近くの横井酒店の店主から配送のアルバイトを頼まれた。横井酒店は、親父の馴染の店。製綿工場で疲れた身体を癒すため、帰宅前に一杯ひっかける親父を迎えに行っていたので、私も店主と顔馴染。 


 そこでバイトすると言うと、親父は良い顔をしなかった。大晦日、働いている息子の姿を世間に曝したくなかったのだろうか。


 しかし、2000円の日当は嬉しかった、お袋は大喜び、正月の足しになったのかな。


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