11年間働いて何が分かったの 2
初任研終を終え賀田ちゃんと一緒の職場になった。所謂欠員補充で、私の前に43歳と60歳が配置されたが、どちらも継続せず、賀田ちゃんは元警備員の私に白羽の矢をたてたわけだ。挨拶したが、皆の目は冷たかった。年齢だけは聞いていたのだろう、60歳の爺さんで懲りているのにその上の65歳、会社は何を考えているのだ、と。
パソコンを使うので、60歳に教えたら全くの初心者、マウスのクリックすら分からない、匙を投げたのにまた5歳も上の爺、こんなの研修の無駄だ。
隊長と賀田ちゃんは犬猿の仲だった、人を人とも思わない傍若無人の振る舞い、そこに賀田ちゃんの仲間が来る、どうやって追い出してやろうか、と。
しかし、パソコンの知識は誰よりもある、元警備課長、職責上その知識がなければ仕事は出来ない。勤務表は隊長が作成しているが、所々が手入力、どうして、それは折角関数で構成されているのに、それが理解出来ないので、虫食いだらけになってしまっている。研修中それに気付いて課長さんに言ったら、指導してやってくれ、と。このことは、後半のくだりで説明するが、肝心の課長さんもエクセル知識は不十分。
1年3月勤務したが、一言で云えば全く面白くなかった。施設警備は退屈だ、受付、巡回、立哨の繰り返し、が、此処は少し変わった仕事があった。
それは、社員のロッカーキーの作成と返却、そして訃報対応。
特に訃報対応は神経を使う、若し死亡者と喪主の名前を間違ったら大変なことになる。そういう大きな間違いはなかったが、何せ電話で訃報の内容を聞き取るので、男のお、なのか、夫のお、なのか、慎重さが求められる。葬儀場所も厄介だ、セレモニーホールなら電話番号で調べられるが、時には自宅、お寺、また若い社員だと、住所をきちんと言えない、父方の祖父母なのか、母方の祖父母なのか分からない。
ロッカーの作成、返却作業も、返却されたロッカーは中を確認し、清掃作業まである。作成は、基本5日前に申請のきまりがあるが、明日使うからと、夕方10件もの依頼が入る。もうこうなると、休憩時間はとれない。
警備員全員が能力が低い訳ではない。警備の本質は誠実に仕事を完結することで、例えば建物火災が発生したときは、避難誘導に専念し最後の一人まで安全に退避したかを確認し、その後自分が退避することが義務付けられている。難しく厳しいが、それを誠実に実行する、それは能力ではなくて本人の資質による。
警察、消防と同様強い責任感を持つ人が優れた警備員であるが、能力がある人は中々来ない。警察官、消防署員と比べ職場環境と賃金に各段の差が生じているので、何度も言いますが、警備業界全体のないものねだりとなってしまう。




