福知山
殺風景な営舎、ここにどんな青春があるのだろうか。しかし神様は粋なはからいをしてくれました。そう巡り合ったのは素晴らしい人たちでした。
福知山市
大河ドラマ、麒麟がくる、の主人公明智光秀の善政を今尚偲んでいると云う福知山市、52年前の二十歳の若造がそんなことは知る由もなく、田舎駅に到着したのは、もう初秋の頃だった。
朝だったのか、昼だったのか、夕方だったのか、それすら記憶にないが、駅で自衛隊服に身を包んだ偉丈夫が迎えて呉れていた。そう、これからお世話になる真田二曹だ。
殺風景な駅のホームで迎えてくれた真田さんは、重迫撃砲中隊の射撃指揮班の班長、私の直属の上司。
何故射撃指揮班か、それはあの微分積分の筆記試験の結果だと推測された。
射撃指揮班(通称FDC)は、普通科連隊の歩兵部隊を重迫撃砲で後方支援する役割を担う。観測点から敵と味方の距離を測り、山越えに107ミリ榴弾砲を放つ。放てば直ぐ移動する。
歩兵部隊にとって唯一強力な火器を如何に効果的に使用するか、また正確に敵に打ち込むか、それには計算尺等、高等数学が必要となる、所謂頭脳集団。どうやら、私は筆記試験でその才ありと認められたのだ。
そんなことは後から知ったこと、田舎の古びた兵舎のベッドで先ずは背嚢を降ろした。木造の兵舎は床も軋む、20数人がひとつの部屋で過ごす。プライバシーなんてそんなもの何処の世界の話。
ロッカーなんてない、荷物はベッドの下、おまけに夜間は1時間置きに兵舎を見回る。新兵は、一番きつい夜中の1時か2時に、皆を起こさぬように起きて見回る。
京都で乗り換え、福知山線で福知山市へ。四方が山に囲まれた福知山は盆地、連隊はその中腹、何もない。そこに、4個の普通科中隊、重迫撃砲中隊、管理中隊の6個中隊が駐屯している。
今にも、歓呼の声に送られて出兵するかのような営舎の佇まい、言葉を変えれば刑務所。
しかし、何処にでも人はいる、出会いがある、そうこんな田舎町の駐屯地こそ私の青春の出発点。
神様は本当に粋な計らいをします。




