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気持ちが鬼持ちに勝る時  作者: しんぎつ なない
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第4話 ハプニングと規格外

窓から差し込んでくる光が紅くなってきた。

赤い色を見ると何か思い出せそうになる。

何故かは分からないけど……

そして、太陽がすっかり沈む頃マランさんが帰ってきた。

マランさんの後ろには、マランさんにも負けず劣らずの筋肉を持ったイケメンなおじさんと、頭以外鎧で覆われた若い男の人がいた。

多分、おじさんの方がアラシュさんで、若い方が騎士だろう。


「小僧、調子はもういいか?」


アラシュさんだと思われる男の人が聞いてきた。


「あっ、すっかり良いです。ありがとうございます。あの、あなたがアラシュさんですか?」


「そういえば、自己紹介してなかったな。そうだ、俺がアラシュだ。マランとは古い付き合いでな。俺とマランは同じ時期に商人デビューしたからな。話が合うんだ」


「そうですか。この度はありがとうございました。俺はつぼみと言います、よろしくお願いします」


俺は頭を下げる。


「あぁ、よろしく。今回は散々だったな……お前たちを襲った奴らはこの街で名を馳せてる結構有名な盗賊でな。物を盗んだり、人を殺したり、女を襲ったりで大分被害が出てたんだが、実力がかなりあって手出しできなくてな……」


そう言えば、あの4人の中のガタイが良い奴もみずと同じくらいの力持ってたしな……

他の3人も同じくらいの力を持ってたから、確かにかなり実力はあったのかもしれない。


「俺ぁ、すげー驚いたんだぜ?そんな盗賊の主力4人がぐちゃぐちゃになって死んでたからよぉ。1人は塵になってたし、あれは鬼の力使うまで誰が誰か分かんなかったぜ……みずちゃんはやってないって言うし、あれはつぼみがやったのか?」


「僕はこの街の警備担当の騎士のゼランというものなんだが、そのことについて詳しく教えてくれないかい」


マランさんと騎士の人が興味津々な顔で聞いてきた。


「いや、やってませんよ……第一、俺は鬼持ち(きもち)じゃないですから。能力を使いたくても使えませんし……俺じゃ到底敵う相手じゃありませんよ。逆に俺はみずに守ってもらってましたから」


「そうか……じゃあ君達、盗賊たちはどういう経緯で襲ってきたか教えてくれるかな?」


俺とみずは襲われるまでの行動を事細かく話した。


「それで、最初に3人に襲われました。ガタイのいい男がみずを殴り、そこから能力での戦いが始まりました。最初の攻撃は相手の炎の攻撃です。男が呪文を唱え、こう手をふると(ガシャンッ)炎が俺にめがけて襲ってきました。俺は死を覚悟しま……し……」


つぼみが手を降った時、手から風が発生し、ゼランの近くにあった花瓶を真っ二つに切っていた。


「「「「「……」」」」」


長い沈黙の後、がすごい形相で迫ってきた。


「えっ⁉︎ 今の君が⁉︎ というか君の手から出てたよね⁉︎ 『死を覚悟した』じゃないよ!あと少しずれてたら僕が死ぬところだったよ! 君、鬼持ち(きもち)じゃないんだよね⁉︎ そうだよね⁉︎」


「……えっと、俺は鬼持ち(きもち)じゃないですが……。すみません!ちょっと落ち着かせてください!」


何が起きた⁉︎

俺が手を振ったら、風が出て花瓶を真っ二つに……

うん、意味がわからない。

6歳になって鬼持ちきもちかどうかの検査もしたけど、鬼持ちきもちじゃ無かったし。

遅くても5歳までに憑かれなかったら、体が強くなりすぎて鬼が憑けなくなるって言うし。

もし、鬼持ち(きもち)だったとしても詠唱してないし。

どうなってるんだ⁉︎


「俺は鬼持ち(きもち)ではないはずです。検査の時にも言われました。すみません、俺にもさっきのは何かは分かりません……呪文唱えてませんし」


「確かに呪文は唱えてなかったけど、君が出したんだよね?」


「多分……そうです。何か出したなーっていう感じはありました」


鬼持ち(きもち)ではなくて、詠唱もしてない。んー、分からない……なんだ?新手の鬼持ち(きもち)か?それとも全く違う何かか?まず、本当につぼみくんが出した確証もないし。んーんー」


憲兵が何やらブツブツ言い始めた。

突然の予想外なことで頭が追いつかないのかもしれない。

そういう俺も何が起きたか分からず、頭がショートしそうなんだが。


「騎士さんよぉ、これは俺たちが考えるだけ無駄なやつだぜ」


頭を悩ませ唸っているゼランを見るに耐えなくなったのか、アラシュさんが話しかけた。


「このことは、盗賊のことと一緒に上に報告して考えてもらうしかないんじゃないか?今は、分かんねぇことを考えるよりも盗賊のことをきいたほうがいいんじゃねぇか?」


ゼランはそれを聞いて落ち着いたようだ。


「……それもそうですね。この件は一旦置いといて、引き続き話を聞くことにします。君たち、話の続きをしてくれないか?」


「あ……はい、分かりました。」


ここからはみずが話した。

自分が覚えていることを全部言った。


「つぼみくんはお腹を貫かれたところまでは覚えているんだよね?でも、今はピンピンしてるけど、そこらへんについてはどうなんだい?」


「はい。確かにお腹をボスっぽい男の植物に貫かれました。それはしっかり覚えています。でも……すみません。今、俺がこうやって生きている以上、それが確かな記憶かすらも分かりません……そして、刺されて意識を失って起きたらここのベットの上でした」


「んー、そこなんだよなぁ……まぁいい、そのことについては持ち帰って話し合うよ。よしっ、じゃあ僕はもう帰ることにするよ。また後日、話を聞きに来ると思うから。では、あとのことは任せていいですか?」


「あぁ、いいぞ。もう外はすっかり暗ぇし気をつけて帰れよ」


「はい、ありがとうございます。では、また後日って、痛っ!」


ゼランは花瓶の破片で手を切った。

大分深く切ってしまったらしく、血が飛び散った。


……

………

…………


あっ……


思い出した……

あの男たちを殺したのは、俺だ。

意識がなくなったと思ったら、急に体が意思とは関係なく動き出したんだ。

なぜ勝手に動いたのかも、怪我が直っているのかも分からない。

でも、俺が沢山の技で男たちを虐殺していったのは覚えている。


「……」


つぼみは少しの間、放心状態になった。


「大丈夫ですか⁉︎ ゼランさん!このハンカチで一旦おさえておいてください。アラシュさん、水と包帯か何かを持ってきてもらえますか?」


「おう、分かった。ちょっと待ってろ!」


アラシュは勢いよく部屋から出て行った。


「結構深く切ってますね。でも、大丈夫です。このくらいなら、すぐ血は止まりますよ」


「あぁ、ありがとう。迷惑かけてすまない」


アラシュが水の入った桶と包帯を持ってきた。

そして、それをみずに渡した。


「ゼランさん、まず水でよくあらってください」


「分かった。くっ……」


「傷は乾かさないほうがいいんです。今は生の鬼を持った人がいませんから、後でみてもらってください。」


「みず、ちょっとどいて」


つぼみがみずのところまで行って言った。


「えっ?」


「いいから」


つぼみはゼランの傷に触った。


「何してるの?触ったところで何もって、えっ⁉︎ 治ってる⁉︎」


つぼみがゼランから手を離すと、傷は何も無かったかのように治っていた。


「ゼランさん、思い出しました……男たちを殺したのは俺です」


「えっ……?そうか、君か……。分かった、また後日話を詳しく聞かせてもらう。これは僕だけでは判断できない問題だ。報告して話が纏まってから、村を訪ねる。その時は一緒に王都に行くことになる。つぼみくんの力については誰にも言わないでくれ……今は大事にしてはいけない。家族にも言ってはいけないよ。分かったか?」


憲兵は妙に落ち着いていた。

そして憲兵は、ここまで規格外の問題は自分だけでは到底扱えるものではないと判断し、後で話を詳しく聞くことにした。


「分かりました」


憲兵はそれを聞いて家から出た。

家には呆然と立っている4人が残った。

ここで打ち切ります

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