第2話 街
日が落ちてきて、暗くなってきた。
今日の作業はこれで終わりだ。
俺はしっかりとノルマをこなし、森へ入った。
いつも通りに、木を枝で打ち付け、剣の練習をする。
辺りが大分暗くなってきて、これ以上はもうできないだろうと判断し、森を出た。
家に帰るとやっぱりそこには、激しい形相のみずがいた。
「ねー、分かったって言ったよね?ねー、言ったよね?」
今回は、「ねー」で攻めてくるようだ。
「私ね、ちょっと期待しちゃったんだよ。朝、ちゃんと約束したからね。今どんな気持ちか分かる?ねー、わからないよね?そうだよね。こんなにもいつも遅れてるんだもん。私がどれだけ心配してるか分かる?帰ってくるって言った時間に、子供が帰ってこなかった時のお母さんを、そうぞうしてみ。わかるでしょ。どれだけ心配してるか。今度からは絶対に守ってよね。早く帰ってくるって」
これ以上遅くなると本気で半殺しにされそうな雰囲気だな。
よしっ、もう少し早く帰ってこよう。
「本当に毎度毎度ごめんね。次からは絶対に帰ってくるから。すぐに帰ってくるから」
「ぜったいだよ、絶対だからね」
そう言って、みずは机の横に座った。
俺は、みずの隣に座った。
みんな揃ったので、晩御飯を食べ始める。
今日もパンだ。
昨日も朝、昼、晩全部パンであった。
みずの家はそこまで貧しいとは言わないが、まぁ貧しいの分類に当てはまるっちゃー、当てはまる。
というか、村自体がそんなにお金を持っていないのだ。
どんなに稼いだとしても、領主にごっそりともっていかれる。
あの領主め、いつかどうにかしてやる。
俺がそんなことを考えていると、みずが話しかけてきた。
「明日、マランさんが街に馬車出すって言ってるんだけど、ついていかない?もう、マランさんとお母さんには、許可もらったからさ」
「えっ、街に行けるの?」
「うん、私たちってもうすぐ働かなきゃいけない歳でしょ。だから、街のことを知っておきたいっていったら良いって」
この国では、17歳になったら、村を出て最低25歳までは郷村ではない場所で働かなければならない決まりがある。
これは、王都に近い場所の労働力を増やすために作られた制度だ。
俺とみずは、あと30日ほどで17歳である。
「つぼみはどんな仕事をしたいの?」
「んー、やっぱり魔物を狩る仕事かな」
「……頑張って。無理しないでね」
みずは、何か言いたげだったが、それだけ言うとしずかになった。
「もう一度聞くけど、本当に街行けるんだよね?」
俺は暗い空気になるのが嫌だったので言葉をつないだ。
「うんっ、私たちまだ村出たことないから、良い経験になると思うの?あー、どんなところなんだろう」
「つぼみ、みず、あんまり迷惑かけちゃダメよ。気をつけて行ってね。沢山のことを学んでくるんだよ」
「「うん!」」
その日は、いつもより早く寝付けた。
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朝、今日は練習は行かないことにした。
疲れて、街に行くのはいやだったからだ。
朝食を食べ、弁当をもらった。
「気をつけていくんだよ。羽目を外さないように」
「分かってるよ!じゃあ、行ってくるね、お母さん」
「行ってきます」
俺とみずは走ってマランさんとの待ち合わせへと行った。
「おっ、来たか。荷物を積むのを手伝ってくれ」
「あっ、はいっ」
これから、お世話になるし、しっかり手伝うことにした。
マランさんは筋肉ゴリゴリのおっさんである。
強そう。
俺は荷物を積みながら街について聞いた。
今回行く街はリスペルカという街だ。
村に一番近い街で、主に農作物が売っている。
家具なども充実していて、静かにクラスのには良い街らしい。
マランさんは村でできた農作物を売りに行く商人らしい。
弟子入りするかと誘われたが、丁重にお断りした。
その後も街について聞いていると、荷物が積み終わり、馬車は出発した。
街に行く途中、3匹の魔物に出会った。
その中の二体をマランさんが倒し、残り一体をみずが倒した。
マランさんもみずと同じく、鬼持ちで、力の鬼が憑いている。
「我が鬼よ 力を貸したまえ ギャリア・スコリンティス」
マランさんが呪文を唱えると、一瞬体が発光した。
そして、魔物の元まですごい速さで近づき、殴って倒した。
本当にすごい。
俺も鬼持ちになりたかった。
まぁ、何言ってもなれないんだから、ひたすら剣や瞬発力、筋力を鍛えるしかないんだが。
みずもすごい戦いをしていた。
手の先から肘くらいの大きさの尖った氷を空中に出し、それを魔物に撃ち込んだ。
魔物は奇声をあげて倒れた。
そこまで魔物も大きくなかったので、それで十分に殺せた。
マランさんは倒した魔物から使える素材をとり、馬車に積んでいた。
街で売るらしい。
そんなこんなで、俺は何もできないまま街へついた。
ないも出来ない自分が心底嫌になる旅路であった。
「よしっ、ここで自由行動とする。みずちゃんには倒した魔物分の金をやる。書いたいものがあったら買いな。まぁ、そんなに良いものは売ってないが。5時間後にまたここで集合だ。分かったな」
「「はい」」
「じゃあ、気を付けろよ。みずちゃんは可愛いんだから、変なやつに絡まれないようにつぼみと2人で行動しな」
マランはそう言うと馬を打ち付け街の奥の方へといった。
「つぼみ、どこ行こっか?」
「俺はどこでも良いよ。お金持ってないし、みずの行きたい場所行きなよ。ついてくから」
「分かった。って言っても、この街のこと全然知らないから、ぶらぶらすることになるけど」
「じゃあ、そこら辺廻るか」
「うん」
俺とつぼみはそこらをぶらぶら歩くことにした。
10分ほど歩いていると、急にみずが「あっ」と声を出した。
「何?なんか良さそうなお店あった?」
「うん、あれ」
みずはそう言って、雑貨屋さんを指差した。
どうやら気になっているのは、店の前に出されている香水のようだ。
その店によることになった。
みずが店の前でその香水をジロジロと見ていると、店の奥から腰を曲げたおばあさんが出てきた。
「良いものに目を付けたねー。それは、向こうの森の奥地で採れるクヴァパスという花の香水だよ。人の気持ちを落ち着かせる良い香りがしてねー。若いもんにも、わしらみたいな年寄りにも人気なんだよ」
どうやらそのおばあさんは店の人らしい。
みずがあまりにも真剣に見ていたから、声をかけてくれたらしい。
「おー、そうなんですか。ちなみにこれっていくらですか?」
「3000ビリスだよ」
「んー、今手持ちが2800ビリスだからギリギリ足りないなー」
「そうかい。じゃあ、特別に2700ビリスにまけてやろう。どうするんだい?買うかい?」
「んー、じゃあ……買います」
「分かった。はい、どうぞ」
「あっ、ありがとうございます」
そう言って、みずがお金を渡し、店を出た。
買い終わり、お金もほとんど残っていないのだが、まだ待ち合わせた時間には早すぎるので、またぶらぶら歩くことにした。
途中幾つかの店によっていると、時間が早く感じた。
待ち合わせまで残り1時間となったので、早めに待ち合わせの場所に戻ることになった。
「つぼみ、この道から行ったら早くつけるんじゃない?」
戻っている時に、ちょっと暗い雰囲気の道があり、その道は待ち合わせ場所まで確かに早く着けそうだ。
でも、ちょっと危なくないか?
まぁ、大丈夫か。
この街の人たちはみんな良い人そうだし。
「そうだね。ここから行くか」
つぼみとみずは、もっと気をつけておけば良かったと後で後悔するのだった。
だが、今の2人はそのことを知る由はない。
短くてすみません。




