【マッチ売りが転生していたとしても】
「まじ無いわぁ。」
そんなことを呟いたのは、寒い冬の火にマッチを売る裸足の少女。
凍える体を抱きしめながら、己の運命を呪っていました。
「なんでよりにもよって、マッチ売りの少女なんかに転生しなきゃいけないの。」
少女は前世の記憶がありました。
前世で読んだ、マッチ売りの少女というタイトルの童話。
それは彼女の世界で、昔に本当にあった可哀想な少女の話だと伝えられていました。
まさか転生して、自分がその可哀想なマッチ売りの少女になってしまうとは。
「マッチを売ってこいって家を追い出されるまで、全然気づかなかったわ。」
物語の通りなら、このままでは凍え死んでしまいます。
寒さでうまく回らない頭で彼女は必死に考えました。
「殴られてもいいから家に帰るのも有りだけど、瓶持ってたし下手したら死ぬな。」
マッチ売りの少女はどうすれば良かったのか。
前世の国語の授業で出題されたこともありましたが、どんな答えが出ていただろうかと彼女は頭を悩ませました。
「見せたいものを見せてくれる魔法のマッチってことで売ってみる?いや、私以外の他人が見えるかわからないしなぁ。」
持ってるマッチは普通のマッチだったはずでした。
彼女はそこで疑問に思います。
そもそも、本当に自分はあのマッチ売りの少女なのか?と。
「たしかに物語のとおりになってるけど、マッチで火をつけてみないことにはわからないよね。」
ためしに一本だけ、火をつけてみることにしました。
「私たちの願いを魅せてくれますように。」
人通りのある場所でそう言いながら、貴重な一本を擦りました。
すると彼女の目の前に、見たいと思っていた前世で好きだったものが浮かびました。
ですが他の人はマッチを見ても素通りするばかり。
どうやら見えているのは彼女だけのようでした。
「成功したのは嬉しいけど、他の人に見せられないんじゃ売れないわね...。」
改めて、マッチ売りの少女であることを自覚して落ち込むばかり。
今度こそはと、彼女はいろんな手を考えてみました。
マッチ以外を売ってみようとしてみたり、お手伝いはないかと聞いて回ったり。
ですが何をしてもうまくいきません。
「あぁもう。前世の記憶があるのに、何の役にもたたないなんて。」
寒さに震えながら、彼女はマッチの火で焚き火をする方法を必死に考えました。
もう寒くて仕方がないのです。
「いっそ実家を焼こうか。」
お腹も空いていたので、彼女の思考回路は限界でした。
「そもそも、こんな生活を続けるより天国に行った方が幸せなんじゃ?」
そう、彼女は忘れておりました。
マッチ売りの少女は、バッドエンドとは言い切れないのです。
可愛そうにと言われているマッチ売りの少女は、実は天国で幸せになっていた。
そういう童話だったのですから。
「飢えも寒さも無いなら天国に行くのも悪くないって思えてきたけど、どうしよう。」
とりあえず寒いので、マッチの箱の束を使って火を灯そうとした時でした。
マッチについた火が、天国を映し出しました。
「展開早いよ!?まだ順序があるんじゃない?そりゃあ、天国で暮らすことになったらどうなるか知りたいとは思ったけど!...待てよ。」
マッチの火が消えた瞬間、彼女は閃きます。
願ったものを見せてくれるマッチ。
まさかと思いながら、彼女はもう一度マッチに火をつけました。
「どうすれば最善なのかを知りたいんだけど、見せてくれますか?」
火は、その方法を映しました。
昔々、一人のマッチ売りの少女がいなくなりました。
とても寒い冬の日だったので、凍え死んでしまったのだろうと嘆かれました。
いつしか、きっと天国で幸せのなったのだろうという話が、童話となって世界中に知れわたりました。
昔々、誰も知らなかった真実。
マッチの売りの少女に転生した彼女は無事に冬を越していました。
彼女は裕福ではありませんでしたが幸せでした。
どうすれば幸せになれるかを、マッチの火が見せてくれるからです。
「すごいチート。」
彼女は、そう言いながら幸せそうに笑いました。




