クッキー
クッキーと言われたら何を浮かぶだろう。
自分はログに近いかしら、ちょっとした乙女ならそれらしく、お菓子作りできるくらいの意味合いでとって欲しいかも。
「この帽子、注文しよ」
ポチッ
まぁ、ネット注文である。そんなもん、ネット注文である。
ちょっと値が張っても遠くにあるゴチャゴチャしたお店より、ネットの中にある整理されたお店に出向くのだ。御子柴はそうする。
1人で行くのはなんつーかダサいってか。わざわざそれを買いに来たのか、って、面倒に思う。クッキーって単語はネットの情報を保存するクッキーを連想してしまうのは、ちょっと変わり種か?時代の変化か。
スマホ片手に、ネットマネーでお支払い、あとは袋なり箱なりなった商品の到着を待つ。それを開封して喜ぶが、ま。少しで冷めるもの。
スマホってホント神の品物だって思う。人が生んだ機械の神。お利巧さんで真面目で、ちゃんとしていて。
先の未来じゃ、VRとかでリアル感覚のネットショッピングなんてできるのかしらねぇ。技術の進歩はとてもありがたいこと。生み出そうとするのは大変そうだから、関わりたくないけれど。
「御子柴は何してるの?」
「ただのネット注文よ、嶋村。学校にいながら買い物できるって、素敵じゃない?その過程で苦労している連中の事は知らないけれど」
「買い物~?私は動画。授業ってかったるい」
お前等、2人。真面目に勉強しろ。
そう言いたいと思ってか、授業が終わってから御子柴と嶋村の友達。川中と迎が
「2人共、授業は受けた方がいいよ」
「うんうん。関係ない笑い声が聞こえるし」
「優等生ねぇ、相変わらず。川中に迎」
「気が乗らない事ってあるでしょ?アニメの方が勉強になるんじゃないかしら?」
休憩中のことである。友達だからって、そんなことを言われても流す程度のこと。川中達なりの気遣いには嬉しく思ってのことで、
「川中。質問するわ。古文や因数分解、歴史、生物、英会話。果たして、なんの意味があるのかしら?スマホとネットがあれば、どーという事はないんじゃなくて?」
冗談的に、カンタンな意訳は『勉強ってなんの意味があるわけ?』である。
学生時代なら誰でも思う事である。褒められたいから、やらなければ怒られるから、将来苦労するからとか。しかし、御子柴と嶋村が言うほどの優等生、川中は生真面目に各々を答えてしまう。
「古文と歴史は私達人が、どのような歩みを遂げて来たかを学ぶ授業だよ。言葉の変化や表現は、当たり前に常に変わってきている。歴史は人が集合となり、どうやってこの現在まで過ごしてきたか分かるよね」
「!」
「……」
御子柴の不真面目さに熱を入れてやろうとする、真面目な表情であった。
「因数分解は、御子柴と嶋村が今手に持っているスマホやネットを確立させる上では、基礎の基礎に必要なものだよ!生物の授業は命について学び、助けて繋ぐための医療技術を支えるためだし」
あかん。マジに各々に言っている。川中の悪い癖。
「英語を喋れた方が、カッコいい人と出会えるんじゃない?必要だよ。私達は、便利だけじゃなくて、教育も受ける生活をもらえた側なんだから。もったいないよ!」
「……あー、分かったわ。今度はちょっと真面目になるわ」
一般人には関係ねぇーって言いたいところであったが、今。自分がスマホやネットをやっていたり、優れた医療技術を受けてたりすると大切な気がする。マジマジ言われると恥ずかしかった。
しかし、ど真面目な川中を抑えるように迎は付け足す。
「ともかく、川中!あれだよね!勉強って、学ぶことだけが大事じゃないもんね!」
「そうだね。全部ができる人っていないわけだし」
「御子柴や嶋村を否定するわけじゃなくて、注意としてね。学ぶ意識まで失っちゃダメってこと!」
アセアセな表情で仲が悪くないようにって、そんなことくらい分かってますよ。って
「はいはい、これからは真面目に勉強しますよーって」
「うーん……ホントかな?」
「言いがかりってか、言い訳って、思われますぅ?」
真面目で優等生で、できる子で、可愛いとくれば、そりゃ学校の天使や女神なんて呼ばれるわけだって、御子柴も頷く。川中の優しさは分け隔てなく、平等に優しい。
気にかけられると幸せだ。
「あ」
「?」
しかし、この川中と正反対に位置するべき人。御子柴は薄く企みを含む笑みを作る。小悪魔なんて可愛い呼び名もあるが、彼女に近い男子達はただの悪女だと、ど直球な思い。
2人の仲が良いのは、まったく違う価値観でも分かり合える精神があるからだろう。
「勉強しなきゃいけないよね」
スマホでちょっと検索、川中や迎にも見えるように
「今から保健体育の勉強をしなきゃね」
「!ちょっ」
「み、御子柴!?」
川中や迎みたいな真面目な子には、この手の攻め方が面白い。急にフリーズした表情から
「私だって大切だって言えるんだよ~、川中も迎も勉強しないとね~」
「あ、あ、あの」
真っ赤に顔が染まっていくサマァは、とっても可愛くて揶揄いがある表情そのもの。川中のこーいうところが良くて、
「ずるいよー、御子柴ーー!」
最後の奥義で走り去っていくのが、また川中の可愛いところだ。
「あー!川中ー!」
「んー?彼氏持ちの迎はやっぱり勉強したい?」
「え、あ、その……」
「……その辺にしなさいよ、御子柴。意地悪しない。男子達が見てるし」
今のやり取りで教室にいた男子達がこっちを見ているのだが……。
「分かってるわよ、冗談冗談。周りの男子達は女子からクッキーもらえた顔より、エロイ反応してるんじゃないわよ」
聞こえる声で、辛いところを言うな。反応したのは結構多い。
「ギクッ」
「ドキッ」