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8,教会の少女

 アロイ先生に付いて行ったら王城門前に馬車が止まっていた。 其処に鎧を身に纏い盾を背負った二人の男女の姿があった。


 二人の男女はアロイ先生を見て敬礼した。


「彼等は貴方の護衛の騎士です。 これから貴方の力となってくれるでしょう」


 先生から紹介されると二人の騎士は名乗りを上げる。


 男が「アルサート・コウエルであります、勇者様!」とデカイ声で名乗り、


 女が「……レイヤ・マスキアです」とぶっきら棒に名乗った。


 二人共まだ十代の若者だ。


 アルサーは焦げ茶色のショートヘアーに爽やかな笑顔を浮かべている。


 顔はイケメンで体格は騎士にしてはやや細い。


 レイヤは紫色の髪に後ろの髪の毛を少し伸ばして目鼻立ちは整っている。 顔は無表情で少し冷たい印象がある。 体格は線は細いが出るとこは出て引っ込む所はしっかり引っ込んでいる美人だ。


「先ずは馬車に乗りましょう。 話はそれからです」


 俺と先生が馬車に乗り込み、二人は御者台に乗り込む。


 馬車が動き出すと先生も話し始めた。


「先程話した通り貴方にはこれから遺跡街に向かって頂き、探求者となってギフトを覚醒させて貰います」


「遺跡街? 探求者?」


「遺跡街とは約千年前、銀の時代に妖精族が築いた王国跡地に造られた街です。 その街にある発掘場から我々が現在使っている多くの道具が出土しているのですがそれだけではありません。 金銀財宝や当時使われていたと思われる金貨といった物もモンスターを倒す事でドロップします。 それらを手に入れ財貨に変えて生活の糧を得る者の事を探求者と呼びます」


「モンスターからドロップて……どういう事ですか?」


「発掘場は一種の異次元になっており其処にはモンスターと呼ばれる危険が存在しています。 モンスターは倒しても暫くしたら復活します。 ですから何度でも倒して何度でもアイテムを手に入れられる、我々にとっては貴重な資源採掘の場でもあるのです」


 ウ~ム。 無限popか。 ゲームの様な仕組みだな。


「発掘場の様な場所は世界各地に点在し我々はそれらをダンジョンと呼んでいます。 ダンジョンでは奥に行けば行くほど強力なモンスターやトラップが存在しますがその分見返りも大きく貴重な道具や金銀財宝が手に入ります」


 強力なモンスターか……。


 それ以前に俺、モンスターと戦えるのか?


 考え込んで何時の間にか渋い顔になっていた俺の心情を読み取った先生は穏やかな顔と口調で話を続ける。


「何も奥に行く必要はありませんよ。 貴方の第一の目的はギフトの覚醒ですからね。 死んでしまってはもともこもありません。 貴方の能力は承知しています。 その為に護衛騎士を付けたのですから。 それに街には私の元教え子のシュタインが住んでいます。 彼はその……少々、変わった所がありますが、とても優秀な研究者です。 貴方の事は手紙で知らせておきました。 彼からも任せてくれて良いという返事も貰っています。 街の事や何か困った事があれば彼に相談して下さい」


「態々ありがとうございます。 でも、どうしてそこまでしてくれるのですか」


 俺はお礼と共に疑問に思った事を口にした。


「例え強制されたものでも貴方は私の教え子ですから。 それに、本来であればこの世界の問題はこの世界に住む我々が解決しなくてはならないのにあなた方異世界の人間に責任を押し付けてしまった。 せめてものお詫びに私に出来ることしたいと思っただけですよ。 気にしないで下さい」


 ちょうど先生の話が終わった頃、馬車が止まる。


「アロイ様、着きました」


「そうですか。 正輝殿、馬車から降りて下さい。 此処からは乗り合い馬車で移動して頂きます」


 馬車を降りると周りは人で賑っていた。 近くには路上市場があるようで子供連れの女性や荷車を引く馬車が通路を行き来している。


 馬車が並んで止まっている乗り合い所らしき場所では剣や槍等を持ち武装した者達がたむろしていた。


「先生、彼等は何者なんです?」


「ああ、彼等は馬車の護衛を引き受けた探求者です。 普段は遺跡街の発掘場に潜りますが、遺跡街に向かう途中には危険な狼型や熊型の魔獣が襲ってくる場合があるので道中の安全確保の為に彼等を雇うのですよ。 ベテランになれば邪神の眷属とも互角以上に戦えます」


 確か邪神の眷族は精鋭の騎士百人で漸く互角だって言う話だ。


 フッ! 俺には縁の無い話よ……。


「では正輝殿、私はこれで失礼します」


「アロイ先生、色々有難う御座いました」


 俺はアロイ先生に感謝の言葉述べて別れを告げた。 


 別れを済ませたた先生は馬車の御者台に乗り込み城へと帰って行った。




☆☆☆☆☆☆


 


 今、俺はアルサートとレイヤに伴われ他の乗客達と共に幌馬車に揺られている。


 遺跡街までは二日と半日掛かるとの事。


 正直、暇だ。


 じー


 ……にしても、さっきからずっと視線を感じる。


 正面の人物が俺の事をずっと見てんだよな。


 俺がちらと見ると正面の人物は―― 


 さっ


 と、顔を逸らす。


 俺が顔を逸らすとじっと見てくる。


 じー


 チラッ


 サッ!


 じー


 チラッ


 サッ!


 ……何これ? 遊びなの? 新しい遊びか何かなの?


 俺が頭の中でで?マークを点滅させていると隣の人物に呼び掛けられる。


「おい、さっきから何をしている?」


「ちょ、レイヤ! 勇者様に向かって失礼だよ!」


「かまわん。 コイツはどうせ貯金箱だ」


「本人の前で出来損ないなんて言っちゃ駄目だよ!」


 おい! 二人とも何気に失礼だよ! 特にアルサート、貴様俺をそんな風に見てたのか!


 それにしてもリーが付けたアダ名、城の奴らにも定着してんのな。


 クスクス


 正面を見るとさっきから俺の事を見ていた人物――白い修道服に身を包み、白い布を被った少女が俺達の遣り取りを見て笑っていた。


 年の頃は十代半ばで布から零れる前髪は薄い金髪のプラチナブロンド。 顔の肌は白く綺麗な顔立ちをしている。


「あっ! ごっ、ごめんなさい!」


 少女は色白の顔を真っ赤に染めて俯いた。


「姉ちゃん、さっきから俺の事見てたけど、何か用?」


 少女は大袈裟に頭をブンブン振って否定する。


「その……私、外に出るのが初めてで、人と接する機会も余り無かったからあなたのような年の近い男の子を見るの初めてなんです。 だから、つい……」


 なるほど。 しかし、外に出た事無いって何処の箱入り娘だ。


「ふん。 お前、教会の人間だろう? だったら奉仕活動とかで外で人と会う機会はある筈だが?」


 レイヤが聞きにくい質問を相手に投げかける。 君、ホントに失礼だね。


「あ、私事情があって余り教会から出た事無いんです」


 だろうね。 だから深くは事情を聞かないつもりだったのにこの子は……。


「そうか。 まあ、私にはどうでもいい」


 レイヤそう言うとは黙ってしまった。


「ああ、気にしないで! コイツ、何時もこんな感じなんだ!」


 アルサートはレイヤのフォローをしているつもりなのだろうがフォローになってない。


 せっかく少女と喋る切欠が出来たのだ。 色々話してみよう。


「この馬車、遺跡街行きだけど姉ちゃん、遺跡町に何か用事があるの?」


「はい、私、遺跡街に赴任する事になったんです。 だから、今度から遺跡街が私の住む街になります」


「ふーん。 俺は探求者にならなくちゃあいけないから遺跡街に行くんだけど。 そうすると俺と姉ちゃんって同じ街に住むんだね」


「そうですね! そうなりますね!」


 少女は花が綻様な可愛い笑顔見せる。


 かっ、可愛い……。


「おい、二人とも何をにやけている」


「え?」


 俺は顔が緩んだのは自覚があったのだが、二人? どゆ事?


 隣を見ればにやけ顔のアルサートと目があった。


 俺の本能がアルサートに対して警鐘を鳴らす。


 こいつは敵だ!


 俺とアルサートは互いににらみ合う。


「負けませんよ」


 不意にアルサートからそんな呟き声が漏れ聞こえた。


「あ、あの」


 少女が俺達に呼び掛けた。


「名乗るのが遅れました。 私、ロスマリンと申します」


「俺は「僕はアルサート・コウエルといいます!」」


 おい! 人が名乗りを上げようとしている最中に横から入るんじゃあないよ! そのしたり顔が余計にむかつく!



「レイヤだ」


 ぶっきら棒にレイヤが名乗った。


「正輝」


 俺はアルサートと睨み合いながら名乗った。


 その光景にレイヤは呆れ、ロスマリンはオロオロと狼狽えた。


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