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3.666人の勇者

 「うう~ん……」


「気がついたか坊主」


 目の前には三十代くらいの精悍な顔で茶髪の短髪、逞しい体の外人さんが目の前に居た。


 どうやら気を失っていた俺を介抱してくれていたらしい。


「此処は何処?」


「さあな、あのカテナイって神様の言ってた事がホントなら此処は異世界の何処ぞの国だろうが俺にもさっぱりだ」


 二十代半ばの金髪美人でスタイル抜群のお姉さんが会話に割って入る。


「此処って城の中にある広場だからさっきから兵士達が私達を見張ってるけど何もしてこないし……。 ああ、そういえば貴方で666人よ。 つまりこれで全員ね」


 お姉さんがデッカイ胸の下に腕を組んだのでその胸の大きさが更に強調される。


 周りに沢山人が居る。


 これが神様の言っていた歪みとやらの影響を受けた人達か。 


 そういえば此処にいる人達って人種が別々なのに言葉が通じてるな。


「神様が異世界の言葉や文字は全て理解できるからって言っていたけれど、他の召喚者達の言葉も理解できるようになったみたいね」


 それは助かる。 異世界の言葉が分かっても同郷同士の意思疎通が出来ないと協調とか出来ないから不便だ。


 それにしても何だろう? 視界が低い。 周りの人の身長高くないか?


「どうしたの?」


「いや、何か身長が可怪しいんですよ。 まるで縮んだだみたいで……」


「そうか? 十歳ぐらいだとそれくらいだろ?」


「え!? 俺十九歳ですよ!」


「ああ、お前もか。 新しく創られた体の年齢に誤差があるって言われてたが実際かなりの開きがあるんだよ。 俺なんて今年五十三なのに二十くらい若返ってんだからな」


「その逆に歳を取った人はいないみたいよ。 ちなみに私の実年齢は六十五歳ね」 


「「え”っ!?」」


 俺と中年のおっさんはドン引きして後ずさる。


「「還暦過ぎてらっしゃったんですね……」」


「でもね、この歳になっても結婚どころか男の人と付き合った事すら無かったから若返ってラッキーよ♡ 青春がカムバックしてくれたもんだから今とても喜んでるの」


「そういえば自己紹介まだだった! 俺、本郷 正輝って言います! 日本人です!」


「俺はランディー=ローガン。 アメリカ人の元軍医だ。 実は肝臓ガンで死んだんだ」


「私はネリーナ=テッサーリ。 イタリア人で小説作家よ。 ファンだという人にサインを求められた時にナイフで刺されて死んじゃった」


「俺は人生初めての就職先が学校の事務員だったんですけど初出勤の日に女生徒と校長に刺されて死にました。 神様が言うにはその二人の痴情の縺れに巻き込まれたとか」


 二人は哀れんだ目を俺に向ける。


「その若さで……不運ね……」


「ま、まあ、人生山あり谷あり、死んでも生き返れたんだからラッキーな方だ! これからの人生を楽しめ!」


 楽しみたいのは山々だが神様から聞き捨てならないキーワードを聞いたので楽しめるかどうか。


 そもそも今後俺達どうなるの?




☆☆☆☆☆☆




 正輝達がここ異世界に召喚されてから周りの召喚者同士で話し合っている最中、正輝達が居る目の前の城の会議室ではこの国の王アーガス=ラング=バリストールと重鎮達による会議が開かれていた。


「皆の者、この現象――人が突然、しかも大勢の者達が現れた事――どう思う?」


 王が上座中央の席に座り重鎮達を見回しながら言う。


「あの神とやら――カテナイと名乗った者の所業でしょうな……」


 宰相がそう言うと周りの重鎮達が皆その言葉に同調して頷く。


 実はカテナイは数日前にこの大陸に在る国々の主だった者達に対して邪神を討伐せしめる者を異世界より召喚すると予め託宣で知らせておいたのだ。(カテナイは偶々見つけたこの異世界を苦しめる邪神に召喚者達をぶつけて戦いを見物――要は娯楽として楽しむ腹づもりであった)


 各国や神殿、教会がその真偽を確かめようもなく今日のこの日を迎えた。


「もし、あのカテナイと言う神の言葉が正しければ我等にとって渡りに船。 邪神共の為にこれ以上兵士達を無駄死にさせずにすみます」


 神妙な面持ちで話す軍務大臣。


「しかし、彼らが我等の言う事を素直に聞くかどうか……」


 それに対して慎重な意見を述べる宰相。


「ウム、確かに。 彼等彼女等がどういった者達か見定める必要がある」


 宰相の意見に補足を付け加えるサイラス王。


「ではこういうのはどうでしょう。 彼等に身分を保証する品だといって何か体に身に付ける装飾品を与え、それに奴隷に使用している制約のフォースを付与するのです。 さすれば彼等が暴走しても取り押さえ事も容易に出来ましょう」


 内務大臣が提案する。


「それでは彼等が我等に対し不信感を抱き謀反を起こすのでは?」


 内務大臣の提案に反対意見を述べる外務大臣。


「邪神討伐が叶えばそれを外すと言えば良い。 更に褒章か何かで釣れば彼等の不満を抑える事も出来ましょうぞ」


 内務大臣は不安要素の解決策を提示する。


「余としては内務大臣の提案を採用したいとと思うが皆の者、他に意見はあるか?」


 それ以上のアイデアが浮かばないの皆沈黙する。


「内務大臣、それを用意するにはどれくらい掛かる?」


「何せ人数が多いので一週間は掛かるかと」


「それでは遅い。 三日で準備せよ」


「ハッ! 承知いたしました!」




☆☆☆☆☆☆




 中世時代のヨーロッパ兵士の格好をした人間が数人に囲まれて何やら偉そうな人が遣って来る。

 その偉そうな人が此方に向かって声を高らかにして口上を述べた。


「神に召還されし異世界の勇者達よ! 良くぞ降臨して下さった!  私はこの国で宰相を務めるタクラム・ワルターと申す者! これから勇者達にこの世界の現状をアーガス国王より説明いたしますのでどうか私に付いて来て下され!」


 この国の宰相と名乗る人が口上を述べた後、周がざわついて皆近くの人と互いに話し合っていた。


「どうする?」


「行くしかないんじゃないか」


「でも、大丈夫なの?」


「行かなきゃ分かんないよ」


「信用できるの?」


「さーね」


 などと自分の意見を言い合っているだけで誰も動こうとしない。


 そりゃそうだ。 こんな何処だか分かんない所に放り出されてオマケに情報が殆どないのだ

判断に迷っていた。


 そんな中、ある一人の男が大声を張り上げて皆に向かって喋りだす。


「俺は行くぜ!  俺達が手に入れた能力なら本物の英雄になれるんだからな! 行きたくない奴は此処で何時までもボーと突っ立ってりゃいい!」


 そう言って宰相の下へ歩いていく。


 それを皮切りに皆ぞろぞろと宰相の後を付いていく。


「さて、俺達も行くか」


「あの身立ちたがり屋じゃあないけれど、行かなきゃ状況は変わらないしね」


 ランディーとネリーナも行くようだ。


 俺も二人の後にくっついて行く。


 右ならえは日本人の基本ですから。


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