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21,怨念

 やっとメインスキルが出せたよ!

「話も纏まったことですし、早速発掘場に参りましょうか」


「そうですね、旦那様」


 え、シュタインさんも来るの?


「……何ですか、その顔は。 初めて会った時に言ったでしょう。 貴方の能力の検証をするには私も一緒に発掘場へ潜る必要があると」


 ああ、そういえば確かそんな事を言ってたような……。


 ギフトで原因が分かったから、その事すっかり忘れてたわ。


「もしかして、理由が分かったと? それほギフトの能力で、ですか?」


 人の心を読むな!


「それ、どういうこと?」


 今まで黙っていたアルサートが話しに割って入ってきた。


「マサキ君は幸運にも街に隠されていたアルフェリア王国時代の財宝を発見しまして、それを使いギフトを解放できたのです。 ああ、言っておきますが財宝を探しても無駄ですよ。 ダンジョン化して発掘場に飲み込まれて消滅しましたから。 代官代理である私が証人です」


 シュタインさんは虚実交えて説明した。


 実際は消滅する前に回収したけどね。


「そうですか……」


 それ以降、アルサートは喋らなくなった。


 何だろう? ”アルサートの奴から目を離すな!”って俺の感が訴えている。


「それで? マサキはギフトを使えるようになったと? ギフトの能力は何だ?」


 今度はレイヤが質問してきた。


 俺は一旦考えるのを止めてレイヤの質問に答える。


 俺は《HES(ヘス)》の能力を大まかに説明した。


 勿論、邪神の呪いや命の神の事は伏せて、だ。


「ふむ、その《HES》とやらの能力で原因が掴めたと。 しかし結局、レベルを上げるには発掘場に潜るしか無く、呪いを解くには発掘場を制覇しなくてはいけない、と言う事ですか」


「そういう事、です」


 シュタインさんは何かを探るように俺の目を見る。


 この人なら俺の隠し事を見破りそうだな。


「いやいや、流石に人様の心を読むなんて私には出来ませんよ」


「読んでんじゃん!?」


「考えを読むならある程度は出来ますけどね。 ああ、固有スキルの検証には発掘場に潜らないといけませんので私もお供します。 面白そうですからね」


 シュタインさん、あんた怖いよ……。


 さて、そんなこんなで発掘場に入ったのだが……


「うっ…く……う、うっぷ」


「だ、大丈夫ですか、マサキさん?」


 発掘場の入り口と言われている辺りから気分が悪くなってきた。


 しかもそれは発掘場の奥に進めば進むはどに増してくる。


 その原因は分かっている。


 このダンジョンに立ち入る事で一時的に封印が解除された俺の固有スキル《神眼》が教えてくれた。


 此処は……。


 「あっ! 旦那様! イービルリトラーが三匹居ます!」


 俺はハルラさんが見つけたイービルリトラーを見た。 見てしまった。 決して見てはいけないものを。 そして完全に知ってしまった。 知ってはいけないものを。


「よし、此処は僕に任せて!」


「先ずは腕試しだな」


「私も久しぶりに戦いますか」


「やめっ――」


 俺の制止の声よりも早くアルサート、レイヤ、シュタインさんの三人はイービルリトラーを攻撃する行動を起こした。


 シュタインさんは一匹を自身の持つ杖から射出した炎の弾で焼き尽くし、レイヤは一匹を自身の持つ剣で刺し貫き、アルサートは一匹の左腕を持っていた盾ごと切り飛ばした。


「止めろーっ!!!!」


「うわっ!」


 俺は直ぐ近くに居るアルサートを突き飛ばし、腕を切断されたイービルリトラーをその背に庇う。


「な、何をするんだマサキ!」


「気でも狂ったのか!」


「どうしたんですマサキ君!」


 皆、口々に言いたい放題言っている。


「危ない、マサキさん!!」


 ロスマリンが悲鳴を上げ忠告する。


「グッ!」


 俺が背に庇っていたイービルリトラーが右腕に持っていた小剣でミスリルの防具で守られていない背中の腹の部分をブスリと刺した。


「マサキさん!!」


「いやあぁぁぁあああーーーーーーっ!!!!」


 ハルラさんとロスマリンの悲鳴が聞こえる。


 自身が少剣で刺されているにも関わらず痛みの信号は俺の脳に伝わってこない。


 イービルリトラーは俺を刺した小剣をそのまま手放し後ずさる。


 俺は後ろを振り向き俺を刺したイービルリトラーにゆっくり近づく。


 イービルリトラーは観念してか俺が近づいても逃げる気配はない。


 イービルリトラーに触れそうなくらい近づいて切断されたイービルリトラーの右腕に向かって自然と手を翳し、俺のもう一つの固有スキル《生命(ライフ)》を発動する。


 すると、イービルリトラーの切断された右腕が光輝き手の形を形成し、やがて光が徐々に剥がれて粒子となり消えていくとその形成したモノが顕になる。


 イービルリトラーの右腕は完全に元に戻っていた。


 アルサート、レイヤが息を呑む。


「なっ!」


「《リジェネレーション》、だと!」


 俺は再び立ち上がり今度はレイヤに刺殺されたイービルリトラーに向かって《生命》を発動。


 レイヤに刺れた部分の傷が光輝き見る見る内に傷が塞がる。


 傷が塞がったイービルリトラーはやがってゴソゴソと動き出し立ち上がった。


 ロスマリンが驚きの声を上げる。


「これは《リヴァイバー》! マサキさん、回復系最高位の理術を使えるなんて……」


 そのイービルリトラーは人間の様に目を見開き、刺された所を手で擦って確認している。


 俺はシュタインさんに焼き殺され燃えカスとなったイービルリトラーに目を向ける。


「……そうか。 なら……」


 俺は固有スキル《生命》に俺の思った通りの事が可能かどうか問い掛け、”可である”という結論に達したのでその通りに《生命》を発動する。


 イービルリトラーの燃えカスで在ったモノが光輝き瞬く間に別の形に姿を変える。


 先程の右腕が蘇活した様に光が剥がれ粒子となり消えるとそこには一人の少女が横たわっていた。


 「回復系究極の理術リサージェンス。 歴史上、数人の聖者にしか使えなかったという奇跡の御業……。 まさか、この目で拝める日が来ようとは思いませんでしたね旦那様」


「そうですねハルラ」


 バルデスさんが驚きを持ってその少女の名を呟く。


「まさか……ライネ、なのか……」




☆☆☆☆☆☆




 ロスマリンが刺さった小剣を抜き俺の傷の治療をしようとしたが、直ぐに傷口が閉じてしまった。


 それに驚いていたロスマリンだが念の為に回復の理術ヒールを掛けてくれた。


 シュタインさんの提案でいったんシュタイン家に行く事に決めた。


 それから先程のイービルリトラー二匹は気づいたらいつの間にか居なくなっていた。


 シュタイン家のリビングでは皆が俺を囲んで座っていた。


 バルデスさんはあの少女と知り合いらしく、別の部屋で寝かされている少女に付き添っている。


「さて、マサキ君。 説明して貰っても宜しいですか?」


「……その前に、シュタインさん一つ聞きたいんだけど、ダンジョンて一体どうやってできてるんだ?」


 シュタインさんは少し考えてから「これは飽くまで私の仮説ですが」と断りを入れてから話してくれた。


 ダンジョンには3タイプの種類があり、一つは主神オーグが人々を鍛え、同時に富を与える為に生み出した自然派生型のダンジョン。 このダンジョンは自然の中で生まれ人々が暮らす近くには生まれないらしい。


 一つは人が何らかの目的を持って創りだした人工のダンジョン。


 そして、最後は生物の怨念が生み出したダンジョン。 このダンジョンの特徴はダンジョンに立ち入った者の志向に合わせてアイテムドロップが変化する。

 先の二つはアイテムドロップの種類は限定されるが、この手のダンジョンは種類に際限がないらしい。


「つまり発掘場は……」


「怨念型のダンジョン。 恐らくアルフェリア王国に住んでいた人々の恨みの念で出来たモノ、と私は見ています」


 俺は目を瞑り一呼吸置いて話す。


 俺が《神眼》で見たものを。


「発掘場の奥に進めば進む程ハッキリ見えた。 アレは、あの場所は妖精族の死者達の強い恨みの念から生まれたもんだよ。 余りに強い負の感情に当てられて気分が悪くなった位だ。 ……しかも、あそこでPOPしたイービルリトラーは、死んだ妖精族と探求者の魂でできてた」


「やはり、そうでしたか……」


「じょ、冗談キツイよマサキ」


 アルサートの顔は引き攣っていた。


「冗談なら良かったんだけどな。 生憎、俺は真面目な話で嘘や冗談は言わない」


「……」


「マサキ君、君が見た、そしてイービルリトラーに使った力は固有スキルの能力ですか?」


「そうです」


 一同、俺の言葉に絶句する。


「そ、そんな……それじゃあまるで神話に出てくる聖者様じゃ無いか!」


 アルサートの言葉に皆何も言えず沈黙する。


 その中でシュタインさんだけは冷静にいつも通りの調子で語り出す。


「固有スキルとはその人自身にしか持ち得ないスキル。 故に固有スキルと呼ばれています。 マサキ君の固有スキルは死者が姿を変えてモンスターとなった者、しかも私がその身を焼き尽くし灰にしたイービルリトラーを再び人に戻し蘇らせるというとんでもない離れ業をやってのけました。 これが公になれば大変な騒ぎになるでしょう。 ……邪神も黙っていないでしょうね」


 シュタインさんは暗に俺の正体がバレるのは時間の問題だと言いたいんだろう。


「そ、そうだ! アーガス国王に事情を全て話して保護して貰えばいい! そしたら――」


 レイヤがアルサートの話を遮る。


「アーガス国王と言えどマサキを邪神から守れないだろう。 ならば此処だけの話としてマサキの力を秘匿にするしか無い。 時間稼ぎにしかならないが少しは稼げる」


 レイヤが珍しく俺の味方になってくれた。


 だがそれでも尚食い下がるアルサート。


「僕達はバリストールの騎士だ! 国を裏切るつもりかレイヤ!」


「今の私達はマサキの護衛騎士だ。 それにマサキの事を秘匿するのは邪神から国を守る為にもなる。 下手に喋ってマサキの事が広まってみろ。 それこそ邪神が脅威と見做し使徒を引き連れてこの国を攻めてくるぞ」


「くっ!」


 正論を唱えられ引き下がるしかなくなったアルサート。 しかしコイツのこの様子じゃあ暴走するかもしれない。 一応注意しておこう。


 アルサートの横に居るロスマリンはさっきから俺に何か言いたそうにしているが周りに居る皆を気にしている。 余り人に聞かれたくない内容なんだろうか? 


「それで、マサキ君はこれからどうするつもりですか?」


 シュタインさんが質問してくるが俺の答えはまだ出ていない。


「ホントなら発掘場に潜ってレベルを上げながらクリアを目指すつもりだったけど、発掘場の事を知った今じゃあとてもモンスターと戦えないと思う。 でも、これからどうするか正直、何も思いついてない。 だから少し考える時間が欲しいです」


「では今日の所は解散しましょうか。 皆さんも色々在って疲れたでしょうから」


 シュタインさんの提案で俺達はそれぞれの部屋に戻り休む事にした。


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