13,歴史の真実
今回は残酷な描写、性的な表現があります。 免疫の無い方はそっとページを閉じて引き返す事をお勧めします。
書斎に残っているのはシュタインさん、バルデスさん、俺の三人だけ。
俺は素直に自分の事を話すか迷っている。
もしステータスに記されていた事が事実で、この事が世間におおやけになったら拙いのではないかと考えたからだ。
「さて、マサキ君。 君は何か話し難い事が在る様だね」
「では、こうしよう。 私が先に重大な秘密を話そう。 それから君が話すか話さないか判断して欲しい」
「それって話を俺なんかが聞いて大丈夫なんですか? 誰かに話すかもしれませんよ?」
交渉で自分が相手に自分の弱みを話すなんて最大の悪手なのに。
「いえいえ、君は話しませんよ。 私は君を信じます」
何処からそんな自信が出て来るんだよ、この人。
「妖精族がフォースをしようして邪神を復活させた話ですが――あれは嘘です」
「へっ!?」
俺は思わず素っ頓狂な声を上げてしまった。
なんじゃそりゃ! どういうこったい!
シュタインさんは話を続けた。
「実際は当時のバリストールの国王アンダメが妖精族の国アルフェリアに対抗すべく宮廷魔術師に命じておぞましい禁術を開発させたんです。 それを以ってアルフェリアを打倒し、優秀な妖精族を自分の支配下に置く為に。 そのついでにアルフェリアの美しき女王を手に入れ性奴隷にする為に。 しかし使用した禁術はとんでもない威力を発揮し、アルフェリア城を女王諸共消滅させ国土を不毛の大地に変えたそうです。 その上命の神でもあった聖者が封印した邪神を、禁術で偶然開放してしまったアンダメは慌てたそうな。 で、思いついたのが”全て妖精族のせいにしてしまおう!”というもので、全ての罪を妖精族になすり付けたんですね。 これが妖精族及び邪神復活の真相です」
「うわっ! ひで~。 ……でも、それを証明する物証はあるんですか?」
「当時、宮廷魔術師として働いていた者の日記と禁術の写しが此処にあります」
シュタインさんは日記と禁術が記された紙を取り出す。
二つとも古びて端が欠けたり、黄ばんだシミがこびりついていたりする。 古そうに見えるが保存状態はかなり良いみたいだ。
千年の時を過ごした二つの品は未だ原型を保っているんだから。
「何だったら中を見てみますか?」
シュタインさんは微笑んで俺に日記と禁術の写しを差し出す。
どうするかと逡巡する。 が、好奇心には勝てずその日記と禁術の写しをシュタインさんから受け取る。
「こっ、これは!?」
俺は中を見て絶句する。 日記や禁術の写しにはシュタインさんが話した通りの内容が細かく記載されていたのだから。
ちなみに、翻訳や読み書きがスキルとして表示されないのは身体に組み込まれた機能だかららしい。
俺達のステータス表示は簡易的なもので、細かな情報を見るには佐久間の《真偽眼》の様な特殊な鑑定能力が必要なのだとか。
それは兎も角、禁術の内容がまたとんでもないのだ。
内容はこうだ。
”千人の初潮を迎えし乙女の子宮に魔力に富む男の新鮮な精を注ぎ込む。 そして男に精を注がれて死した乙女の魂を集め、死した千人の乙女の鮮血で魔方陣を描きその中心に乙女の灰を埋める。 そして集めた魂を魔方陣に吸収させ凝縮、後は場所を指定し解き放つのみ”と記されている。
宮廷魔術師の日記には更に詳しく禁術の作成方法が記されていた。
”先ず最初に立ち入り禁止地区である王の所有地にある洞窟の中の広大な空間。
此処で貧民や一般市民から攫って来た初潮迎えた生娘を少しずつ集め、宮廷魔術師の男達がその娘を順番に犯し殺し、魂を特殊な容器に閉じ込め、死体からは血を抜き取りその血を使い魔法陣を描く。
残った死体は魔法で灰になるまで焼却し魔法陣の中心に掘った穴に入れる。
それを千回繰り返すのだ。
それが終わると灰を入れた穴を埋め、特殊な容器に封印していた千人の娘達の魂を魔法陣に吸収させ魔法陣が自動で起動、娘達の魂を圧縮して、後は場所を音声入力して指定した座標に標準を合わせ発動させる”
「エグイな……。 それに狂ってる……」
アンダメ国王はこれを実行に移したのだ。
「私は実際にその禁術が施された場所に行ってきました。 ……痕跡は消去しされていましたが、魔法陣に使用された少女達の遺灰と思われる物が地中に残っていましたよ。 ちなみにこの話を知っているのは私とアロイ先生、其処にいるバルデスと――貴方の四人だけです。 この事はハルラも知りません」
「……」
まったく、とんでもない秘密を暴露してくれたもんだ。
俺がこの秘密を暴露するとは思わないのか?
どうすっかなーと考えを巡らせていると気づいた。 気づいてしまった。
しまった! やられた!
俺は苦虫を噛み潰した様な顔で目の前の男、シュタインさんを睨み付ける。
「……やってくれましたね、シュタインさん」
「どういう事だ?」
首を傾げるバルデスさん。
バルデスさんは惚けているのか?
「おや? もう気づきましたか。 意外に早かったですね」
「だから何の話しをしている?」
バルデスさん、俺達の遣り通りに困惑している。
本気で分かっていない様だ。
シュタインさん、人の良さそうな顔してかなりの狸だ。
「この話しがもし外部からアーガス国王の耳に入ったら――情報源である俺は即座に命を狙われ暗殺される。 俺が殺されない為にはこの秘密を決して他人に喋ってはいけない。 だから俺は喋らない――だろ?」
「そうです」
しれっとした顔で答えるシュタイン。
「何が秘密だよ。 あんたの弱みを握る所か俺を共犯者に仕立てやがって……」
「でもこうでもしいないと貴方は喋らないでしょう?」
俺は溜息を一つ吐いて答える。
「まあね」
「それで? 話す気になりましたか?」
「分かった! 話すよ! これ以上面倒臭い事に巻き込まれるのは御免だ!」
☆☆☆☆☆☆
「――と、言う訳さ」
俺は自身のステータスに記されていた称号や個人スキルについて全て暴露した。
ついでに勇者のブレスレットを外している事も。
「正直、信じられんな……」
バルデスさんは驚くよりも疑いの眼差しで俺を見ている。
当然の反応だ。
「ですがステータスカードはそれが真実であると証明しています」
シュタインは冷静に対応している。
俺の言葉の真偽を確認する為、手袋をはめた手で他人のステータスを見る事ができるステータスカードを俺に使用したのだ。
ちなみに手袋をはめてるのはステータスカードを直摂手で持つと自身のステータスが表示されてしまうのでそれを防ぐためである。
今の俺のステータスは――
本郷 正輝
年齢 19
職業 なし
Lv1
基礎能力 1000
基礎理力 12000
通常スキル 剣術 10/10
固有スキル 封印中
ギフト 梱包状態 金貨000,000,018枚
称号 命の神マキシの魂を受け継ぐ者 命の神マキシの後継者
俺のステータスは狂態の項目が消え、固有スキルも封印状態に戻っていた。
それ以外の内容は変化したままだ。
「……マキシ。 それが命の神でもある聖者の名。 歴史的大発見ですね」
「それにしては冷静だね」
普通の人なら感情を露にして驚いたり興奮したりするだろうに。
「いえいえ、これでも大興奮してますよ。 ただ、作業中は常に冷静でいる事を心がけているんです。 でないと、大きな見落としや重大な失敗につながりますから」
シュタインさんは根っからの研究者の様だ。
「俺としては状態の項目が消えてるのと固有スキルがまた封印されてるのが気になるよ」
邪神なんて物騒な名前が出てたんだから。
「ふむ……。 ある程度の推測は立てられますが、実際の所は発掘場に行ってみない事には分かりませんね。 しかし、私も一週間はこの街の入出記録や税金の管理等で忙しいですから行くとしてもその後ですね」
シュタインさんの提案で発掘場で再びステータスを調べ、ついでに固有スキルの能力の確認を行う事に決めたが、この街の門が開放中の今は人の出入りの管理や商人達の取引における税の管理・監督で忙しく暇が無いそうだ。
「そうだ、マサキ君。 勇者の腕輪に関してはハーフリングの鍛冶屋姉妹に効果の無効化を頼んだらいい。 勇者の腕輪は元々アーガス国王や大臣達に従うように命令が組み込まれているからね。 勇者の腕輪の解除はアーガス国王達にしかできない仕組みになっている。 多分、今の君が腕輪を身に着けたら発動する筈だよ」
「何でそんな事が分かるんです?」
「アロイ先生から詳しい仕様内容を手紙に書いて寄越してくれたからね。 勇者の腕輪は身に着けた者の理力を糧に発動する。 君が腕輪の着け外しが自分ででできたのは恐らく君に理力が無かったからだろうね」
うお、そうなのか! 俺、普段こんなの着け慣れてないから違和感が無茶苦茶あったし、長袖着てるからバレないだろうと思って外してたけど、あのまま着けてたらブレスレットの効果が発動してたのか!
危なかった~……。
「ついでに武器も注文した方が良いでしょうね」
「武器は無料で貰えるんじゃないんですか?」
タダでくれるなら俺はそれを使いたい。
ギフトの為にお金ををあんまり使いたくないから。
だけど、シュタインさんの意見にバルデスさんも賛同する。
「今のお前は基礎能力が高すぎる。 無料で配られるのは鋳造品の安物だ。 そんなの使ったら一発で折れるぞ」
そりゃ困る。 幾ら基礎能力が高くても素手でモンスター達と渡り合いたくないぞ。
「お金は私が出しますよ。 何せ、君は良い研究対象ですからね」
「お願いします」
シュタインさん、不穏な事言ってるが背に腹は変えられん。
此処は厚意に甘えとこう。




