12,ギフトの試練
俺達は飯を食った後、バルデスさんにこれから御世話になるシュタインさんの家に案内して貰った。
バルデスさんは扉を叩いてシュタインさんを呼び出す。
すると中から現れたのはシュタインさんではなく少女だった。
薄茶色でボブカットにした髪形。 つぶらな瞳が印象的な年の頃は十六歳位の可憐な美少女だ。
「あら? 今晩は、バルデスさん」
「シュタインは居るか?」
「ええ、主人ならもう帰っております。 あ、ひょっとして後ろの方達が今日から家に下宿する人達なんですか? 私、シュタインの妻でラルハといいます」
主人て……シュタインさん結婚してたのかよお! しかも、こんな可愛い娘がだと! 俺なんて彼女すら未だにできた事無いのに! 世の中不公平だ!
「正輝です。 今日からお世話になります」
「アルサートです。 マサキの護衛騎士です」
「レイヤです。 同じく護衛騎士です」
「これはご丁寧に。 あ、皆様お食事はどうなさいます?」
「俺達はさっき食堂で食べてきたから必要ない」
「さあ、どうぞ。 中にお入り下さい」
俺達はハルラさんの案内でシュタインさんが居る書斎に案内された。
「あなた、バルデスさん達がお見えですよ」
「ああ、ありがとうハルラ」
書斎に入るとシュタインさんは書類仕事をしている途中だった。
「邪魔したか?」
「いや。 今、丁度終わった所だよ、バルデス」
シュタインさんは疲れた様子で肩を軽く回して肩凝りを解す。
「どうだった、マサキ君? この街で遣って行けそうかい?」
「まだ良く分かりません……。 なにせ、この世界に来たばかりだし、外に出たのは今回が初めてですから」
「それは仕方ないね。 まあ、追々慣れていけばいいよ」
「それより、あなた。 また着替えずに研究してたでしょう? せめて、お客様の前ではキチンとした服装をして下さい!」
ハルラさんはシュタインさんのヨレヨレの服を見てシュタインさんに説教する。
「ハハハ、悪いハルラ。 今度から気をつけるよ」
「もう、貴方は何時もそうなんだから……。 すみません、皆さん。 主人たらこんな格好で人前に出て……。 研究に没頭すると他の事がお留守になるんですから」
「いいさ、何時もの事だ。 それに、此処にはシュタインとお前さん以外の役人は残らないしな」
え、ハルラさんて役人だったの! てか、役人が残らないって! それじゃあ、街の治安とかどうすんの! それって結構拙いんじゃないの!
俺の顔から心情を読み取ったのかシュタインさんが答えてくれる。
「不思議そうな顔をしてるね、マサキ君。 でもね、仕方がないんだよ。 此処に残ろうとする役人は殆ど居ない。 それは食料事情や娯楽が無いといった理由もあるが、最大の理由は他にある」
シュタインさんは一度目を瞑り間を空けてから言葉を紡ぐ。
「それはね、此処が妖精族の街だからだよ」
妖精族の街。 この世界に生きる全てのものの敵、邪神を開放した罪科を背負う種族。
それが妖精族と俺はアロイ先生から学んだ。
「君ももう知っているだろう? 妖精族が何をしたか。 そんな妖精族が居る街に半年間も閉じ込められるんだ。 一体何をされるか分からない。 邪神が解放されたばかりの当時の役人達はそう考えたんだ。 それを理由に役人達がこの街に留まる事を拒否した。 それが例え国王の命令であっても。 普通なら国王に逆らえば打ち首ものだ。 だけどそうはならなかった。 神殿や教会の統括者である教皇が”敬謙なる神の信徒に手を掛けるな”と言って国王を諫めたんだよ。 実は教皇の縁者がその中に含まれてたっていう裏事情があったけどね。 流石の国王も他国に強力な影響力を持つ教皇の言葉を蔑ろにはできなかった。 そのせいでこの街は長い間無秩序態が続いた。 だけど十数年前に突如街の中央にダンジョンが発生した。 それが発掘遺跡だね。 ダンジョン出現の噂を聞き付けた貧しい人達が金目の物を目的にこの街に集まり、やがて彼等は探求者と呼ばれるようになった」
シュタインさんは喋りすぎて疲れたのか喉が潤す為、カップに入った飲み物に口を付ける。
暫し休憩するシュタインさんに代わって話の続きをバルデスさんが引き継いだ。
「だから国は苦肉の策として街に集まった探求者に発掘やそれらに掛かる一切の税気を免除する替わりに治安維持の義務を負わせた。 貧乏人の多い俺達探求者にとってありがたい話しだ。 しかし、初めは人間族と妖精族の間で血生臭い事件がよくあった。 繰り返される報復の連続。 最終的にはこの街に閉じ込めた妖精族を根絶やしにする命令が発令され掛けた。 それを知ったこの街の妖精族を束ねる長老が探求者達の代表達と話し合った末、食料を格安で提供する替わりに最低限の必要な交流以外では互いに干渉しないと取り決めを交わした。 そして漸くこの街は落ち着きを取り戻したんだ」
「だから私達役人が居なくても余程の事が起こらない限りは大丈夫なんだよ」
シュタインさんが最後にそう締めくくった。
「所でシュタイン。 マサキの事で話しがあるんだが」
「ああ、そうだった。 君のギフトについて古文書を紐解いて調べた結果分かった事がある」
「えっ!?」
「邪神によって神々が封印される前、この世界の人々にも神の祝福であるギフトを授かった人達の中にはマサキ君の様に初めはギフトの能力を使えない人も居たんだ」
「そうなんだ……」
良かった! 俺だけじゃなかったんだ!
「太古の人々はそれらのギフトをを”試練型”と呼んでいたらしい。 試練型のギフトは試練の難易度が上がれば上がる程使える能力はとても強力みたいでそのギフトの能力で神に上り詰めた者さえ居たとか」
すげえ! 手に入るギフト次第で神様に成れたりするんだ! それってチートじゃん!
「結論を言うとマサキ君は試練をクリアする為に地道に金貨一億枚を集めるしかないんだ」
あ、そうだ。 これ確認しとこ。
俺は思いついた事をシュタインさんに聞く事にした。
「ニつ質問してもいいですか?」
「なんだい?」
「その試練をもしクリアできなかったり、ズルをしてクリアした場合とかどうなるんですか?」
「試練をクリアできなければ生涯ギフトが使えないだけだけど、もしずるをした時、そうだね……例えば仮に君のような道具収集の試練で人に必要な道具を集めさせ自分は何もしなかった場合、ペナルティとして覚えたスキルは全て消失、その上スキルを新しく会得する事は不可能になると古文書には記されていたよ。 他人の力は借りてもいいみたいだけど、基本的に試練は自分の力でクリアしないと駄目なようだ」
「そんなおっかないペナルティーがあるんだ!」
念の為に聞いといて良かった~……。
「そういえばバルデス、さっきマサキの事で聞きたい事があるって言ったね。 何かあったかい?」
「今日試しにマサキを発掘場に連れて行ったら、フライングスネークを俺が貸した大剣で倒してレベルが一つ上がった。 そしたら基礎能力や基礎理力がとんでもない上がり方をしたばかりか、剣術の熟練度が10に成っていたらしい」
「えっ!? 剣術の熟練度が10だって! それって人類初所かこの世界で初めての快挙だよ!」
やっぱりそんなに凄いのか。 熟練度10ってのは。
「他には何かないかいマサキ君!」
シュタインさんは興奮して俺に詰め寄ってくる。
やめてシュタインさん! そんんに顔を近づけないで! すんげえこええよ!
そんなシュタインさんの後頭部をハルラさんが可愛らしくジャンプして叩く。
「いたっ!」
「いい加減にして下さい、あなた。 マサキさんが怖がっているじゃないですか」
ハルラさんに説教されたシュタインさんは後頭部を擦りながら。
「いや、すまない。 少し興奮してしまったよ。 ハハハハ」
いや! あんたかなり興奮してたぞ!
「マサキ君、済まないが身体を調べさせて貰えないかい?」
「えっと……」
どうしよう。 知られると拙そうなのもあるんだけど……。
「……ああ、そうそう。 アルサート君にレイヤ君、マサキ君の検査には時間が掛かるから君達は先に休んでいたまえ」
「え? 僕達は平気です」
「私達は、マサキの護衛騎士だ。 マサキの傍を離れるわけには……」
「ハルラ、彼等を部屋に案内して」
シュタインさんはハルラさんに目配せをして、それを受け取ったハルラさんが頷いて。
「はい、あなた。 ささ、お部屋に案内しますよ」
ハルラさんは強引にアルサート、レイヤの二人を部屋から締め出し、自身も書斎から一緒に出て行く。




