10,発掘場の見学
※2016 7/12 ステータスの状態の項目 補足説明を修正しました
バルデスさんに案内されロスマリンが赴任する教会に辿り着いた。
だが其処は教会と言うより廃屋と呼んだ方が相応しい状態の建て物であった。
「……これは、酷いです」
呟くロスマリン。
顔を見るとちょっと涙目だ。
「今まで誰も住んでなかったからな。 管理する人間が居ないんだ。 その上、妖精族は教会に立ち入り禁止だから信者も殆ど寄り付かない」
「そうなの、ロスマリン?」
ロスマリンは悲しいそうな顔をして頷く。
「神殿は神を崇め、教会は聖者を崇めます。 ですが妖精族は命をとして邪神を封じた聖者様の封印を強欲に囚われた結果、解除してしまったので時の教会は妖精族の立ち入りを禁じたのです。 ですが、私はそれは間違いだと思っています。 聖者様は例え悪行の限りを尽くした罪人でさえ改心の余地があれば救いました。 当時、フォースを悪用した妖精族ならいざ知らず、巻き込まれた他の妖精族には罪はありません」
自分の持論に熱くなって語るロスマリン。
それをバルデスさんは苦笑いしながらロスマリンに忠告する。
「おいおい、教会の尼さんが大っぴらに教会の方針に反対してたら異端者扱いされるぞ。 特にこんな路上じゃあ誰が聞いているか分からん。 話すにしても場所を考えてからにしろ」
「す、すみません! つい……」
自分の浅はかさにを恥じるロスマリン。
ロスマリンてこんな一面もあるんだな。 見た目は箱入り娘って感じなのに。
「しかし、流石に若い娘をこんな所に寝泊りさせられん。 探求者用の女子寮があるから暫く其処に住んで今後どうするか考えればいい」
「何から何まで有難う御座います」
「いいって。 年上が年下のもんの面倒見んのは当然だからな」
バルデスさんははにかんだ笑顔を見せた。 でも、その顔には何処か悲しみが宿っているように俺には思えた。
☆☆☆☆☆☆
ロスマリンを探求者専用の女子寮に入寮させた後、バルデスさんは顔を上げて空を見た。
「時間が余っちまったな。 どうだ? これからちょっと発掘場に行ってみないか?」
「いいんですか?」
「本来は武器の配布が終わってからでないと駄目なんだがな。 俺が付いてるし、それに入るのは入り口付近の場所だけだ。 例えモンスターが出ても雑魚のイービルリトラー位だからな。 それなら餓鬼でも倒せる」
バルデスさん、俺はその餓鬼にも負けるんすけどね。
「僕はマサキの判断に任せるよ」
「私はどっちでもいい」
アルサートとレイヤは判断を俺に丸投げした。 こいつら、それでも俺の護衛騎士か?
まあいい。 結局行くことになるんだ。 慣れるなら早い方がいいだろう。
「じゃあ、お願いします」
「分かった」
☆☆☆☆☆☆
案内されたのは小屋位の大きさの円筒形のレンガの建物fだ。 建物というか塔の様にも見える。
「此処が発掘場の入り口だ。 この中の階段を下りると遺跡ダンジョンが広がっている」
バルデスさんはそのまま階段を下ろうとする。 バルデスさんが下ろうとする先の空間は蝋燭が壁に等間隔で配されてぼんやりと明かりを灯している。
「明かりは要らないんですか?」
「ああ。 暗いのは此処の下り階段だけだ。 遺跡ダンジョンの中は明るい。 ……理由は知らん」
五分位階段を下に進むと突然、先の空間が明るくなった。
「此処が遺跡ダンジョン、通称発掘場だ」
中はバルデスさんが言った通り確かに明るい。
しかし、これは――
「発掘場というより洞窟ですね」
「そりゃあ、此処はまだ発掘場の入り口みたいなもんだ。 遺跡は更に奥に在る。 それと其処の階段横にある宝玉に触れれば、一度行ったことがある発掘場の宝玉のある場所なら何処でも転移可能だ」
それは便利だ。 一々徒歩で移動をしなくて済む。
バルデスさんの後に付いて更に奥に進む。
すると洞窟の壁が途中から石レンガでできた物に変化した。
「この先の奥――迷路の様に入り組んだ通路の奥にモンスターのボスが居て、そいつを倒せば発掘場に入れる。 ただし、此処の通路を突破する能力の無い奴は先に進めない。 無理に進んでボスと戦うと――死ぬ。 あと、階層毎にボスが居て奥に行けば行く程強くなる。 これはダンジョンの常識だな。 まあ、先に進めなくても此処にいるイービルリトラーを倒せば金貨を必ずドロップするから、低レベルの探求者にはそれだけでも十分な稼ぎになる」
バルデスさんや、此処に能力が一般人以下で金貨が一億枚必要な低レベルの探求者が居るんですがね?
それにしても親切にも色々と説明してくるがどうしてだ? 普通こういうのって出し抜く為に情報を隠匿するものなのに。
その事をバルデスさんに質問してみた。
「別に善意だけで情報提供や武器の無料配布をしている訳じゃない。 これは俺達の為でもある」
「自分達の為?」
「そうだ。 シュタインの話じゃあ、新人探求者を育成する事で死亡率を下げ、成長した探求者が邪神と戦う事になっても何とか生き残れるようにすれば、他の人間も生き残れる確率が高まるからだとか。 まあ、難しい事は俺にも良く分からん。 あと、シュタイン自身が本業の仕事で税収の徴収率が上がれば、研究に没頭してても上役から文句が言われんというのもあるそうだ」
話しは何となく分かる。 けど、それでも労力が半端なく掛かって割に合わない。
要するにシュタインさんはお人好しという事だな。
でもな……。
「レベルも熟練度も上がらない俺はどうすればいいと思います? バルデスさん」
「……その話しはシュタインから聞いた。 シュタインの奴がそれについて今調べてるそうだ。 まあ、俺から言えるのは腐らずに先ずは自分のできる事を少しでも遣って行く事だ。 そういう奴が自分で道を切り開いた所を俺は何度も目にした。 がんばれとは言わん。 ただし、諦めるな。 諦めなければ希望を手にする機会はきっとある」
……バルデスさん、あんたもええ人やあ!
「そういえば、さっきから俺の剣を見てたが何かあるのか?」
「いやあ、カッコイイ剣だなあと思って見てただけです。 他意はありません」
バルデスさんは苦笑いする。
「そんな大したもんじゃない。 偶々、発掘場で拾って使ってるだけだ。 他の奴らが手に入れた武器には劣る。 なんだったら持ってみるか?」
「バルデスさん、マサキじゃあ持った瞬間、剣の下敷きになりますよ!」
「そうだな。 マサキじゃあ持てない。 無駄な事は止めろ」
「二人とも酷いな!」
言いたい放題言いやがって! そんな事、言われんでも本人が一番分ってるわい!
「俺が支えて遣ればいいだけだ」
そう言ってバルデスさんは剣を抜き俺の手にその大剣の柄を握らせてくれた。
「おお、すげえ……」
「喜んでもらえて何よりだ」
俺がバルデスさんの大剣を握り締め、感動に浸っていると突然、視覚が切り替り自分の頭上の影を捉えていた。
あっ、上からデッカイ蛇が襲ってくる。
同時に俺はバルデスさんの大剣を頭上に振り上げていた。
ボトリと綺麗に二つに別れた一匹の蛇が落ちてきた。
「「「「え!?」」」」
皆、何が起こったかまったく認識できなかった。
それを成した俺でさえ理解できてない。
「コイツはフライングスネーク――発掘場に居ない魔獣だ。 多分、外から紛れ込んだんだろう。 ……にしてもマサキ、お前よく気づいたな。 しかも、俺にも分からんぐらいの速さで大剣を振り上げるなんて。 お前、ホントに身体能力低いのか?」
「も、もちろん! アロイ先生がちゃんと調べてくれたから間違いないよ!」
「落ち着けマサキ。 取り敢えずステータスを確認してみろ」
「わ、分かった!」
俺は混乱する頭で目を瞑り、ステータス情報を引き出す。
本郷 正輝
年齢 19
職業 なし
状態 邪神の呪い(隠蔽)(現在、一時的に固有スキルが使用可能な状態)
Lv1
基礎能力 1000
基礎理力 12000
通常スキル 剣術 10/10
固有スキル 生命 神眼 性の喜び
ギフト 梱包状態 金貨000,000,018枚
称号 命の神マキシの魂を受け継ぐ者 命の神マキシの後継者
「うお! 何じゃこりゃ!」
「どうした?」
「Lv0から1にレベルが上がって基礎能力1000、基礎理力1200で剣術スキルの熟練度が10になってる!」
「「「なんだって!」」」
皆、目を飛び出さんばかりに見開き驚いてる。
俺も驚いたよ!
しかも、項目が増えてその内容が見過ごせない!
でも、ギフトは使えないままだ……。
「おいおい、俺がLv20の時で漸くその位のステータスだぞ……」
バルデスさん、微妙な顔してる。
ベテランの探求者だもんな。 そりゃショックだ。
「神話だと戦神アーガでも剣術の熟練度は9なんだよ!」
おお、すげえ! 俺、戦神超えたぜ!
「しかし、ホントなのか? 俄かには信じられん」
俺を疑いの眼差しで見るレイヤ。
俺だって信じられないよ。
一体どうなってんだ?
「兎に角、一端戻っろう」
バルデスさんの意見に俺達三人は頷き、発掘場から出ることにした。




